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材料を並べる。
オークの脂身たくさん。
一口大より少し大きめに切ったヤマドリの肉。
野蒜の球根すりつぶす。
それからさっき採ったばかりのガランガル。またの名をナンキョウ。耳慣れない名前だけど、分かりやすい別名はタイジンジャー。
戦隊ものみたいな名前になって一気に親近感が湧くね。タイジンジャー。
退陣じゃでも、対神社でもなく、タイのジンジャーだ。
そうです、そうなんですよっ!
野蒜がニンニクみたいな感じで、ガランガルが生姜みたいな感じ。
鳥肉があって、ラードがあって、さらに……。
「てんててーん!」
思わず口に出して取り出す。
「ん?てんててーん?白い粉、小麦粉か?」
ヴァルさんが私が取り出した白い粉を見た。
「ぐふっ、これはね、片栗粉」
「片栗粉?」
カタクリから作った片栗粉。
持っててよかった、片栗粉。
ニンニク(野蒜)。
ショウガ(ガランガル)。
鶏肉。
ラード(オークの脂)。
片栗粉(本物の片栗粉)。
もう、お分かりですね!
作るのは、唐揚げならぬ……竜田揚げ!
片栗粉以外は何一つ通常レシピ通りの材料ではないけれど。
絶対おいしくなる自信しかない。
自信満々に、そろそろ脂身を熱して揚げ油に……と、ニヨニヨしていて気が付いた。
「な、な、な……」
ここまで来て、そんなことある?
「鍋がないっ!」
ポロポロと涙が零れ落ちる。
もうすっかり気分は唐揚げならぬ竜田揚げだというのに。
鍋がない……揚げ物ができない。焼くしかないのか?焼くのか?
「フワリ、大丈夫だ。鍋くらい作ってやる」
「え?」
作る?鉄鉱石もないのに?炉もないのに?あ、火魔法でそれはなんとかなるのか?
「そぉーれ!」
と掛け声とともにヴァルさんがルツェルンハンマーのツルハシ部分を振り下ろした。はじめは勢いよく。次第に慎重に。
ものの5分で、なんということでしょう。
「まぁ、簡単なもんだが、これでどうだ?」
石鍋が出来上がってます。
「すごっ、すごっ、すごい、ヴァルさんすごい」
そうだよ、石焼ビビンバとか石の土鍋みたいなやつ使うじゃん。石でもいいんだ。なんで金属にこだわってたんだろう!
と、思ったけれど……。
「うわぁーん、やっぱり鍋は石じゃだめだよぉ!!煮物ならいいかもしれないけど、揚げ物には使えなぁいっ」
温まるまで時間がかかるのはいいの。そっちはね。
問題は、石は蓄熱性が高くて冷めない。
火を弱めようが火を遠ざけようが、いったん温まった石が温度を逃がさない。
「焦げた……ぐすんっ、焦げた……」
真っ黒こげではないけど、きつね色よりもずいぶん濃い色になってしまった。
「やっぱり、鍋が欲しいよ。めそめそ」
「街に出たら鍋も贈るよ。だから泣くなフワリ。泣いてないで食べよう。せっかく作ってくれたんだ。初めて見る料理だ、すごく楽しみだぞ?」
こくんと頷く。
「初めて食べるなら、おいしい物食べてもらいたかった……」
また涙がじわりと出てくる。
ヴァルさんが私の頭を撫でた。
「また作ってくれよ。どんどんおいしくなっていくのを食べるのも楽しみだ」
そっか。うん。
「そうだね。だんだんおいしくなっていくって考えたらいいんだね。一つずつ必要なものを揃えていくの、楽しみ」
ほんの数日前までは硬いパンを少しだけしか食べられない生活だった。
それから昨日までは鍋なんてない生活だった。
それが今日はお腹いっぱい食べられるし、石鍋もある。
食材だって、どんどん見つけて増えてるんだもん。
「で、何を作ったんだ?」
「唐揚げならぬ、竜田揚げです!唐揚げは小麦粉、竜田揚げは片栗粉を使うの!」
衣が冷めてもカリカリなのが竜田揚げ。覚めるとしんなりするのが唐揚げ。
「うん、よくわからんが食っていいか?」
木の枝を刺して竜田揚げを口に運ぶ。
口に入れると衣がカリカリ、中はじゅわっとしている。油の温度が高くなってところどころ黒くなったり、全体的に狐よりも茶色くなってるけど……。
「はふはふはふ」
おいしぃー。
野蒜とガランガル。ちょっとだけエスニックっぽい味になっているけど、それがまたおいしい!ラードもどきで揚げたから、コクもある。
「なんだ、これ、すげーうまい!いや、まじでなんだこれ、すげー、うまいんだが」
壊れたレコードみたいに、同じ言葉を何度も繰り返しながらガツガツと食べていくヴァルさん。
気に入ってくれてよかった!
「塩をつけながら食べてもおいしいよ」
コショウはガランガルがショウガとコショウを混ぜたような味なのでなくてもいいけど、塩気は好みで足して味変するといい。
ヴァルさんがさっそく塩をつけて口に運んでいる。
「フワリ、すげぇ美味い。嘘やお世辞じゃないぞ?泣くほどの失敗じゃないよな?」
「んと……それは……」
せっかくヴァルさんが作ってくれた石鍋を使いこなせなかったことが悔しかったし、石鍋を作ってくれたお礼においしい竜田揚げ食べて欲しかったし……。いろんな感情が溢れちゃったんだよね。
ヴァルさんが食べる手を止めて私の頭を撫でた。
「こりゃ、失敗してないやつを食べるのが楽しみだなぁ。食べさせてくれよ?」
うんと大きく頷いた。




