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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部9章「トリコロール・ナイト」クレリス-闘機の惑星
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#13

 クレリスという惑星は学術研究の拠点として有名だけど、同時に周辺宙域の交易ハブであり、文化の発信地でもある。

 それ故に街中には最先端の流行……ファッションやレジャー、食文化が溢れている。


 私がクレリスを訪れるのは3……いや4回目だけど、いずれも短期間の滞在、かつ大半の時間はカルティアの所で過ごしたから、街中をゆっくりと散策するのは初めてかもしれない。


「アイリスさん、ここ!実は前々からチェックしてたんだけど、なかなか来れなかったんだ!」

「えっと……お客さん、全部カップルに見えるんだけど?」

「いいじゃない、だってお姉さまはボクのダンスパートナーだったし!」

「アウレリア、酷いですっ!アイリスさんはわたしのパートナーですっ!」


 どうやら店内ではカップル向けのスイーツが提供されているらしい。

 店内に目をやると、客のテーブルに並んでいるのはシェアする前提の巨大なパフェやペアになったデザートプレートばかりで、ドリンクも大型の容器に2本のストローが刺さっている。

 うん、どうみてもここって恋人向けだよね?


 そんなお店の中へ、2人に手を引かれ半ば連行されるように入店する。

 3人連れは珍しいのか、店員さんも一瞬だけ小首をかしげたけど、こちらが少女3人なので何も言わずに窓際の席に椅子を1つ追加してくれた。


「すみません、カップル限定のお店なんですよね?」

「最初はそうじゃなかったんですけど、最近はそんな感じになってますね」


 店員さんの言葉通り、周囲はカップルだらけだし、そもそもそれぞれのテーブルは二人がけになっている。いや、ホント場違いだよね、私達。


「アイリスさんっ!わたしこのチョコパフェを頼みたいですっ!」

「ボクはこっちのスイーツプレートかな?」

「ドリンクはストロベリーソーダにしますっ!」

「ボクはキャラメルマキアートにするよ」


 私が周囲の様子を見ている間にマリエッタとアウレリアが注文を決めている。

 私も何かを頼もうと思ってふと気が付いた。


 ここのメニューは基本的に全てがカップルサイズだ。当然、マリエッタとアウレリアが頼んだものも。

 二人とも体格の割にはよく食べるとはいえ、2人前を食べられるほどではない。

 と言うことは……。


「もしかして、私は自動的にパフェとフルーツプレートを食べる事になるの?」

「はいっ!」

「あと、ドリンクもソーダとキャラメルマキアートだね」

「選択権無しなの?」

「はいっ!」


 笑顔でそう答えるマリエッタ。まぁ、この子達が楽しそうならそれでいいけど……。


 私も一応は年頃の女の子だから甘い物は嫌いじゃない。

 けどさすがにこの組み合わせはちょっと甘すぎる気がする。せめて飲み物ぐらいは選ばせて欲しいかったかな……。



「――でね、エミールったら酷いんですよっ!高機動型が最高だ、重装甲はダメだって!」

「んー、ボクとしてはバランスを取った状態で性能を突き詰めるのが美学だと思うけどな」

「それ、貧乏学生寮のドローンには無理な欲張りプランですっ!」


 山盛りのカロリーを何とか片付け、少しぽっこりとしたお腹をさすりながら聞くとはなしに2人のやり取りを聞いていると、いつの間にか話題はマリエッタが入り浸っているドローン格闘研究会の話になっていた。


 なんでも2週間後、クレリスの暦で年末にあたる日に開催されるドローンバトルフェスティバル――エイギスへの挑戦権を掛けたアレ――に向けた最終調整が進んでいるらしい。

 たけどブランシェリリから出場するエミール達の高機動型セッティングはマリエッタのお気に召さないのだそうだ。


「高機動か重装甲かは死活問題ですっ!それこそ星が滅びる問題ですっ!」

「いや、それ大げさでしょ?」

「そんなことないですっ!実際、アーレスはこれで滅びましたっ!」


 アーレスというのは私の謹慎期間中、マリエッタとヒナが星喰み(アバドン)がらみで訪れた星だ。

 確か惑星内部が2つの派閥に別れて30年以上も内戦を続けていたと聞くけど……。


 え?内戦の理由って、そんなくだらない話だったの?


「そうですよっ!まぁ裏で戦争を煽ってた黒幕はいましたけどっ!」

「うんうん。それぐらい重装甲か高機動かは重要ってことだよね」

「というかアウレリアもドローンとか興味あるの?」

「ううん、特に。でもローズリュージュでもドローン部の連中が騒いでるから、否応なく耳に入ってくるよ。そういえば――」


 少し声をひそめてアウレリアはローズリュージュのドローン部がルールの穴を付いた、あまりよろしくない作戦を立案しているらしい、と言った。

 ルール上は不正行為ではないらしいけど、おそらくそのプランが実行されれば周囲から白い目で見られそうな作戦だということだけど。


「なんですか、それっ!卑怯ですっ!」

「いや、具体的な話がわからないから卑怯かどうか判らないよね?」

「そもそも資金力が違う時点で卑怯ですっ!うち(ブランシェリリ)は1機しか出場させられないのにっ!」


 そう、マリエッタに聞いた所ではドローンバトルは2対2のタッグマッチで行われる事になっているらしいんだ。

 他のチームは異なる特性の機体を用意して相手に合わせた戦法をとるらしいけど、ブランシェリリはなにぶん奨学生寮だ。

 懐事情的に高価なドローンを複数用意することが出来ないので、1機で勝負を挑むしかないらしい。


 でもまぁそれはこちらの事情であって2機用意するのはルール通り、むしろ1機でエントリーする方がレギュレーション違反なんじゃないだろうか。

 いや、それ以前に……。


「そもそもなんで予算も無いのにドローンバトルに出るの?壊れたら全部パーでしょ?」

「優勝したら賞金が出るんですっ!高額賞金ゲットなんですっ!」

「賞金っていうか、エイギスさんが壊したドローンの賠償をしてくれるって事らしいよ。ドローン本体よりもかなり高額な金額って言ってた」


 エイギスは腕試しをしたいだけだから、建前上賞金を出すのはNGだけど、腕試しの結果破壊したドローンの持ち主には手厚い補償を行うってことか。

 回りくどいけど、生真面目な彼らしいかな。


 学生の側からすれば高額賞金が手に入るだけじゃなくて、自分達の技術力をアピールして就職を有利にするという狙いもあるんだろう。つまり、勝つことが出来れば得るものが大きい。

 多少ルールの抜け穴を付いても勝つことを目指すのは、当然といえば当然なのかもしれないね。


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