↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部9章「トリコロール・ナイト」クレリス-闘機の惑星
626/632

#11

 そんな事を話していると、パーティ会場に流れていた音楽の曲調が少し変わったことに気が付いた。

 これまでは存在をあまり主張しないBGMだった演奏――そう、生演奏なんだ――が、少しテンポを上げて自己主張するような曲調に変化している。


 見るとパーティホールの中央部から参加者が自然に移動して空間が出来ている。

 うん、これはダンスタイムってやつだろうけど……学生寮のパーティなのに社交ダンスまでするのかとちょっと驚いた。


「ミス・セレスセラ。私と踊って頂けませんか?」

「ご令嬢、最初のダンスは私と」

「俺と踊ってくれ、セレスセラ嬢」


 気付くとアウレリアがいつの間にか数人の男に囲まれていた。

 ダンスの申し込みが多数来るのは人気がある証拠だけど……これまで遠巻きに見ていただけなのに、急に声かけしてくるのはいかがなものかと思うね。

 それにアウレリア、もの凄く嫌そうな顔をしているし。


 それもそうか。群がっている男達が踊りたいのは「恒星間企業セレスセラの経営者一族に連なる令嬢」であって「アウレリア」と言う1人の女の子じゃないから。

 誰1人として彼女の事をアウレリアと呼ばないことからもそれが透けて見える。


 そんな様子を見て取って思わずため息をついてしまった私は、持っていたブドウジュースのグラスをマリエッタに預けるとアウレリアの元へ歩み寄った。


「アウレリア。私と踊ってくれる?」

「え?」

「私、男役でも踊れるよ?」

「わっ、それいいね!よろしくお願いします、お姉様!」


 いきなり横合いから出て来た小娘にダンス相手をかっさらわれた男共は不快げな表情だけど、今の今までアウレリアがそういう表情だったことに気づけなかった罰だ。

 私は男達をその場に残してアウレリアをダンスホールへエスコートした。


 まずは音楽に合わせて軽くステップを踏みながらアウレリアに声を掛ける。


「アウレリア、ダンスは得意?」

「ママの付き合いで社交界に連れ出されてたから、そこそこ踊れるよ。少なくともここのお子様達よりは」

「じゃあ、並の男が2度と声を掛けてこないようにハイレベルなダンス踊ってみる?」

「あ、それ面白そう!でもお姉様、踊れるの?」


 アウレリアはさらっと私の事を「お姉様」と呼ぶけど、実年齢的にはこのこの方がずっと年上なんだけど。

 でも不思議と私はその言葉をなんの抵抗もなく受け入れてしまった。

 まぁ、それはアウレリアがトワにそっくりだから、トワに「お姉ちゃん」と呼ばれている感覚に近かったからなんだけど。


 一瞬、そんな考えたあと、私はステップを踏みながらアウレリアに微笑みかける。


「セヴランスの王宮で練習してきたからね」

「あはっ、本場仕込みだね。でもどうして男役なの?」

「そりゃ、トワと踊るためだよ」


 私の答えにアウレリアはクスクスと笑うと私にウィンクし、急にステップを複雑なものに変えてきた。

 うん、これは……たぶん初心者だと女性の脚を踏んでしまいそうになるやつだね。


 でもこのステップの具合でアウレリアのダンススキルがおおよそ判った。

 結構謙遜してるけど、この子かなりダンス巧者だね。

 なら、遠慮無しでいいかな。


「じゃ、ここからは本気でいこっか。ちゃんとリズムを感じてね?」


 今度は私が耳元で囁いて、アウレリアの腰にそっと手を添える。


 彼女の淡色のドレスがふわりと揺れ、私のワインレッドの裾と交錯するたび、まるでグラスの中で赤と白のワインが静かに混ざり合うように色彩を振りまく。


 2拍滑るように後退、3拍目で彼女を優雅なスイベルへ送り出す。

 回転とともに白が花弁のように広がり、床に描かれる白の軌跡が観衆の目を奪っているのがわかる。


 私がフォーラウェイで距離を取り、ウィンドミルターンを一気に繰り出すとシャンデリアの光が私達のドレスの上で弾けるように煌めき、まるでグラデーションのように溶けていった。


 最後に脚を交差させてアウレリアを抱え込み、紅と白のコントラストが凝縮するように静止する。


 一瞬、会場か静まりかえった後、拍手が湧き上がった。


「お姉様?今のって……」

「セヴランスで覚えてきたんだけど、変だった?」

「ううん。むしろボクが知ってるダンスとよく似てる……ここの子供達が踊ってるものよりも、ずっと」

「セヴランスは1000年近く前から伝統を維持し続けてる星だから、アウレリアの時代のダンスがそのまま残ってるのかもね?」

「そうなんだ……あの星にちょっと興味わいたかも」


 2人でそんな話をしながら、マリエッタのいるテーブルへと戻った。

 心なしか周囲の女子学生達の視線が険しい気がするけど……まぁ、私はここへ社交や婚活をしに来た訳じゃないから、別に良いか。


「アイリ……じゃなくてお姉ちゃんもアウレリアもすごいですっ!」

「マリエッタも王宮で随分練習してたじゃない。誰かと踊ったら?」

「ううっ、意地悪ですっ!踊るならアイリスさんとがいいですっ!」

「あはは……じゃあボクは休んでるから、お姉様はマリエッタに返却するよ」


 アウレリアは愉快そうにそう言うと、グラスを手に壁の花に戻った。

 いや、それにしてもトワと同じ顔、同じ髪色、同じ声でああも楽しそうな表情を浮かべられると、違和感が半端ないね。


 マリエッタに手を引かれて再びダンスホールへ向かいながら、私はそんな事を考えていた。


 結局その後、アウレリアとマリエッタにもう1回ずつダンスに付き合わされ、夜会のフロアには朱と白と黄色の花が咲き乱れた。


 モテモテだよね、私。

 まぁ相手は2人とも妹みたいな存在だけど。


 マリエッタとアウレリアは随分と意気投合したみたいだから、次に夜会の話が出たら2人で参加して貰おうかな。

 私はもうこれで十分堪能したからね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。