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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部8章「ダモクレスの剣」デモクラス-懲槌の惑星
607/628

#15

>>Iris


 よりによって生き埋めとは……。

 セノンさんが言った言葉に私は愕然とした。


 彼が続けて語った説明によると、民衆がギルド支部を襲撃したのは政府が支部の職員を地下へ幽閉した数日後の事だったらしい。

 すでに政府による見せしめの処刑が行われていた後だった事もあり、民衆達はギルドが悪、ギルドは敵だという政府のプロパガンダに踊らされる形で支部を襲撃したそうだ。


 デモクラス政府も「財源」となる人質を守ろうとしたようだけど、多勢に無勢で放火された支部は炎上、そして内部機材の誘爆によって支部の建物は崩壊したそうだ。

 地下室に閉じ込められた職員達を残したまま。


「それは……どれぐらい前のことですか?」

「もう、1ヶ月近く前のことじゃ」


 ギルドが全力制裁を決め、デモクラスへの退避勧告を行ったのが3週間前だと将軍は言っていた。


 となるとやはり統括局は支部の職員が全滅しているという前提で制裁措置を行っているのだと私は確信した。

 抜かりないスゥ局長のことだ。

 おそらくオンブルを派遣して衛星軌道上から状況をリアルタイムで監視していたんだろうね。


 ただ、死亡確認が取れない限り支部の職員は生存扱いになっているだろうし、生存している以上は救出の義務がある。

 だから私達がここへ派遣されたってことなんだろう。


「アイリスさん、私とヒナで『生存確認』を行いますので、トワ様とマナ達を連れて先に軌道ステーションへ……」

「いや、支部の辺りをうろついているとギルド関係者だとバレるかもしれないよ?いくらアリサでも惑星の住民全員を相手にはできないでしょ?」

「それは、まぁ……」


 できなくもないって言う顔をしてるね、アリサ。

 でもそれは全力制裁の前に惑星住民を虐殺する行為になる。


 彼らが死ぬタイミングが半日かそこら変わるだけで、結果として全員が死ぬことに違いはないけど、だからといって私達が直接手を下すのは間違っている。


 なら、リスクを最小限に留めるためにも不殺の制圧力を確保して行動した方が良いだろう。

 それに……軌道ステーションに無秩序なデモクラスの住民が上がってきているかもしれないから、マナ達だけを単独行動させるのもあまり好ましくない。

 私達がフォローする形で同行させるのがベストだろう。



 やがて夜になり、私達は行動を開始した。

 デモクラス市内は外灯の整備もまともに行われていないのか、周囲を照らす灯りはまばらだった。


 普段ならこういう暗がりは不便さや不安を煽るものだけど、今回に限って言えばあまり人目に付きたくない私達にとって好都合だった。


 それにしても陽も落ちたというのに辺りにたむろする人影がそれなりに多く、遠くからは喧噪や何かが壊れる大きな音も聞こえているのはどういうことだろう。

 まるでお祭り騒ぎでもしているような……。


「いかに自由を満喫してるって感じですね」

「まったくです。無軌道な若者のような自由ですけど」

「近頃の若者は……」


 ヒナとアリサがそんな事を言ってるけど、少なくとも外見上は2人とも若者だからね?

 それにヒナはまだ18歳だったはずだし、十分若者の範疇だからね?


 しかし夜の喧噪は自由を謳歌している象徴、か。

 騒いで物を壊す体力があるなら、生産性のあることをすれば良いのに。


 私がそんな事を思っているとアリサが私に声を掛けてきた。


「夜がこれだけ騒がしいのなら、瓦礫をどかしていても注目は集めないでしょうね」

「いや、それでもあまり長時間騒音立て続けると余計な注意を惹きかねないからね。状況次第だけど一発で片付けた方がいいかもしれないよ?」


 昼間に確認したときの記憶を辿って、支部の廃墟がどうなっていたか思い出す。

 ……そう、支部は建物としてはほぼ崩落状態で、瓦礫の山と化していた。


 地下室がどこにあるか外見から判別はできないけど、あれがギルドが建設した標準仕様の建造物なら、おそらく最奥に地下への階段があるはずだ。

 廃墟全体を探すのではなく、あたりを付けて地下へ降りる方法を探すのが効率的だろうね。



 騒々しい夜ではあるけど、幸いにも誰の目にも留まらす支部の跡地へ到着することができた。

 改めて周囲の位置関係を確認した結果、ここは街の中心部や軌道エレベータからは随分と離れているけど、街外れというには少し距離があることが判った。


 周辺は整備の手が全く行き届いていないようで外灯も殆ど点灯しておらず、身を潜めて何かをするには丁度良いだろう。

 アリサとヒナがマイクに偽装していたレゾナンスブレードを発振しているおかげで、星明かりと合わせれば私達の活動には支障がないレベルの光源は確保できている。


 ただ、マナやセノンさんには暗すぎるので、トワが撮影用ライトを使って2人の足下を照らしているけど。


「照明係の本領発揮だね?」

「思ってたのと違う」


 そんな事を言いながら、瓦礫の山を調べてゆく。

 やはり、この構造は標準的なギルド支部の建物だ。


 現地の建造物を間借りする場合を除けば、基本的にギルド支部の建物は同じレイアウトになっている事が多い。

 毎回建築デザインしなくて良いし、人員と同時に規格化された建材を運び込んで簡単に支部が建造できるからね。


 ただ問題は……この廃墟には、普段なら使われないはずの石材が多く混じっているということだ。


「この石材、どこから出てきたんだろ?」

「標準モジュールなら金属素材や合成樹脂しか使っていないはずですが……」


 私とアリサがそんな話をしているとセノンさんが声を掛けてきた。


「これは建物を外装として覆っていた部材ですな」

「外装?」

「うむ。支部開設当時のデモクラスは好景気に沸いておってな。建物もみな華美な装飾を施すのが流行していたそうじゃ」

「なるほど、実用性重視のギルド支部は回りの光景から浮いちゃうってことですか」

「そうじゃ」


 まあ地元に溶け込むための外装というのは判らなくもないけど、少し当てが外れた。

 金属素材や合成樹脂ならブラスターで融解できると思ったんだけど、石材はそういう訳にもいかない。


 地下へ続く階段が石材で覆われていないことを願うばかりだけど……。


「アイリス様、階段らしきものを発見!」

「……これは……厄介だね」


 残念ながら私の願いは叶わなかった。

 階段の位置は予想したとおりの場所だったけど、崩れた構造材の中にかなり多量の石材が混ざってたんだ。


 砕けた石材の一つ一つは除去できない程の大きさではないけど、いかんせん数が多すぎる。

 おまけに石材だと熱エネルギーを用いて破壊するブラスターでの破壊が困難だ。


「アガシオン……でしたっけ?アレなら一撃だと思います!」

「え?これもブラスターでしょ?」

「量産型フォトナイザーの銃ですよね?アレ、微妙にブラスターじゃないですから。石造りの建物(宝石店)を普通に破壊してましたよ」


 ヒナは実際にトーエイで量産型フォトナイザーを目撃しているから、彼女がそう断言するということはそれは事実なんだろう。

 宇宙空間で試射したときはブラスターに見えたんだけど、微妙にブラスターじゃない謎武器なのか、これ。


 そう言えばケンが使ってたフォトニックブレードとやらもエネルギー武器なのに実体があったし、思ってた以上に謎技術なんだね、フォトナイザーシステム。


「時間もあまりないし、ダメ元で試してみようか。『アガシオン』!」


 私の言葉に反応して左手の掌中に銃が生成される。


「トワ、セノンさんとマナちゃんをシールドで守ってくれる?アリサ達も念のため離れたところで遮蔽とって」

「うん」

「はい」


 私の言葉に皆が防御態勢を取る。

 石材を破壊するということは、十中八九爆散させることになるだろうからね。


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