#22
終の海を巡る鎮魂の物語はこれにて終了になります
次回からは少し長めの幕間をお届けします
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純白の航宙船が虹を伴って星空へと跳び去った翌日の夜。
ボースンはマリナに声を掛け、伝言を頼んだ。
もしも――いつの日か、トワ達が戻ってくることがあれば。
最後に再会できた幸運と、終の海を守ってくれたことへの感謝を伝えて欲しい、と。
どうして直接伝えなかったのかと不思議そうな声で聞くマリナに、ボースンは言う。
「そんなこっぱずかしいこと、面と向かって言えるかよ」
ボースンの言葉はマリナの理解の範疇外だったが、これまでに言葉を交わした数多の船乗り達も同じような事を言っていたことを思い出し、これは船乗りの習性なのだろうとマリナは結論づけた。
そしてボースンの託した伝言をマリナはメモリの奥底へと記録した。
ボースンはそんなマリナに軽く手を上げ、パブを出て行く。
その足取りは重く……彼が苦痛をこらえていることは傍目にも明らかだった。
ボースンは夜の港から灯台を見上げた。
トワが調律を施した灯台の新たなC3は、これまでの数倍は明るい光でヘカテーの海を照らしている。
これなら迷わずに逝けそうだ。ボースンはそう思った。
桟橋へ向かってゆっくりと歩いていたボースンはどこからともなく声が聞こえることに気が付いた。
この歌声は……そう。かつて彼がキャメル067に乗船していたときに聞いた、奇跡を呼ぶ女神の歌声だ。歌は終の海と船乗りの魂の平穏を祈る鎮魂歌。
どうやら灯台から聞こえてきているようだった。
トワは灯台の修理を行う際に、それまで灯台に設置されていたC3を修復し、自らの歌声を再生するような細工を行っていた。
その歌は夜に誰かが港へ向かう時だけに流れるもので……まさに旅立つ者を送るための歌だった。
ボースンはしばらくトワの歌に耳を澄ませたあと、微笑むと独りごちた。
「悪くねぇ人生だった。あっちでアドバーグのやつに自慢してやらねぇとな」
レクイエムが流れる中、杖を突いた人影は極彩色のボートへと向かう。
終の海には満天の星空が映し出されていた。
そこはまさに航宙船乗り達の魂が還るべきところ、星の海だった――。




