表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ナイチンゲールは、元ヤンの僕を救わない。』  作者: A古町


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/28

第10話:疑惑の言葉と、リサの予言

第10話:疑惑の言葉と、リサの予言

 怒濤の宅飲みから一夜明け、再び月曜日がやってきました。


 僕の頭の中では、あの夜にサオリさんがこぼした「なんとかなりそう?」という言葉が、まるでお湯に溶けない粉末スープのようにダマになって残っていました。


(どういう意味なんだ? 彼氏から略奪できるってことか? それとも、そろそろ諦めがつきそうかってことか……?)


 モヤモヤを抱えたまま席に着くと、背後からあのお馴染みの輝かしい声が響きました。


「おはよう、タカシくん!」


「ほあああ……エミさん、おはようございます!」


 ああ、僕の太陽! 僕のエンジェル! 会えなかったこの週末、僕がどれほど君の笑顔を脳内再生しては溜息をついていたか、君は知る由もないでしょう。


「どうだった? 飲み会。私も行きたかったな〜、バイトさえなければね」


「えっ、あ、そうなの!?」


 ……行きたかった? バイトがなければ、彼氏とデートじゃなかったのか?


 聞きたい。

 でも聞けない。もし「デートの予定をキャンセルしてでも行きたかった」なんて無邪気で残酷な答えが返ってきたら、僕の心臓は耐えられません。


「サオリも行ったんだよね。楽しんでた?」


「え? うーん……まあ、普段は見られないサオリさんが見られた、かな」


 僕がそう答えた瞬間、横からナイフのような視線が突き刺さりました。


「……何。余計なこと言ってんじゃないわよ」


 そこには、いつもの「毒舌モード」に完全復帰したサオリさんが立っていました。


「エミ、ダメよ。こいつは絶対に女子を泣かせてきたタイプよ! 私にはわかるわ。あんなイカついバイクを隠し持ってて、純朴そうなフリをしてるけど中身はヤンキーなんだから!」


「えぇ〜? タカシくんはそんなんじゃないよぉ」


 エミさんがクスクス笑いながら僕を庇ってくれます。


「エロ本だって隠し持ってたに違いないわ!」


「それは無い! 断じて無い!」


「あはは、サオリは極端なんだから〜。でも、また飲み会あるなら誘ってね、タカシくん!」


「やめといたほうがいいって! 」


「もう〜サオリは……あ、ちょっとトイレ行ってくる」


 エミさんが席を離れ、僕とサオリさんの間に気まずい沈黙が流れました。


 僕は意を決して、あの夜の疑問をぶつけました。


「なあ、サオリさん。あの時言った『なんとかなりそう?』って、どういう意味だよ。エミさんのこと、諦めろってことか?」


「んっ!? ……な、何よ! 『諦められそう?』って聞いてあげたのよ! ふんっ!」


 サオリさんは顔を真っ赤にして、そっぽを向いてしまいました。その反応が余計に僕を混乱させます。


「よー、タカシ!」


 そこへ、飲み会で一番暴れていたリサがやってきました。


「ありがとな! また頼むわ。……あ、そうそう」


 リサがスッと僕の耳元に口を寄せ、とんでもないことを囁きました。


「サオリちゃんさ……多分、あんたのこと好きだと思うぞ」


「え? ……いやいや、ないない! 絶対にない!」


「そーかー? ま、うちらの勘なんだけどさ。だいたい外れるから気にすんな! じゃ、また後でな!」


 嵐のように去っていくリサを見送りながら、僕は呆然と立ち尽くしました。


(……いや、それはない。いくら恋愛経験のない僕でもわかる。あいつは僕を『悪』だと思い込んで、エミさんから遠ざけようとしているだけだ。……多分)


 自分の心臓の音が、いつもより少しだけ騒がしくなっていることに、僕はまだ気づかないふりをしていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ