#6
ブリッジで保安部と打ち合わせをしていたアイリスとマリエッタも降りてきたので、全員でお昼を食べながらのランチミーティングをすることになった。
議題はデモクラスでの行動について。
「今回はきっと緊急離脱が必要になるから、マリエッタはアルカンシェルで全体指揮を取って欲しいんだけど」
「はいっ、わかりましたっ!」
「デモクラスへ降下するチームは私とアリサ、ヒナでいいかな?」
「私はそれで問題ありません」
「ワタシも、大丈夫です」
あれ?この役割分担だと私だけすることがないよね?
このまま黙ってると留守番になりそうな気がしたから、口に頬張ったライスバーガーを急いで食べて、私は手を上げた。
「アイリス。私も行く」
「トワ、今回は我慢して欲しい。たぶん、見たくないものを見ることになると思うから」
「でも、アイリスも、アリサも、ヒナも行く。なら私も行く」
「トワ様……」
「私はたぶん役に立たない。でも、アイリスが辛いときは側にいたい」
「……ありがと。無茶しないこと。私とアリサの言うこと聞くこと。約束できる?」
「わかった。ヒナの言うことは聞かない」
「ええっ、それ酷くないですか!?ワタシだけ無視されるんですか!?」
アイリスを支えたいと思ってるのは本当のことだ。でも、私がデモクラスへ行きたいのはそれだけじゃない。
どうしてあの星滅ぶことになったのか。
そして、どんな人達が滅んでしまうのか。
私は、それを知っておかないといけない気がしたんだ。
「アイリス様、デモクラスの地表へ降りる際についてなんですが、監察部から潜入方法について提案が」
「提案?」
「はい。監察部長から報道関係者用の取材パスを託されています。それを使ってメディアを装えば、若干ですが活動しやすくなるかと」
「……なるほど。アリサ?」
「そうですね。旅行者を名乗る訳にもいきませんし、妥当な提案ではないかと」
「じゃあその提案、採用させて貰うよ」
どうやら私達はメディアの取材クルーとして地上に降りることになるらしい。
その後、メディアの取材クルーを装うために取材チームの役割を決める事になった。
ヒナは、必要な役割はインタビュアーとカメラマンと照明さんと音声さんだと言ったんだけど、アリサもヒナもインタビュアーをやりたがったのでアイリスも含めた3人でくじ引きで決める事になった。
そう、3人だ。何故か私はインタビュアー候補に入れて貰えなかったんだよ。
「えっと……トワさんはちょっと向いてないかなっ」
「解せぬ」
慰めるように言ったマリエッタにそう応えたけど、本当はわかってる。
私のコミュ力じゃどうみてもミスマッチだからね。
けどくじ引きの仲間はずれにされたのはちょっとしゃくだったから、優先権を行使して照明さんに立候補してみた。
なんか格好良さそうだったし、私が持ってる白のイグナイトは光るからね。
「トワ?インタビューするときの照明に白のイグナイト使ったらダメだからね?」
「善処する」
「いや、善処とかそういう話じゃないからね!?」
で、くじ引きの結果インタビュアーはアイリスに決まって、ヒナとアリサが悔しがっていた。
最終的にヒナはカメラマン、アリサは音声さんになった。
まぁアリサのレゾナンスブレードはマイクに偽装するって言ってたし、音声さんはぴったりじゃないかな?
打ち合わせは概ね終わったので、次は装備の確認。
表だって武器は持ち込めないけどアイリスのアガシオン、アリサとヒナのレゾナンスブレード、私のレゾナンスシールドとイグナイトは持って行くことになった。
あれ?これアイリスのブラスターがXthじゃないぐらいで、殆どいつも通りじゃない?
「普段から目立つ武器持って示威するような立ち位置でもないからね。それに小娘が武器振り回しても抑止効果は薄そうだし、私達はこういう隠し武器のほうが似合ってるんだよ」
「ギルドを抜けても、暗殺者として生計を立てられそうですね」
アリサは笑いながらそう言うけど、こんな美少女チームだと目立つから暗殺者稼業は難しいんじゃないかな。
そんな事を言っている間にヒナが見慣れないユニットを運んできた。
手のひらに載るサイズで、ちょっと鳥っぽい形をしている。撮影用のドローンかな?
「これは告死鳥だよ」
「ナイチンゲール?」
確かナイチンゲールは鳥の種類だった気がするけど、何に使うものなんだろう。
私がナイチンゲールを手に取って眺めていると、アリサがそれに気付いたのかヒナに話しかけていた。
「ヒナ、これは統括局の指示ですか?」
「はい、移動中に接触してきた連絡員から預かりました」
「そうですか……。なら統括局は、もう……」
「おそらくは」
どういうことだろう?
持ってきたヒナはともかくとして、アリサはこれが何に使われるか判ってるみたいだ。
だけどさっきこのデバイスを見てからアリサの表情は険しくなっていて、ちょっと声を掛けづらかった。
だから私は傍らに居たアイリスに説明を求めてみた。
「あのナイチンゲールはね、内部にパーソナルデータが記録してあるんだよ。本体に生体分析機能があるから、データと分析結果を突き合わせて相手がデータにある本人かどうか調べることができるんだ」
「ほほう」
「でね、一致するとまるで鳥が鳴いているような音で知らせてくれるんだけど」
本人確認用デバイスってことだよね?
なら、どうして「告死鳥」なんていう名前が付いてるんだろう。
私の問いにアイリスは軽くため息をついて言った。
「告死鳥はね、主に遺体に対して使われるんだ」
「アイリス、それって」
「うん。統括局は、人質になっている職員が既に殺されてると見てるってことだよ。ねぇトワ……それでも地表へ降りる?今ならまだ……」
「アイリス。私は大丈夫」
「……そう」
もしかするとデモクラスは、私が想像しているよりも過酷なところなのかもしれない。
でも、私はそれでも行かないといけないんだ。




