#2
>>Towa
「惑星上で重力場の異常?それって大事じゃない」
「ええ、局地的だったそうですが、これまでに例の無い状況のようですね」
「でも、それって管理官がどうこうできるミッションじゃないよね?技術部の研究員を派遣すべき案件だよね?」
ここはアルカンシェルのラウンジ。
アイリスとアリサがミッションの件について話をしている。
マリエッタは興味津々で話を聞いてるけど、重力場がどうとかっていう話は難しくて、私には良くわからない。
ただ、アイリスが言うように、それは学者先生の仕事であって、アイリスの仕事じゃないというのは私にもわかった。
「アイリス。断るの?」
「ん……でも、わざわざ私達に話を振ってくるってことは、まだ続きがあるんじゃないかと思うけど」
「そうなの?」
「はい、そうです。むしろそちらの方がメインなのですが……」
そう前置きした後にアリサが話したことは……いるはずの無い人間が現れた、というものだった。
どうしてその人がいるはずがないって、決めつけられるんだろう?
「つまり、ギルド直轄地である資源開拓惑星に、それまで存在しなかったはずのギルドに所属しない人物が姿を現した……?いうならば不法侵入ってこと?」
「ええ。辺境ですし、航宙船の接近を見落とすことは有り得ません。先住民である可能性も低いとか」
「どういうことですかっ!?それ、もしかしてお化けですかっ!?」
そういえばマリエッタはお化けとか嫌いだっけ。
私も嫌いだけど……。
このミッション、お化けが相手ならアイリスに拒否して貰おうと私も思ったけど、どうやらその人物はお化けじゃないらしい。
「推定年齢14歳の男の子……ねぇ?」
「ミッションレポートによると言葉は通じますが、話は通じないと」
「ん?それ、どういうこと?」
言葉は通じるけど話は通じないと聞いて、私は以前亜空間で出会ったローヴの事を思い出した。
彼も確かに言葉は通じたんだけど、お互いの常識や知識が違いすぎて、何を言ってるのか良くわからなかったんだよね。
え?じゃあ、もしかしたらその少年って……。
「アリサ。もしかして、ローヴ?」
「ローヴ……?ああ、トワ様が亜空間内で出会われたという?」
「……そっか、そういえばトワが言ってたよね。言葉は通じるけど話は通じない……そういうことか。トワが亜空間に紛れ込んだのなら、逆に亜空間から紛れ込んでくることもある……のかな?」
「あのっ、もしそうだとしたら、さっきの重力場に異常って!」
「小規模なスターゲートのようなものが発生した、とか?」
アイリスの言葉に私達は顔を見合わせる。
人1人が通れるスターゲートが惑星上に現れた?
普通に考えたらあり得ない話だけど、私達がこれまでに経験した諸々の事をあわせると……あり得ない話ではないように思えた。
たぶん、アイリスもアリサも、マリエッタも同じ事を思ってると思う。
「……行ってみるしかないかな」
「ですね」
そういうことで、私達は辺境のギルド直轄地、資源惑星「CM37DA1」へ向かうことになった。
ジャンプアウトした先はペルセウス腕外縁に近い、辺境中の辺境と言ってもいい宙域だった。
周囲10パーセクぐらいに人が住む星が存在しないらしくて、オンブルではここへ跳んでこられないぐらいの僻地だそうだ。
私達の故郷も僻地だったけど、近くにペレジスっていう栄えた星があったし、物資の補給なんかにはあまり苦労しなかったんだけど……ここの人は色々と不便そうだよね。
アルカンシェルのセンサーで捉えたCM37DA1は緑豊かな星だった。
私達の故郷であるCM41F3Cは赤茶けた星だったのとは大違いだ。
私はてっきり、辺境の資源惑星ってみんなCM41F3Cみたいな感じだと思ってたんだけど。
「アイリス。辺境の資源惑星なのに自然豊か」
「うん、そうだね。CM41F3Cとは随分違うけど……マリエッタ、この星の情報出してくれる?」
「はいっ、かしこまりですっ!」
アイリスの言葉に、マリエッタがホロディスプレイを展開する。
表示されている情報は……色々と書いてあって読むのが面倒だ。
私はアイリスに説明して欲しいと目で訴えかけた。
「大気、重力、資源……諸々の惑星環境はかなり良好。C3の埋蔵量も私達の故郷より格段に多いね。この星、かなりの優良物件だけど……なのに入植適合率が71.6%?」
「辺境で最寄りに人類の住む惑星がないとはいえ、それだけで入植適合率がこんなに下がることはないと思いますが……」
「アイリスさんっ、ここっ!これですよっ!」
そう言ってマリエッタが指さした特記事項の欄には、こう書かれていた。
『人を襲う凶暴な原生生物が多数生息。駆除困難』
私がその一文を見て固まっている間に、マリエッタが惑星情報に添付された追加データを見つけてくれた。
「添付資料開きますっ……って何ですか、これっ!」
「……モンスター見本市みたいだね。チューリング……というよりトーエイと良い勝負なんじゃない?」
アイリスが言うように、表示された添付資料にはCM37DA1に生息する多種多様な原生生物……ううん、これは「モンスター」とか、「魔物」って呼んだ方がいいような……そんな生物が表示されていたんだ。
私達がこれまでに訪れた星の中ではチューリングっていうと星が一番原生生物の種類が豊富だったけど、あそこの生物は人間が生身で狩ることが出来るものだった。
けどここの星にいる原生生物はトーエイで遭遇した「獣魔」っていう、怪人に近い気がする。
いや、それよりもこれって……。
「アイリス、これ……CM41F3Cに似てる?」
「だね。うちも結構凶暴な原生生物がいたけど、それをさらにスケールアップさせた感じだね……」
「食べられる?」
「むしろ人間を食べそうな連中の方が多そうだよね」
「ひぃぃ、ま、マリエッタは食べられちゃうんですかっ!?」
故郷でも人を食うタイプの原生生物もいたけど、そういう連中の肉はあまり美味しくなかった。
むしろ雑食とか、草食系の方が美味しいんだよね。
そんな事を考えていると、つい四つ脚の事を思い出した。
「魔物」のリストをスクロールさせて四つ脚みたいなタイプがいないかと思ったけど……残念ながらこの星に同じようなものはいないみたいだった。
「ともあれ、地表に降りる際は単独行動は避けて必ず武器を携行することにしようか。あとトワとマリエッタは居留地から出ないようにね?」
「は、はいっ!」
「解せぬ」
「マリエッタは素直でよろしい。トワはちゃんと解して」
美味しそうな原生生物がいるなら狩りもありかと思ったんだけど。
まぁ食べられない原生生物なら狩っても仕方ないかな。




