#3
>>Iris
資源惑星CM37DA1――この星の人が言うには惑星「エーワン」――に降りた私達は、開拓団長であるクラガンと言う人物から話を聞くことになった。
状況的にトワがかつて遭遇した亜空間転移に関連する可能性はあるけど、今のところその事は伏せて事情を聞くことにする。
「つまり、不法侵入者ではあるが悪意はなく、また背景も不明ということですね?」
「ええ。正直どう扱うのが良いか図りかねておりましてな。それで統括局へ指示を仰いだ訳です」
「ではその少年と面会しても?」
「もちろんです。ただ件の少年は居留地ではなく、少し離れたファームの近くで発見されましてな。来歴も判らない人物なのでC3の採掘場に近づける訳にもいかず、そちらで留め置いております」
多くのC3鉱床同様、ここエーワンのC3鉱山も荒れ地に位置している。
ギルド直轄地に置かれる開拓団の目的はC3採掘だから、自然と居留地が置かれるのは環境の良い場所ではなく、C3鉱山に近い荒れ地になる事が多い。
むろんここでもそれは例外ではなく……結果として、食料生産拠点であるファームは遠隔地の農業に適した遠隔地に建造されているということなのだろう。
「では私とシノノメ管理官の2人でファームへ向かいます」
そう告げた私に、クラガン団長はファームの周辺は定期的に原生生物の群れが来襲するため危険だと忠告してくれた。
うん、故郷でも定期的に原生生物の暴走が発生してたし、私的には開拓団あるあるだけど……隣で話を聞いていたアリサがげんなりとした顔をしている。
「以前アイリスさんに故郷の話を伺った際にも思ったのですが……ギルドの開拓団ってタフすぎではないですか?普通、定期的に襲撃される所へ拠点を置いたりしませんよ?」
「そう言われても……ねぇ?」
「ええ」
私がクラガン団長に同意を求めると、団長もこともなげに頷いてくれた。
うん、ペレジスのような環境が安定した惑星出身のアリサには違和感があるのかもしれないけど、私にとっては開拓団あるあるだからね。
「ところでファームへ向かわれる際に、保安部要員用の装備をついでに運んで頂けると助かるのですが」
「装備……ブラスターですか?」
「いえ、パワードスーツです。先日の襲撃で破損したものの修理が終わったので」
……ごめん、アリサ。
さすがにパワードスーツがないと対抗できないレベルの原生生物は、私もちょっと引くかもしれない。
一通り話を聞き終えて開拓団の本部から出ると、既に運送用コンテナを連結したビークルが用意されていた。
そして解放されたコンテを前に、トワとマリエッタが興奮した様子で騒いでいる。
おそらくパワードスーツを見ているのだろう。
私も2人の後ろからコンテナを覗き込んでみる。
「……これ、もしかして」
「動力甲冑ですっ!」
マリエッタが言うように、そこに収納されていたのはパワードスーツというよりも、かつて王制を敷く惑星セヴランスで見かけた、動力甲冑に似たフォルムの機体だった。
サイズ的には頭頂高2.5m程度だから、マスタースレイブ式のパワードスーツだろうとは思うけど……デザインが妙に甲冑的なんだよ。
「これ、ギルド保安部に配備されてる標準仕様のパワードスーツじゃないよね?」
「ええ、どうみてもアンティーク……というよりも、マニア向けのデザインですね。クラガン団長?」
無駄に装飾が施されたデザインは、質実剛健を旨とするギルドの理念からかけ離れている気がする。
アリサはその件についてクラガン団長に説明を求めた訳だけど……返ってきた答えは、少々憂鬱な気分になるものだった。
かつてこの星に入植を試み、そして全滅した民間移民船が残した遺留品。
それがこの動力甲冑の来歴だった。
つまりこのエーワンという星はギルドが発見して直轄地にしたのではなく、一度ロストプラネットになったものをギルドが引き取った星だったんだ。
ギルドも入植当時、原生生物の攻撃によって大きな被害を出したらしく、その際に放棄された移民船団の地上拠点から破損した動力甲冑を発見。
それを使って原生生物の撃退に成功したらしい。
それ以来、補修とメンテナンスを繰り返しながら、今でも戦力として動力甲冑を利用しているとクラガン団長は言った。
「団長、ギルドに戦力補充の要請は出しましたか?」
「一応は出しましたぞ。だが、現有戦力で開拓団が維持できているなら、追加は不要だろうと却下されたのです」
不満げな口調でそう言われると、逆に私達の方が申し訳ない気分になる。私がアリサに視線を送ると、彼女も頷いてくれた。
うん、これはどう見ても戦力補充……それもギルドの正規装備をもっと配備しないといけない案件だ。
「では私達の方でギルドの正規装備をここへ配備するよう、働きかけを行います」
「それはありがたいですが……。統括局は聞き入れてくれますかな?」
「人員はギルドにとって最大の財産ですから、その身を守ることは最優先事項です」
「うむ、確かに……。だがここは文明圏から遠い。今から申請して頂いても届くのは何十年先になることやら」
うん、普通に考えればそうだよね。
私達が即応でここへ来ているんだから、ギルドが超光速艇を保有していることはクラガン団長も知っているだろうけど、ギルドが保有する超光速艇はあくまでも少数の人員しか輸送できないという建前になっている。
つまり、パワードスーツのような嵩張る装備を複数配送するには、亜光速航行の輸送船に頼るしかないというのが一般的な常識だ。
「まぁ、そのあたりは私達に任せて下さい。トワ、マリエッタ?コンテナ閉めるから下がっててね。あと、お遣い頼むことになると思うから、アルカンシェルへ戻っておいてくれる?」
「うん」
「はいっ!」
そう、アルカンシェルを使えば、在庫のあるものなら2・3日もあれば配送できる。
その後、私とアリサは居留地の輸送スタッフが運転するビークルに同乗する形でファームへ向かうことになった。
本当ならブリーズなりアルカンシェルなりで移動すれば良かったんだけど、ファーム近くの開けた土地は全部農地になっているらしくて、50m級とはいえ航宙船であるアルカンシェルが着地できるだけのスペースがないし、なんとか着陸できそうなブリーズだとパワードスーツみたいな大荷物は運べないから結果的に陸路で移動するしか方法がなかったんだ。




