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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部5章『終の海』ヘカテー-星海の惑星
531/548

#3

 その後、現場からのライブ映像として警官隊と銃撃戦を繰り広げているコンバットスーツの映像が映し出される。

 コンバットスーツの撃つ銃は警官のビークルを一撃で粉砕し、警官隊のブラスターはコンバットスーツに全く効果が無い。

 やがて「フォトナイザー」は通りがかったビークルを奪うとその場から逃走した。


「なんなんだぜ、あれは!」

「……フォトナイザー、でしょ?」


 大声を上げるケンに、ヒナは冷たく答えた。

 だが、ヒナの視線はケンではなく、リピート配信される「フォトナイザー」の姿に注がれていた。


 気付くとカフェの店外には緊急車両のサイレン音が鳴り響いていた。

 サイレンの音は明らかにカフェへと接近してきている。

 それもそうだろう。有名人であるケンが店内にいたことは多くの客が気付いていたのだから。


 多くの客は映像が生中継であることに気付き、映っていたフォトナイザーがケンでないことを理解していた。

 だが残念ながら全ての客がそのように聡明だった訳ではない。短絡的にケンが犯人、そしてケンはここにいると考えて警察へ通報した者もいたのだ。


「警察、集まってきてるけど?」

「俺は何もしてないんだぜ!フォトナイザーの正義は熱く燃えているんだぜ!」


 ケンはそう言うが、ヒナの目は冷ややかなままだ。

 やがて2台の警察車両がカフェの入口を塞ぐように停車した。

 その様子を見たケンは、些かもやましいことがないからと言って自ら店外へと赴き、状況を確認するためにヒナもその後を追う。


 だが店外に展開しブラスターの銃口を向ける警官隊に対してケンが投降しようとしたとき、警官隊の後ろから一台の貨物用ビークルが突入した。

 慌てて退避する警官達をよそに、警察車両に体当たりした上で強引にカフェへ横付けされたビークルからケンを呼ぶ声が聞こえた。


「ケンさん、こっちです!」


 ヒナはボイスチェンジャーを介した声の主がギルド支部長ハッテであることに気が付いた。

 ハッテはケンの後ろに立つヒナを視界には捉えていたが、先ほど対面した秘書姿のヒナとはあまりにも印象が違うためそれが「カイラニ秘書官」だとは気付かなかったようで、ヒナには一瞥をくれただけでやや強引にケンを車内に招き入れると猛スピードでビークルを発進させた。

 混乱する警官隊を横目に、ヒナは小さく呟いた。


「へぇ……そんなこと、するんだ」


 損傷した警察車両とは違い、ヒナが乗ってきていたフォトンバイクは無事だった。なので彼女はバイクに跨がりビークルの後を追う。

 きな臭い匂いがするのは、衝突した警察車両が上げている黒煙のせいか、それともハッテの行動のせいか……。


 ビークルが逃走した方向からその行き先がギルド支部だと推測したヒナは、小回りの利くバイクの特性を生かし、ナビが示す裏道を通ってギルド支部へと急いだ。

 果たしてギルド支部には先ほどのビークルが停車しており、目深にフードを被ったハッテらしき人影が降車するのが遠目に見えた。

 だが、ケンは降りて来ない。


 やがてビークルはそのまま郊外へ向かって再び発車した。


 不審な空気を感じつつもビークルを追跡するヒナ。

 しばらくして人気の無い郊外でビークルが停車し、まるで蹴り出されたかのような勢いでケンが車外へと転がり出た。

 その後から3人の男が降車してくる。状況を見て取ったヒナは、バイクを少し離れた物陰に止め、徒歩で現場へと接近する。

 すると……。


「フォトナイザーさんよ、あんたの出番はここで終いだ。アンタは生活苦から強盗に手を染めたが、正義の心を取り戻して反省し、自害するって筋書きさ」

「何を言ってるんだぜ!」

「判りやすく説明してやろうか?お前はここで死ぬんだよ!」


 3人の男達はそう言うと、右手を高く上げた(・・・・・・・・)

 そして一斉に叫ぶ。


「「「凝晶!」」」


[Change Photonizer]


 眩い光と共に響く無機質な合成音声。

 そして現れたのは……3人のフォトナイザーだった。


「なっ……!?フォトナイザーが3人もいるんだぜ!」


 物陰から様子をうかがっていたヒナは目をひそめる。

 これは……アリサが危惧していた通りの状況だ。


 ――支部長ハッテはフォトナイザーシステムを解析していました。

 おそらく兵器として量産するつもりなのでしょう――


 アリサの言葉は的中していた。

 ハッテは既にフォトナイザーシステムを手に入れ、そしてオリジナルであるケンに罪を着せた上で抹殺しようとしている。

 だが……。


「俺は……いや、俺が!フォトナイザーなんだぜ!……凝晶!」


 眩い虹色の光。そしていつもの解説音声と共にコンバットスーツを纏ったケンが……フォトナイザーが姿を現す。


『宇宙シェリフ、フォトナイザー!』

『ちっ……かまわん、3対1だ……やれ!』


 リーダーらしき量産型フォトナイザーの言葉に、4人のフォトナイザーは戦闘態勢へと入る。

 ケンのフォトナイザーはフォトニックブレードを持つが、3人の量産型は銃が得物で、一見するとケンが圧倒的に不利だ。

 実際、ケンのコンバットスーツはエネルギー弾の雨を浴び、フォトン-プラズモン結合で実体化した装甲が徐々に損傷してゆく。


『量産型とはいえ、俺たちのコンバットスーツの性能はお前のものと互角なのさ!』


 勝ち誇ったようにそう叫ぶ量産型フォトナイザー。ヒナはケンがピンチだと見て取り、介入しようとレゾナンスブレードを取り出す。

 だが、彼女が起動歌を唱えようとしたその時、ケンが言い放った。


『互角……?なら、俺の勝ちなんだぜ!「トワ可愛い!」』

『『『……は?』』』

「……は?」


 ケンの唐突な言葉に、3人の量産型フォトナイザーとヒナの言葉が綺麗にハモる。

 だが、その直後。フォトナイザーはまるで再凝晶したかのように虹色の輝きに包まれ……フォトナイザー・エトワールモードへと変化した!


『ダブル・フォトニックブレード!』


 3倍の出力に強化されたフォトナイザー・エトワールモードが振るう二振りの光刃は、量産型フォトナイザーをこともなげに両断した。

 続けて返す刀でもう一体を両断するフォトナイザー。


『ば、馬鹿な!?こんな話、聞いてねぇぞ!?』


 最後に残ったリーダーらしき男は後ずさりすると、コンバットスーツ姿のままその場を逃げ出した。……ヒナの方へ向かって。


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