#3
「アイリス、アリサが帰ってきたらすぐ行こう。お宝ゲット」
「それなんだけど……どうもこの件、裏があるみたいなんだよ」
「裏、ですか?アイリス様、それはどういう……?」
アイリスの言葉にヒナが怪訝そうな顔で問うた。
うん、お宝探しに裏ってとういうことだろうか。裏ボス的な裏のお宝でもあるのかな?
「送られてきたミッションデータの一部がロックされてるんだよ。たぶん、現地に近づかないと見られないようになってるんじゃないかな」
「えっと、ロック解除しましょうかっ!?」
「無理矢理解除したら、何かあっても拒否できなくなりそうな気がするからやめておいた方がいいかな。でもありがとうね、マリエッタ」
「はいっ」
裏ボスのことは気になるけど、どうやら現地へ行くまでお預けになるみたいだ。
しばらくしてアリサが戻ってきた。
ブライアローズの件は既に聞いていたのかアリサも情報収集を始めていたらしいけど、やっぱりアイリスと同じように難しい顔をしてる。
裏って一体どんな話なんだろう。
「この件、かなり注目を集めている事案ですから、多くの惑星で複数のブックメーカーが動いてますね。当然私達はブックメーカーの出走リストにエントリーされていませんから、横合いから一等をかっさらうとかなり大きなトラブルになると思います」
「ブックメーカー?」
「賭けの胴元達です。今回の『救援レース』が多くの星で賭け事の対象になっているんです」
そう言ってアリサはホロディスプレイを投影して見せてくれた。
12隻の船の所有者と性能諸元のようなものが書かれたサイトが表示されてるね。
でも救援なのにレース?私が首をかしげていると、サイトを見ていたアイリスがため息を付きながら言った。
「一番乗りを目指すのは最寄りの惑星スピンドルの人だけなんだけど、お祭り騒ぎになってるからね。これに乗じて一儲けしようって人も多いってこと。で、問題はギルドがこれにどう噛んでるのか、だよね」
「私達が飛び入り参加して一等をさらうと、賭けが成立せずブックメーカーの総取りになるでしょうね。ギルドが胴元になっているとは思いませんけど、関わるだけでろくなことにならない気がします」
「私もアリサに完全同意だね。ギルドの経済力を考えれば宝探しも賭け事も、正直リスクを負ってまで動くレベルじゃない些末なことだと思う。でもあえてミッションとして出してくるには……きっとまだ何かあるんだよ」
ロックされた情報に記されたその「何か」を知るためには、出発しないといけない。
なら、出発すればいいと私は思った。
けど、私がそう言うと、ヒナが悲しそうな表情になった。
あれ、私なにか間違ったことを言ったかな……?
「えっと、ワタシ……お留守ですよね?もしくは置き去りですよね?」
そう言えばアルカンシェルにはマリエッタのリュミエールかヒナのオンブルか、どっちかしかドッキング出来ないんだよね。
オンブルをクレリスに置いて行ければいいんだけど、さすがにギルド秘の機体を置き去りにしたままにするわけにはいかないかな?
そう思ったんだけど、なぜかマリエッタが胸を張っている。
「ヒナっ!こんなこともあろうかとっ!」
「あろうかと?」
「ブリギッタに、オンブルを運べるようなアタッチメントつけたよっ!」
「……え?」
そう言えばマリエッタはこの前立ち寄ったヘリオスでブリギッタにパーツを増設するって言ってたっけ。
でも、ブリギッタの見た目はあんまり変わったところはなかったけど……?
「そう言えばマグネットアンカーを装備してましたよね?」
「はいっ!アンカーで近くまで牽引して、アームで固定するんですっ!」
「ほほう」
なんでも以前マリエッタとヒナが行動を共にしていた時、秘匿通信を行うためにブリギッタを使って両方の船を物理的に接触させたことがあったらしい。
そこから着想を得て、ブリギッタの腕とマグネットアンカーの両方を使って固定することで、超光速航行にも耐えられるだけの強度で固定することが出来るようにしたんだそうだ。
「それ、見た目的にコバンザメっぽい感じのやつだよね?しかも乗降ハッチはアルカンシェルと繋がってないから、コスモスーツ着てエアロック経由で乗降しないとダメじゃない……」
「でも、ワタシだけ置き去りにされるよりはましです!」
まだ工夫の余地はあるみたいだけど、とりあえずヒナも一緒に宝探しにいけるようだ。
うん、せっかくヒナとも仲良くなれたし、ここで置き去りにするより一緒に行く方がきっと楽しいよね。
そんなこんなで私達は宝船を探すため旅立った。
もっとも場所が判ってるならアルカンシェルだとジャンプ1回でたどり着くし、ロマンとかはあんまりないけど。
――と、思ってたんだけど。
実際の宝船探しは、私が想像していたものとは随分と違う展開になったんだ。
「ジャンプアウト確認っ!ドッキングしているオンブル、問題ありませんっ!」
「よかった、もし壊したらワタシ監察官クビになってるとこだよ……」
「あー!ヒナっ!わたしの考案した方法疑ってたのっ!?」
「……えっと、ちょっとだけ?」
「ひどいですっ!」
ヒナとマリエッタがそんなことを言い合っているのを聞きながら、私は船窓の外をじっと見つめていた。
でも、近くにブライアローズらしき船影は見えない。近距離センサーを確認していたアリサも怪訝そうな顔をしてるね。
私とアリサの様子に気づいたのか、アイリスがサクヤに声をかけた。
「サクヤ、ジャンプ座標間違ってない?」
『はぁ?アタシが失敗する訳じゃないじゃん!』
「……だよね。確かに空間座標はスピンドル政府が公開した座標通りなんだけど……」
アイリスの言葉にサクヤが噛みついてる。
でもジャンプの失敗じゃないなら、なんでこの近くにブライアローズはいないんだろう?
私がそう思っていたときだった。
「……センサーに感あり。艦影14。うち11は近隣宙域、残り3は少し離れた所にありますね。マリエッタ、艦種の解析お願いできますか?」
「はいっ……えっと、まず近くの11隻はわたしたちの方に向かって亜光速で移動中ですっ!離れている方のは0.5光日ほど先、多分慣性で移動しているのは大型艦。そこに向かって亜光速で中型艦と小型艦が接近中っ!大型と中型の距離はは0.4光日、中型と小型の距離は1光時ぐらいですっ!」
マリエッタの報告を頭の中でイメージする。
近くにいる11隻は判るとして、離れたところにいる3隻はなんだろう?
「……どういう状況なの、それ?」
「私達のジャンプアウト座標が間違っていない以上、11隻は『救援レース』の参加艦艇とみて間違いないと思いますが……問題は遠方にいる3隻ですね」
「大型はたぶんブライアローズだと思いますっ!小型は輸送船みたいですけど……あっ、中型の艦種判明っ!これ、スピンドル軍警の駆逐艦ですっ!」
駆逐艦、というマリエッタの言葉に、私たちは顔を見合わせた。




