↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部6章「スリーピング・ビューティ」ブライアローズ-凍宝の星船
545/577

#9

>>Iris


 作戦では私、トワの後ろから敵を撃つはずだったのに。

 盾越しとは言えトワが撃たれているのを目にした瞬間に、私は『絆』に突き動かされて予定外の行動をとってしまっていた。


 いや、確かにそうなることとは自分でも予測できていたけど、この所『絆』の手綱を握れていたから油断してたんだよ……。

 結果オーライではあるけど、もう少し精神修養しないといけないかな。


 そんなことを思いながら、私はガンガン運送の一団に視線を向けた。


『今の、何だ……?一瞬で軍警連中を片付けちまったのか?』

『ヤベェ、ギルドヤベェ……』

『社長、敵に回さなんで良かったな。ありゃ軍神か悪鬼の類いじゃ』


 通信機越しにガンガン運送の連中が話している内容が聞こえる。

 いや、内緒話が全部筒抜けなんですけど。


『アイリスさん、ガンガン運送の全システム制圧完了しましたっ!秘匿通信も聞こえると思いますっ!』

『ああ、それで……』


 どうやらマリエッタが手を回してくれたらしい。気を取り直して私はガンガン運送の連中に向かって声を掛けた。


『改めてご挨拶を。私はモーリオンギルドの管理官、アイリス・ブースタリアです。先ほどもお伝えしたように遭難者救助のためにここへ来ました』

『オレはガンガン運送の社長。バン・クックだ。バンと呼んでくれ。オレ達も遭難者の救援の為に来た』


 バンという社長はそう言った。

 けど……外見で人間を判断すべきではないとは思うけど、それでも彼の言葉はいまいち信用しきれない。


 だって彼を含めた8名全員が、胡散臭すぎるんだよ……。


 不揃いなデザインのコスモスーツに描かれたドクロと骨(ジョリーロジャー)のマーク。

 これ見よがしに眼帯を付けている者や物理ヘルメット越しに見える素顔にはバンダナ、髭面、赤ら顔。

 顔面にタトゥーを入れている者もいるし、どこからどうみても運送会社じゃなくて海賊でしょうに!


 だがそんな彼らも一点だけ評価できることがある。

 それはスピンドル軍警と違って、通告に従って攻撃を停止してくれたことだ。


 その一点を持って、私は彼らを――少なくとも今この瞬間は――信じることにした。

 だが、彼らのスタンスについて情報が欲しい。

 だから私は、少しカマかけをすることにした。


『私達は先ほど船倉からブライアローズへと侵入しました。乗客の「私物」とおぼしきコンテナが散乱していましたが……』

『そうか。まぁそっちは別に逃げたりはしねぇからな。まずは冷凍睡眠ポッドをクソ軍警共から守る事が先決だ』

『財宝に興味はないのですか?』

『オレらも金持ちって訳じゃねぇからな。興味ないって言うと嘘になるが……ここへ来たのは救援のためだ。優先順位ってもんがあるだろ?』


 ……どうやら見た目以上に彼らはまともなようだ。

 少なくとも、表向きは。


 そう思っているとガンガン運送の社員達が話している声が聞こえてきた。


『社長、可愛い娘っ子が相手だから格好付けてるよな?』

『財宝だって本当は欲しいだろうになぁ』

『だが、ここへ来たのは救助の為じゃて』

『ま、それもそうだな』


 彼らは私達に会話をモニタリングされていることに気付いていない筈だ。

 なら……バンの言葉を額面通り信じても良いのだろうか。


『ところで管理官さんよ。軍警共が引いた理由に心当たりはあるか?』

『はい、それなら……うちの後方支援要員が軍警の船の制御を奪取して、緊急事態発生と帰還要請を発信しましたので。……すみません、あなた方にも同様の措置を……』

『ああ、さっきのはそれでか。まぁウチにゃ助けを求めるような軟弱者はいねぇから無視したがな』


 バンはそう言って笑い飛ばし、軍警のシステムをハックしたことを称賛してきた。

 私はガンガン運送の船に対する制御奪取――それは現在進行形だ――について改めて詫びたが、バンは手を振って軽く答えた。


『なに、戦況は不利だったからな。アレがなけりゃオレ達は負けていたかもしれん。なら、多少のことは不問にするさ。ただ、財宝の分け前は多めに貰うぜ?』

『私達は人命救助が目的ですので』

『……アイリスさん』


 交渉のようなことを持ちかけてきたバンに応えていると、ヒナと2人で先の様子を確認しに行っていたアリサから通信が入った。

 私達の秘匿通信ではなくオープンチャンネルでの通信だということは、バン達に聞かせても良い話なんだろう。


『どうしたの?』

『冷凍睡眠ポッドがいくつか破壊されています。痕跡をみるにブラスターによるものだと思います。室内には軍警の死体もありました』

『すまねぇ、オレ達よりも連中の方が一足早かったんだ。いくつかは壊されちまったが……』

『ポッドは小部屋に分割設置されているようです。見たところ侵入されているのは手前の2部屋だけで、それ以降は扉がロックされたままになっています。探索して旅客の状況を確認することを提案します』


 アリサの言葉がやや持って回った言い回しに聞こえるのは、おそらくバン達に対する警戒故のことだろう。

 今のところバン達の言動に不審な点は無いとはいえ、私達のミッションが「スリーピング・ビューティ」……つまり特定人物の救出だと知られると余計な軋轢が生じる可能性が無いとはいえないからね。


『わかったよ。でも確認中に軍警が戻ってくると面倒だね?』

『ああ、それなら……私とヒナで殲滅しますので。アイリスさんとトワ様にはこちらを担当頂ければ』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。