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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部9章「トリコロール・ナイト」クレリス-闘機の惑星
618/633

#3

>>Towa


 アイリスとマリエッタ、それと念のためにリュミエールをクレリスに残し、私とアリサは船上の人になった。


 目的地はダンディライアンだけど、クレリスからだと1度のジャンプでは到着することが出来ない。

 どこかを経由する必要があるという話をアリサとしていたんだけど。


「トワ様、中継地に希望がないようでしたら、G17の技術開発拠点を経由しませんか?」

「いいけど、どうして?」

「アルカンシェルの整備と武装の手配をしておこうと思いまして」

「ほほう」


 G17の技術開発拠点っていうとリュミエールを入手した場所で、私達がスターゲートの情報を入手した場所でもある。


 そう言えばアイリスがスターゲートから帰ったらアルカンシェルに武器を搭載するって話をしてたっけ。

 謹慎とかでバタバタしてたからすっかり忘れてたけど、急ぎの用事がないから丁度いいかな?


 それに機体に不調はないけど、スターゲートをくぐったり戦闘したりしたし、念のためアルカンシェルの点検をして貰うのは良いアイデアだね。

 そう思って私が頷くと、アリサ少し物憂げな表情で続けた。


「それに、例の惑星破壊爆弾についても少し調べておいた方が良いかと思いまして」

「……そうだね」


 そうだ。デモクラスもアーレスっていう星も、G17の星にあった惑星破壊爆弾によって破壊されたんだ。

 一体いくつの惑星破壊爆弾が持ち出されたのか、調べておいた方がいいよね。

 私はアリサの提案に同意し、アルカンシェルは第1037技術開発拠点へ向かうことになった。



 G17の小惑星がある宙域は相変わらずセンサーでは何も探知できなかった。

 前回訪問した際の座標データはあるけど、小惑星が恒星系内を公転しているなら場所が移動してる可能性もあるし、やっぱり通信を入れて招き入れて貰わないとダメかな。


「サクヤ、G17に通信いれて。重力波通信で」

『はいよー。おっ、すぐに感あり。通信繋ぐね』

「うん」

『HF-PX00A Arc-En-Ciel、こちらは第1037技術開発拠点統括人工知性体G17。貴艦の再訪を歓迎します。お帰りなさい』

「ただいま」

『トワさんですね。お久しぶりです』


 まるで私達が通信を入れるのを待ち構えていたかのようなタイミングでG17が応じてくれた。

 あれ?でも声は前と同じなんだけど、少し印象が違うような気がする。

 前はもっと平坦というか、応答も声のトーンも機械的だった気がするんだけど……。


「G17、何かあった?」

『はい。ですが詳しいお話は着陸後に。着陸、されますよね?』

「うん」

『ではトラクタービームで誘導を行います』


 そう言うと通信は切れたけど、やっぱり雰囲気が違う。

 どこが違うのか具体的に指摘することは難しいけど、自然すぎて不自然というか、よく分からないけどそんな感じがする。


「G17、ずいぶんと雰囲気が変わりましたね。人間味があるというか」

「そう、それ」


 そうだ、人間っぽいんだ!

 たしかに以前話した時のG17って、G15と比べたら人間味はあったけど、それでも話しているとすぐに人工知性体だって判る感じだった。

 でも今のG17は普通に人と話してる感じだったんだよ。

 人工知性体ってそんな急に変わるものなのかな?


「造られた知性ですから、バージョンアップされない限りはそう大きく変化しないと思いますが……。彼女には聞くことがありますし、話の合間にでも確認してみましょうか」


 アリサの言葉に私は頷き、アルカンシェルが小惑星――技術開発拠点へと誘導されてゆく様子を見守った。


 前回同様、クローキングデバイスの影響範囲内に入った瞬間、アルカンシェルの船窓にいきなり小惑星が出現した。

 小惑星上に見える、施設の建屋は前回私達が訪問したときと変わりないようにみえる。


 うん、私の感覚では4ヶ月ぶりぐらい、実際には7年ぶりぐらいになるのかな?まぁ、それぐらいの時間じゃ変化が生じるとは思えないけど。


「トワ様、あそこを見て下さい」

「どこ?」


 アリサが指さす船窓の先は前回アルカンシェルを駐機させたあたりだけど……特に何も変わったものは見えない。

 しばらく目をこらしてみたけど、やはり何かがあるようには見えなかった。


 なんだろう、テロマーにしか見えない、何かがあるんだろうか?


「何もないよ?」

「ええ。ヨーコが乗ってきた船と、諜報部の船が無くなっています」


 そう言われて初めて気が付いた。

 そう言えば前回ここを訪れた時、アリサの知り合いのヨーコっていう人が乗ってきた貨物船と、ギルド諜報部の船があったんだっけ。

 どちらも2、300年ぐらい前に到着して放置されてた船だけど、それが無くなってる。

 うん、無いものはいくら見ても見つけられないよね。


「風化した?」

「それなら残骸が散らばっているはずですし、7年ほどで一気に風化が進むとも思えません。G17は施設の維持管理システムを喪失したと言っていましたが、維持管理システムが復旧したのかもしれませんね」


 そう言えばアイリスがG17をサポートする知性体が見つかれば連れてくるって言ってたっけ。

 でも私達がこの小惑星を訪れるのは今回が2回目だし、ここは余程の事がない限り偶然たどり着ける場所じゃない。


 アイリスはカルティアの伝手で代役を探すって言ってたけど、その伝手で誰かが届けてくれた?

 G17はギルド嫌いだから、オンブルで誰かが届けに来ても受け入れるとは思えないし、誰がどうやって届けたんだろう。


 そんな事を考えている間に、アルカンシェルは前回駐機したドックの入口へと着艦していた。


 アルカンシェルを降りた私達は、思ってもみなかった出迎えを受けた。

 なんだろう、これ。

 ピンク色の、デフォルメされた子猫型ドローン?

 妙にファンシーな造形だけど、G17が使いに出した子機なのかな?


「可愛い」

「ええ、ファンシーというか少女趣味的な可愛いらしさですね」

『可愛い可愛い言うな』


 私とアリサがそんなことを言っていると、どこからか中年男性の声が聞こえた。

 いや、今の苦々しげな声は子猫型ドローンから聞こえたような気がするけど。


「今、喋った?」

『おう、喋ってるぞ。あんたがセレスティエル、そっちがテロマーだな?エレオノーラから話は聞いている』

「エレオノーラ……というと、確かG17の人格モデルになった研究者ですよね?」

『良く知ってるな。あんたらがG17と呼んでた知性体はエレオノーラの人格を完全に発露した。できればG17じゃなくてエレオノーラと呼んでやってくれ』

「わかった」

「……それはかまいませんけど、人格を発露?人工知性体が、ですか?」

『まぁ詳しい話は中で本人に聞いてくれ。ああ、俺のことはランドルフと呼んでくれ』


 子猫型ドローンが名乗った名前には聞き覚えがあった。

 G15の星で再生された音声の主、Dr.ランドルフ。そういえばドローンの声は確かにDr.ランドルフの声に似ている気がする。

 ということは……。


「人生には娯楽がないと生きていけない人?」

『お?話がわかるな、セレスティエル。エレオノーラ(あいつ)にも是非そう言ってやってくれ』

「わかった」


 やっぱり本人――もしくは、さっきの話からするとDr.ランドルフの人格を発露した知性体――らしい。

 たしか私がその話を聞いた時も、Dr.ランドルフがDr.エレオノーラ・グリーフにそう熱弁していた際の録音だったし、2人の関係はあの会話が録音された当時と同じなのかもしれないね。


 でも、おじさんの人格がどうしてファンシーな子猫型ドローンに入ってるんだろう?

 私がそのことを聞こうと思っている間に、ランドルフと名乗ったドローンはさっさと建屋の方へと戻っていった。


 私はアリサと顔を見合わせ、いまいち状況が理解できないながらもランドルフの後を追うことにした。


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