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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部9章「トリコロール・ナイト」クレリス-闘機の惑星
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#21

>>Iris


 その後の試合も、会場を大いに盛り上げるものばかりだった。

 どちらのブロックも結果的には技術力の高いドローン工房や大企業のものが性能差で押し切り勝負を決めるケースが目立ったけど、学生チームのトリッキーな戦術が性能差を覆す場面もあって、資金力の違いが必ずしも結果に直結しないことを示して見せた。


 そしてAブロック第4試合、ついにローズリュージュのドローンが登場した。


 リングに上がったのはマッシブな人型ドローン。

 機動性と装甲、出力のバランスが取れた完成度の高い機体で……というより、あれ、明らかに大企業の技術が入ってるよね?


「ローズリュージュのドローン部長はトルセント重工の御曹司だよ。ほら、この前夜会でボクにダンス申し込んできた白スーツのボンクラがいたでしょ?」

「酷い言いようだけど、ドローンの機体性能が高い理由は判ったよ」


 どうやら親のコネをフルに利用して仕上げられた「七光り機体」らしい。


 対戦カードによるとリングに上がっているのは「ローゼンリッター(バラの騎士)」と言う名前のドローンだろう。

 装甲が赤く見えるのはおそらくウォルフライト合金を使っているからで、それが意味するのはバラの騎士様は明らかに軍用モデル、つまり人間型のドラグーンだってことだ。


 そして控えに回っているもう一体は恰幅が良い割にはバランスの悪そうな形状のゴテゴテとした野暮ったいドローンで、洗練された印象のローゼンリッターとはまるでデザインの系統が違う。


 機体名は……「ディーナー(付き人)」?

 その名前とデザインを見て、私はローズリュージュの悪巧みをおおよそ理解した。


 けど、彼らが悪巧みを実行しない限りは特に騒ぎ立てる必要もないだろう。


 対戦相手は昨年の大会で準優勝したジャンク屋組合の再生ドローンだ。

 ただ再生といってもスクラップを適当に組み合わせた機体ではなく、廃棄された高性能機体の部品をミキシングビルドして作り上げた、ジャンク屋渾身の作らしい。


「ジャンク屋チームのキャッチフレーズは『安くて強い、コスパ最強!』だって!」

「いかにもなキャッチフレーズだよね……」


 自分達のチームのPRに安いという文言を入れるセンスは今ひとつ理解できなかったけど、「リボーン3」と名付けられた再生機は試合開始直後からローゼンリッターとがっつり組み合って良い勝負を繰り広げているように見える。

 私がローゼンリッターの動きを注視していると、アウレリアが私の袖を引いて注意をBブロックへと向けさせた。


「アイリスさん、リリちゃん2号が出て来たよ!」

「やっとだね。相手は……他の大学チーム?」

「うん、カルティアンアカデミーに次ぐクレリスで2番目のアカデミーと言われてるロシュフォードアカデミーのドローン部だよ!」


 相手が大学の部活と聞いて私は少し安心した。

 さすがに初戦から軍用ドローンと当たるというのはいくらなんでも可哀相だからね。


 でも、登場した相手機は軍用機ほどではないにせよ、かなりの資金が投入された最新鋭機のように見えた。

 やはりアレも親のコネで機材や技術が投入されているんだろうか。


 こうやって見ると、安いパーツを使って苦労してドローンを組み立てているエミール達ブランシェリリが少数派なことが良くわかる。

 たぶんジャンク屋組合よりも「安い」ことは間違いないだろうけど、果たして強さは……。


 私がそんな懸念を抱きながら見守ったBブロック第4回戦は、大方の予想を裏切り一瞬で勝負が付いた。


 試合開始の合図と同時にダッシュしたリリィナイト2は左腕の盾を前面に押し出した姿勢でダッシュ。

 動き始めたばかりの相手ドローンに勢いの乗ったタックルを行い、まともに体当たりを食らった相手ドローンは一撃でリング外へと弾き飛ばされたんだ。


「やった!作戦勝ちだよっ!」

「うん、確かに狙い通りだね。相手が軽量機だったのもラッキーだったかな」


 そう、ロシュフォードアカデミーのドローンは重装型と軽装型のペアで、先鋒として軽装型が出てきていたんだ。

 リリィナイト2が細身の軽量型だから高機動戦になると見て取った布陣だったんだろうけど、それが裏目に出た形だね。


 見るとリングサイドでエミール達が初戦突破に大はしゃぎしている。

 そして何故かマリエッタが胴上げされてるけど……いや、気が早くない?


 そんなことを思いながらもマリエッタ達の様子を観客席から微笑ましい思いで眺めていた私達は、Aブロックを注視していた観客達がどよめきの声を上げたことで視線は否応なくAブロックのリングへと吸い寄せられた。


「うわっ、ドローンだけど痛そう……」

「ミキシングビルドの弱点が出た感じかな?」

「アイリスさん、どうしてそんなに冷静なの!?もっとこう、痛そう!とかキャー!とかないの?」

「いや、ドローンだし……」


 まぁアウレリアがそう言うのも無理はない。

 なにせローゼンリッターと組み合っていた再生ドローンは、両腕を力任せにもぎ取られていたから。


 おそらくミキシングビルドしたことでフレーム部分の接合に脆弱性が出ているんだろう。

 それにしても多少の脆弱性があるにしても、ドローンの腕をフレームごともぎ取るとはローゼンリッターの出力は他の機体とは段違いだ。

 さすが軍用モデルというところだろうか……。


 一方のリボーン3は腕を失ってしまったせいで僚機とのタッチどころか、その場から退却する事も難しい状況だ。


 結局、ローゼンリッターに胴体を締め上げられたリボーン3は、高出力のベアハッグに胴体部分ごとパワーコアを圧壊され、Aブロックの勝負も決した。


「バラの騎士様は騎士っぽくない勝負だね」

「うん、もっとエレガントに勝って欲しいよね。名前負けしてるよね」


 私がつい漏らした感想にアウレリアはうんうんと頷きながらそう言うけど、おそらく周囲の観客も似たような感想を抱いていたんじゃないだろうか。



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