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『ナイチンゲールは、元ヤンの僕を救わない。』  作者: A古町


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第20話:告白の果てと、夜明けの誓い

第20話:告白の果てと、夜明けの誓い


「よくそれで看護師になろうと思ったわね。流石に想像以上というか……絶句だわ」


 サオリさんは、空になったビールの空き缶を握りしめたまま呆然としていました。


「看護師になろうと思ったきっかけは、親友の事故も嘘じゃないけど……一番は、自分が入院したことなんだ」


「えっ、やっぱり喧嘩で?」


「まあ……一言で言えば、そうなるかな」


 僕は遠い目をして、あの夜の光景を思い出しました。


「仲間の一人が、ヒサシ先輩のグループにさらわれてさ」


「さ、攫う!? 映画か何かの話なの?」


「そこにバイクで仲間と急行したんだ。でも、向こうの騙し討ちに遭って、バイクごと派手に転倒して……。ヘルメットのおかげで命は助かったけど、脳震盪と肋骨骨折でしばらく動けなくなったんだ」


「……怖い。怖すぎるわよ。これ、絶対にエミには聞かせられないわ!!」


 サオリさんが耳を塞がんばかりの勢いで叫びました。


「話、ここで止める?」 


「……い、いいえ。頑張るわよ!」


 僕は苦笑しながら続けました。


「入院して、天井を見上げることしかできなかった僕を、献身的に世話してくれた看護師さんがいたんだ。その姿に、純粋に憧れた。それが高二の終わり。そこから、僕は猫を被り始めたんだ。族を抜けて、教科書を握りしめて……」


「それで、聖マリアンヌに入学したんだよね」


 僕はスマホのホルダーから写真を引っ張り出してきた。


「その時の写真が、これ」


「ゲッ!! これタカシ!? イケメンだけど怖すぎる! 刺し殺されそうな目つきじゃない! 特攻服、本当に着てたのね……」


 写真の中の僕は、今の「純朴キャラ」からは想像もつかないほど尖り、血気盛んなオーラを放っていました。


「僕は、できればエミさんの前では、こんな過去を晒したくないんだ」


「……滲み出ているものはあるわよ。バイクのこともそうだし。でも、基本は優しいし、それは過去のことなのよね?」


「もちろん。もう、あんなことは二度としない」


「……なら、安心した」


 サオリさんは僕の手からそっとスマホ取ると、をテーブルに置いた。


「いい、タカシ。私は受け入れるよ。私なら、あんたのどんな過去も、今のあんたも全部受け止めてあげる!」


「ええ!? いや、だって僕は……」


「何よ! 私じゃ不満だってわけ!?」


 サオリさんの瞳には、弓道で的を射抜く時のような、真っ直ぐで揺るぎない覚悟が宿っていました。


「い、いや、そうではないけど……うぶッ!!」


 言葉を遮るように、今日何度目か分からない熱い口づけが降ってきました。


 エミさんへの想い、自分の過去への罪悪感、そして目の前のサオリさんの情熱。


 すべてが混ざり合い、整理がつかないまま……僕たちは、絡み合った感情を抱えたまま、白々と明けていく神戸の朝を迎えたのでした。

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