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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部8章「ダモクレスの剣」デモクラス-懲槌の惑星
597/638

#5

>>Towa


 予定通りのタイミングでヒナの乗ったオンブルがアルカンシェルへ合流してきた。


 アルカンシェルが停泊しているのは軌道ステーションの近くじゃなくてデモクラスから少し離れた宙域。

 で、その場所でヒナのオンブルをアルカンシェルにドッキングさせることになった。


 いや、それにしてもブリギッタのマグネットアンカーは大活躍だよね。

 今回も一発でオンブルをキャッチしてたし。


 ただドッキングといってもハッチが繋がっている訳じゃなくて、オンブルが物理的にアルカンシェルに接触しているだけだから、ヒナが移乗するのは一旦宇宙に出る必要がある。

 私は試したことないけど、アリサが言うにはテロマーやセミテロマーは短時間なら真空中でも生存できるらしいけど、緊急事態でもないのに生存テストみたいなことをする必要はないから、ヒナはコスモスーツに着替えて短時間のEVAを行うことになった。


 数十秒のためにコスモスーツを着てアルカンシェルに乗り込んできたヒナは、私服に着替えるついでにお風呂に入りたいと言った。

 単座の小型艇にはお風呂もシャワーもないから、長旅の後は汗を流したいっていう気持ちは良くわかる。


 でもシャワーはともかくとして、宇宙でお風呂、それも檜風呂に入れるのは銀河広しといえどもアルカンシェルぐらいだとは思うけど。

 ちょうど私もお風呂に入ろうと思っていたタイミングだったから、私もヒナと一緒に入ることにした。


 入浴前、雑談をしながら服を脱いでいると、コスモスーツを脱いだヒナの左肩に保護テープが貼られていることに気が付いた。

 あれ?ヒナ、怪我してるのかな?


「ヒナ、それは?」

「ああこれ?実はちょっとヘマしちゃって……」

「ヘマ?」

「トワは獣魔って知ってたっけ?」


 うん、この前クレリスで一緒に遊んだ時からヒナには名前で呼んで貰ってるんだ。

 アリサに様付けで呼ばれるのはもう慣れたけど、ヒナにまでそう呼ばれるのは堅苦しいからね。


 いや、今はそれよりも獣魔の話だ。


「知ってる。戦った事ある」

「ああ、そうだったね。実はね、数日前の任務で――」


 そう言ってヒナが話してくれたのはミス・ギャラクティカという美人コンテストに獣魔将が現れたという話だった。

 え、どういうこと?

 獣魔も獣魔将も、ジャーアックも、ケンが全部やっつけたんじゃなかったの?


「実は事件の後に追跡調査してみたんだけど、正体は不明だったんだ。でも13年前にトーエイから逃げ出してるのは間違いないから、先代のフォトナイザーが打ち漏らした敵の1体だろうね」

「なら、まだ他にもいる?」

「……そう言えば、可能性あるね。あとで監察部に連絡しといたほうがいいのかな……」

 ケンは今、セヴランスでニーアの護衛騎士をやってるはずだし、もし他の星に獣魔や獣魔将が出たらケンが出張して討伐することになるんだろうか。

 まぁケンはトーエイで暇を持て余していたし、むしろ暇つぶしには良さそうだけど。


 そんな事を言いながら、私達は浴室へと足を踏み入れた。

 最近は天井のシールドを閉めたまま入浴することが多かったんだけど、今日はヒナがいるから久しぶりに露天モードだ。


「位置的に……たぶんあそこに見えてる青い星が、デモクラスだね」

「ほほう」

「こうやって宇宙から見ると平和に見えるけど……。あそこも明後日には滅亡するんだね」

「……どうして、こんな事になるの?」


 ヒナのせいじゃないことはもちろん知っている。

 でも、どうしてもデモクラスが滅びるという話を聞くと、どうしてっていう気持ちが強くなってしまう。


 誰が、何を間違ったんだろうか。

 どうしてやり直せないんだろうか。


 そんな事を考えてしまう。


「あそこの人達は、やっちゃいけない事をしたから、かな。罪には罰が付きものなんだよ」

「しっぺ返しみたいな?」

「そうだね。多分だけど……誰も大きくは間違えてないんだけど、皆が少しずつ間違っていったんだと思う」

「良くわからない」

「あはは……ワタシも、自分で言ってて良くわからないよ」


 ヒナはそう言うけど、この子は何度も星が滅ぶような酷い犯罪と戦ってきたと聞いてるから……。

 きっと、わからないと言いながらも、ヒナは何か思うところがあるんだと私は思った。


 風呂上がり、ヒナにもアルカンシェル名物のフレーバー牛乳を勧めてみた。


 物珍しげに「停蔵庫」に保管されていた色んな種類のフレーバー牛乳を眺めていたヒナだったけど、アリサのお気に入りは抹茶ミルクだと教えると、自分もそれを飲みたいと言い出した。


 抹茶ミルクは緑がかった色のやつだと教えると、ヒナは停蔵庫から一本の牛乳瓶を取り出した。


 私もお気に入りのフルーツ牛乳を手に2人で並んで一気飲みをしようとしたときに、ふと気が付いた。


 ヒナが手にしている抹茶ミルク、アリサがいつも飲んでるやつよりも緑色が濃い気がする。

 もしかして……。


 私は慌ててヒナを止めようとしたけど、手遅れだった。

 腰に手を当ててヒナは既に一気飲みをしている。


 ……ヒナの顔が見る見るうちに歪んでいくのがわかった。


「……苦い……不味い……」

「もう1本?」

「ごめん、それは無理」


 うん。青汁牛乳はまずいよね。


 でも飲んだ後に不思議ともう一本って言っちゃうんだ、これ。

 でもどうして不評の青汁牛乳買ってきたんだろう、マリエッタ。

 確かマリエッタはお試しで飲んだ後は一度も飲んでないはずなのに。


 少ししょんぼりしたヒナを連れて私達はラウンジへと向かった。

 ちょうど今はお昼時で、アリサがキッチンで作っていたライスバーガーが今日のランチだった。


 もちろん、ヒナの分も用意してあるよ。

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