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中学卒業式の朝。
三年間通った学舎を前にして、何の感慨も抱かない。
保護者として施設の方が出席してくれると言ってくれた。
今までも授業参観などは拒否してきたので、「最後くらい」となかなか引き下がらなかったが、私は頑なに断った。
学校での惨めな自分を見せたくはなかったから。
式後、最後の別れを惜しむ生徒を押し退けて、校庭の隅に向かう。
手にした卒業証書を思い切りゴミ箱へ投げつけ、もう二度と来ることもない中学校を後にした。
中学卒業後、近くの公立高校へ進学。
公立雛坂台高校。
急な坂道は、じわじわと体力を削って。
重心を前へ前へと傾けながら登る。
俯いた視線の先には春の陽光に照らされ、茶色く光る革靴。
私は持っていた運動靴で構わなかったが、学校指定のもの以外は不可だったので、仕方がなく新調させてもらった。
私がお金を出した訳ではないけれど。
両脇に並ぶ桜の木はもう散り始め、葉桜へと変わり始めていた。
あと、ひと月も経てば、この道も通いなれると思う。
入学式から慌ただしく時は流れ、高校生活は多くの生徒にとって、日常となりつつある。
マスクを外さない私はクラスで多少浮いていた。
「渡良瀬さん、どうしていつもマスクしてるの?」
ストレートな物言いで、尋ねて来る子も。
無邪気な笑顔で。
それでも。
――怖い。
打ち明けることも、向けられた笑顔さえもが。
全て見透かされているようでいて。
適当にごまかす。
けれど、マスクを外さなければならない時がある。
お昼ご飯。
高校に入って、初めての昼食は食べることが出来なかった。
探していたから。
誰もいない場所。
校舎裏の非常階段。
日の当たらない……、場所。
見つけた時には、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴っていた。
その日の帰り道。
作ってもらったお弁当を、ゴミ箱へと捨てた。
仕方のないことだと言い聞かせて。




