↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部9章「トリコロール・ナイト」クレリス-闘機の惑星
642/649

#27

 結局、決勝戦はチート合戦の形になったけど、純粋な競技というよりもお祭り的な空気感が優先されたのか、どちらの不正もノーカウントということになった。


 それはつまり、ブランシェリリが優勝ということだ。

 茫然とした御曹司達ローズリュージュ組だけど、まぁ今回の件は彼らが合体技を披露しなければマリエッタもブリギッタを召喚しなかったろうから、ある意味自業自得な結果だといえるだろう。



 表彰式の後、ガレージへと戻ったブランシェリリ組は「奇跡の勝利」に大いに盛り上がった。

 ただし、私はマリエッタをガレージの隅に呼び出して、人前でブリギッタの力を行使したことに釘だけは刺しておいたけど。


 と、盛り上がるガレージの入口に、夕日を背負った長身の人影が表れた。あれは……。


「優勝チームはこちらか。先ほどのドローンと対戦したいのだが」

「えっ!?あ、あのリリィナイト2は半壊状態で……。それに貴方は……」

「違う。途中で乱入した機体だ。あれと是非戦わせて欲しい」


 逆光になっている人影は、まるで鎧を纏ったようなシルエットだが、影の中にも所々赤い血脈のようなラインが見える。


 うん、言うまでもない。

 あのバトルジャンキー的な発言をしているのは、カルティアの守護騎士にしてこのドローンバトルトーナメントの主催者でもある、黒き機族エイギスその人だ。


「エイギス、悪いけどブリギッタとの対戦はなしにしてくれる?」

「む?アイリスか。なぜここに」

「え、エイギス!?あの、守護騎士エイギス様!?」


 どうやらエミール達は、人影がエイギスだということに気付いていなかったようだ。

 そしてエイギスは横手から声を掛けた私の方に視線を向けると、不思議そうに小首をかしげた。


「ブリギッタはエクソギアなんだよ……。って言ったらわかる?」

「何?あれがエクソギアなのか?むぅ……」

「ブリギッタが壊れても困るし、エイギスが傷ついても困るし。戦って得するのは『敵』だけだよ?」


 エミール達がいる手前、表だって放浪機(バーサーカー)や遺失技術(ロストテクノロジー)なんて言葉を出す訳にはいかないけど、カルティアとデータリンクしているエイギスならこの表現でも十分に伝わるだろう。


「……そう言われては仕方ないな。だが、戦闘データを共有してもらえぬか?シミュレーションで戦ってみたい」

「はいはい。マリエッタ?後でブリギッタのシミュレーションデータをとりまとめてくれる?」

「わかりましたっ!」


 マリエッタの言葉にエイギスは頭を下げると、ガレージを去って行った。


 後にはぽかんとした表情のエミール達。うんそうだよね。

 彼らが何を言いたいのかはわかる。


 思わず苦笑いする私のそばにエミールが近寄ってきて、小さな声で言った。


「アイリスさん……あの守護騎士エイギスと知り合いなのかい?」

「知り合いっていうか、友達?」

「はぁ……さすが、ギルドの管理官、かの『英雄アイリス』だね」

「え!?」


 思わず大きな声をだしてしまった。

 エミール、私の正体に気付いてたの!?


「いつから気付いてたの?」

「初日にジェイキー兄さんの話をしてくれた時から、かな」

「それ、最初っからってこと?」

「僕はクロエ姉さんが撮った英雄の写真、見せて貰ってたからね」


 ……そう言えばクロエに頼まれてジェイコブ達とスリーショット写真を撮ったのを忘れていた。

 あの時、ネットに掲載することは止めたんだけど、身内相手に見せるのは止めてなかったっけ。


 まさかそれがここで裏目に出るとは思わなかったよ……。


「秘密にしておいてくれる?」

「心外だね。これまでも秘密は守ってたでしょ?」

「そっか、それもそうだね」


 私はエミールに感謝すると、満身創痍の状態ながらどこか誇らしげに立つリリィナイト2の雄姿を見上げた。



 その日の夜、ブランシェリリ寮は大騒ぎになった。

 もちろん寮生の多くはエミール達がドローンバトルトーナメントに出場することは知っていたけど、1勝出来れば御の字だと思っていた弱小チームがまさかの優勝だからね。

 エミールと、決勝戦を戦ったマリエッタはヒーロー扱いになっている。


 寮の食堂には私がケータリングで頼んだ料理の数々が並んでいて、ブランシェリリをあげた祝勝会になっている。

 最後は若干ズルもあったけど、マリエッタもエミール達も頑張ったから、ご褒美ってやつだ。


「夜会より、こっちの方が断然楽しい。ボクもブランシェリリだったら良かったのに」

「寮って自分の意思で移れないんだっけ?」

「移る……そっか、考えたことなかったよ!」

「あ、でも私達の留学期間はあと1週間ぐらいだから、移ってきても私達はもういないかもだけど……」

「でも、窮屈なローズリュージュよりも楽しそうだから、こっちがいい。うん、そうするよ!」


 以前聞いた話だとアウレリアは良家のお嬢様だけど、母親や姉達が過保護過ぎたせいで自由な暮らしに憧れているというようなことも言っていた。


 今も保護者というか後見人であるリルカがかなり過保護ムーブしてるし、自由に飢えてるんだろうね。

 でも基本お嬢様なアウレリアが自活できるかどうかは謎だけど……まぁ、留学の目的は勉強だけじゃない。

 特にアウレリアの場合は今の時代の常識や価値観を学ぶのが主目的だから、そこに生活力を付けるというのが加わるのは正しい方向性のような気もする。


「エミール!ボク、今日からブランシェリリ(ここ)に入寮するから!」

「え!?ええ!?そんな急に言われても……」

「大丈夫、当面はアイリスさん達の部屋に住むから!」


 無駄に行動力があるアウレリアらしく、早速エミールに転寮の話をしに言っている。

 けど、こういう手続きは寮長じゃなくてアカデミーの職員さんに言うべきじゃないかな……。


 そんな事を思いながら、私は盛り上がる宴席を見つめ、賑やかな祭りの余韻を楽しんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。