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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部9章「トリコロール・ナイト」クレリス-闘機の惑星
629/635

#14

>>Alyssa


 ダンディライアン近傍宙域に入り、私が最初にしたことはアイリスさんへ連絡を取ることでした。

 事後報告になりますが、光子魚雷の搭載を報告する必要がありますし、惑星破壊爆弾についての調査結果を伝えておく必要もあったからです。


 キャンパスライフを楽しんでいる彼女に不粋な話を伝えるのは気が引けなくもないですが、そもそもの留学理由は惑星破壊爆弾に絡むものです。

 事後策を検討するにしても、ギルドがまだ複数の惑星破壊爆弾を所有している可能性は伝えておいた方が良いと思ったのです。


 通信前にクレリスの現地時間とカレンダーを確認したところ休日の夕刻でしたので、このタイミングなら問題なしと判断しアイリスさんをコールしました。


『アリサ?何かあった?』

「少しご報告が……って外出中ですか?」

『うん、デート中』


 アイリスさんは苦笑しながらそう言います。

 背後に映っているのは……植物園か何かでしょうか?


 そしてマリエッタの姿が見えますが、その隣にいるのはトワ様?

 いえ、違います。あのショートカットの銀髪は、アウレリアですね。


「両手に花ですね。羨ましいです」

『アリサこそ、トワとデート中じゃない』

「ええ、それはもう。ところでその格好は?私のコスプレですか?」


 通信越しに見えるアイリスさんは何故か眼鏡を掛けている上に、私と同じように髪を二つ結びにしています。

 まぁ、私のコスプレという訳ではないと思いますが、思わずツッコミを入れてしまいました。


『変装。英雄だってバレたら勉強できないから』

「大変ですね、人気者も」

『アリサだって方々で女神呼ばわりされてるじゃない。それで、何かあった?』


 軽いやり取りの後、本題に入りました。

 まず報告すべきはアルカンシェルに武器を搭載したことと、光子魚雷を選択したことについて。

 アルカンシェルの武装は通常の兵器搭載ではなく、あくまでも放浪機対策であることはアイリスさんともコンセンサスが得られていましたから、この点については特に問題がありませんでした。


 アイリスさんが気にされたのはやはり惑星破壊爆弾の方です。


『残数不明な上にギルドが技術情報を握ってる、か……』

「ええ。既に複数使用されている所を見ると、まだ残弾が残っている可能性は高いでしょうね。保安部が使用した1発については統括局の把握している正規の使用ですが、問題は……」

『ピアースがどういう経路で持ち出したか、だね』


 そう。ベネディクト・ピアースという男は監察部の責任者で、ギルドの高位幹部であったことは事実ですが、彼の職権では本来保安部が使用するような兵器にアクセスすることが出来ないはずなのです。

 もちろん、星喰み(アバドン)という星間犯罪の証拠を隠滅するための武力行使はギルドの正規業務ではありませんし、ピアースはなにがしかの不正な手段で惑星破壊爆弾を入手しているはずですが……。


『流出の可能性があるとしたら、諜報部、開発部、資材部、保安部あたり?』

「おそらくは」


 諜報部はメラニー直属の組織で惑星破壊爆弾のデータを入手した当事者。

 そしてそのデータを元に兵器開発を担当した開発部。

 ギルドが保有する機器備品、すなわち開発された惑星破壊爆弾を管理していた資材部。

 さらに実際に武力行使のために戦力……惑星破壊爆弾を運用する保安部。

 技術開発拠点から持ち出された情報を元に開発された惑星破壊爆弾と、その技術情報にアクセスする事が可能なのはアイリスさんが挙げた4つの部署だろうと私も思いました。


 この中で最もやっかいなシナリオは諜報部と開発部からの情報流出です。

 惑星破壊爆弾は遺失技術の産物ですから、リバースエンジニアリングは困難です。現物が流出したのであれば、残弾を使い切ればそこで流出の影響は止まる可能性が高いでしょう。


 ですが問題は開発データが漏れてしまったシナリオで、恒星間犯罪組織が惑星を容易に砕く力を持つというのは大規模犯罪の誘発や人類の破滅に繋がりかない大事です。


 ピアース自身は既にヒナによって討たれた後ですが、彼の協力者がまだギルド内に潜伏している可能性が高いことを考えれば、早急にどこから惑星破壊爆弾が流出したのかを特定する必要があるでしょう。


 ただ問題は本来であればギルド内に潜伏する犯罪組織を摘発するはずの監察部が、ピアースの指揮下にあったということです。


「監察部はまともに機能していない可能性がありますから、少々状況は危ういですね」

『だよね。そう言えばこの間、将軍が新任の監察部長に動いて貰うって言ってたけど?』

「今のところどのような人物が着任したのか公にされていませんから、信用できるかどうかも微妙ですね。人となりが判れば信用できるかどうかも判断できるのですが……。ただ将軍の口ぶりからすればオラクル内ではある程度周知されてるようでした」

『私達、オラクルにはあんまり出向かないからね。内部事情に詳しい友達でも作っておけば良かったね』


 アイリスさんはそう言われますが、私は1人、アイリスさんの為に動いてくれそうな「内部事情に詳しい友人」に心当たりがありました。

 彼女に1度コンタクトを取ってみても良いかもしれません。


『アイリスさんっ!なにしてるんですかっ!今日はお仕事禁止ですっ!』

『ごめんごめん、ちょっとアリサと世間話を……。ごめん、マリエッタに今日は休めって言われているから』

「わかりました。ではまた後日」

『トワによろしくね。トワ、寂しがってない?』

「今はお休み中ですけど、もの凄く寂しがっておられますよ?」

『……私も寂しい、って伝えておいて』


 通信を切る間際にそう言ったアイリスさんの表情は、珍しくアンニュイなものでした。


 もちろんそれは惑星破壊爆弾の事を憂いているのではなく、言葉通りトワ様と離れている時間に対する寂しさなのだろうと私は思いました。


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