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渡良瀬月子――。
お守りを握りしめるたびに、この名を強く思う。
両親は、どんな願いを込めて私にこの名を与えてくれたのだろう。
今ではもう知ることも出来ないし、過去の名になりつつある。
反発することも出来ず、卑屈にその名を手放した私を、両親はどう思うだろうか。
叱ってくれるだろうか、それとも憐れんでくれるだろうか。
想像することしかできない私は、都合よく自分を慰めることしかできない。
私の一番古い記憶は、児童養護施設の玄関先で、泣きじゃくっていたこと。
なぜ両親から引き離され、見慣れない場所に連れてこられたのか?
ふたりに会いたい。
その寂しさに小さな小袋を握りしめ、涙していた。
私の五歳の誕生日。
ささやかなお祝いを終え、父の運転する車で帰る途中――。
小さな子供がゴムボールを追いかけて飛び出してきた。
避けられない。
急ハンドル。
車はガードレールを突き破り、そのまま川へと転落。
両親は車に押し挟まれ、あっけなく命を失った。
私だけが救われたけれど、代償に割れたガラス片で顔を切り裂かれてしまったらしい。
――これは、ずっと後で知ったこと。




