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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部9章「トリコロール・ナイト」クレリス-闘機の惑星
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#16

>>Towa


 ダンディライアンに来たのは何回目だろう?


 もう回数も忘れたぐらい良く来ている気がする。

 入港した先のドッキング先もいつもと同じオズワルドさんが担当者しているドックだから、まさに勝手知ったる……って感じだね。


 そしてアルカンシェルから降りた私達をいつも通り船大工のオズワルドさんが出迎えてくれた。


「シンガー殿、今回はどのような改装をお望みか」

「今回は引き取り」

「引き取り?はて、特に発注は受けていなかったはずだが」


 そっか、今回私達がここへ来た用事は私やギルド、アルカンシェル関連の話じゃなくてセレスセラのお遣いなんだっけ。

 あれ?じゃあこのドックへ入港しても意味がなかったのかな?


「オズワルドさん、ご無沙汰しております。今回は私達の用事ではなくフローラ・リルカ・セレスセラの依頼で、セレスセラ社が発注しているオンブルの回送を担当することになっています」

「そう、それ」


 私がどう伝えようか考えている間に、アリサがオズワルドさんにビシっと説明してくれた。

 たぶん、私が伝えようとすると話が纏まらなくて時間が掛かるところだった。

 うん、アリサがいてくれて助かった。


「承知した。だがセレスセラ社のオンブルはこのドックにはない。フロルデが担当しているドックだ。今回送するよう連絡を入れた」

「たすかる」

「それで、アルカンシェルの改装はどうされる?不調なところがあればメンテナンスを行うが」


 オズワルドさんはアルカンシェルに興味津々だからね。手を入れたくて仕方ないんだろう。


 でも、エレオノーラのところでフルメンテナンスしてもらった直後だから、不調どころか絶好調なんだけどな。

 何も手を入れるところがないっていうと、オズワルドさんががっかりするかもしれないし……どうしたものかと思ってアリサを見ると、私の考えを察してくれたのか、アリサはにっこりと微笑んだ。


「オズワルドさん。キッチン設備について少しご相談させて下さい。パンを焼く事が多いので、専用のオーブンを備えたいと考えています。あと、当初よりも乗員が増えましたので調理機器ももう少し大家族用のものに――」


 私は今のアルカンシェルに不満は無いんだけど、毎日キッチンに立ってくれるアリサからすると、厨房機器の改善はかなり重要なんだろうね。

 まぁ、これまでに特に困っているという話は聞いたことはないから現状でも問題ないけど、どうせなら……っていう感じの改装依頼だと思うけど。


 アリサとオズワルドさんがキッチン改装の話をしている間にドックへ銀色の小型艇が入ってきた。

 一瞬、見慣れない船だと思ったけど、よく見たらリュミエールの色違いだということが判った。


 銀色の船体の後方には花をあしらったエンブレムが描かれてるけど、あれは星見草かな?

 ということはこの銀色の船がセレスセラが発注したオンブルなんだね。


「アリサ、あれ」

「あら……黒くないのですね?」

「うむ。黒い船体カラーはギルドから指定されているもので、黒くする技術的な必要性は無い」

「……つまりオンブルが黒いのは腹黒いメラニーの趣味だということですね」


 アリサはジト目で銀色のオンブルを見つめながら、そう言った。

 あれ?でもオンブルって「影」っていう意味の言葉だと聞いた気がするけど、銀色なのに影っておかしくない?


 私がそう問うと、オズワルドさんは軽く頷くと言った。


「あの船には『パルファン』と言う名が付けられている」

「ぱる……?」

「トワ様、パルファンは古語で芳香を意味する名前です」

「ほほう」


 発注者であるセレスセラは香油を手がける企業だから、自社のイメージにあう機体名称を付けたって事だね。

 うん、オンブルよりも似合ってる。

 それにあの色、よく見るとセレスセラの香油と同じ銀色だし、リルカやアウレリアの髪色とも似てるし、まさにセレスセラ専用の超光速艇だね。



 回送されてきたパルファンをアルカンシェルの双胴部分に接続する。

 うん、色と名前は違うけど構造はオンブルそのものだから、普通にドッキング機能が使えるんだ。

 そもそもこれが無かったら私達でパルファンを回送することは出来ないからね。


 私がドッキング作業を見ている間にアリサはパルファンの技術資料を確認していたようだ。

 何か面白いものでもあるのかと思って話を聞いてみたところ、オンブルに搭載されている超光速通信機が取り外されていると教えてくれた。

 そう言えばオンブルは元々監察官用の船で、恒星間任務のために大型の通信機を積み込んでると言ってたっけ。

 おかげでヒナは荷物が積めないといつも愚痴ってたけど。


 でもパルファンは民間用だから恒星間通信機は必要ないし、そもそも積んでもギルド関係者じゃないから無制限に使うことも出来ない。

 だから取り外して船内空間を確保して、2人乗りに改装してあるそうだ。


「コピー元のリュミエール1号機と同じ仕様に戻しているということですね?」

「うん、そーだよー」

「では、ジャンプ性能もリュミエール仕様ですか?」

「ジャンプはオンブルと同じだよー。でもオンブルはー、新型も作っててねー」


 間延びした口調でアリサと話しているのはパルファンを回送してきた機族、フロルデだ。

 私達とは顔見知り……というか、私とアリサが彼女の輪廻を手助けしたんだけどね。


 そういえばG17がエレオノーラの人格に目覚めるきっかけを作ったのはフロルデだったらしいし、色んなところで人の縁は繋がってるんだなって私は思った。


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