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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部5章『終の海』ヘカテー-星海の惑星
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#18

 でも入植可能な惑星を発見したら、普通は故郷の星へ伝えそうなものだけど……。私がそう問うと、マリナ一瞬だけカメラアイを瞬かせてから言った。


「あなた方には開示しても問題ありませんね。私の故郷はオリオン腕の惑星、ヨモツヒラサカです」

「……!」


 ヨモツヒラサカ!

 それはまさに私達が先頃訪れた、機族が産み出されていた……そして既に滅んだ惑星の名前だ。

 まさかその名をここで耳にすることになるとは……!


「マリナ、ナミの知り合い?」

「ナミ、ですか?」

「ナミの本名はたしかイザナミだったけど。リューヌなんだけど、知ってる?」

「はい。私の母ではありませんが。お二人はイザナミ様の事をご存じなのですか?」

「つい最近まで一緒に行動してたよ。今は……多分トーエイって言う星のあたりにいるんじゃないかな」

「イザナミ様がペルセウス腕へ……?」


 ヨモツヒラサカの名前が出た時点でもしやと思ったけど、マリナがナミのことも知っているとは。

 そう言えばサクヤがマリナのボディを見て自分達に近い古株だと言っていたっけ。


 サクヤ達はナミが作った最初期の第2世代機族だから、おそらくマリナもそれに近い原型機(アーキタイプ)の一人なんだろう。


 そして今の話で判ったことが2つある。


 1つはマリナには新惑星発見を告げる相手がいなかったということ。さすがにスターゲートを超えて惑星発見を伝えるのは不可能だろうからね。


 そしてもう一つは……ボディを持ったままこちらへ渡ってきた機族がいるということだ。


 私はナミに虹色のC3……つまり機族のコアについての話を聞いて以来、疑問に思っていたことがあったんだ。

 それは私達の宇宙(ペルセウス腕)にいる機族達がオリオン腕の記憶を持っていないということで、その理由は現存している機族達がペルセウス腕で造られたことによるものだと私は結論づけていた。

 実際にペルセウス腕には機族のボディを製造できる施設……アヴァローンがあるからね。


 おそらくオリオン腕からペルセウス湾へ逃げ延びてきた人類は一人でも多くの人を運ぶために「ボディを持つ機族」を連れてこなかったんじゃないかと私は想像していた。

 ボディを持たないC3の状態(魂だけ)なら、沢山の機族を運んできても船のキャパシティを圧迫しないから。


 だけど全ての機族がペルセウス腕側でボディを与えられたのではなく、少数の機族はボディを持ってこちらへ渡ってきている可能性があるとも考えていた。

 だって機族は人権を持つヒトだから、機族が同行を申し出た場合に相手が機族だという理由で拒否することはできないからね。


 そしておそらくマリナはその同行を申し出た中の一人、ということなんだろう。

 なるほど、マリナが古代の宗教儀式である精進料理の風習をごく自然に行っていた理由がわかった。彼女はあの風習が当たり前だった時代、そして場所の生き証人なんだ。


 だか気になるのはマリナがボディをもってこちらはこられた理由……そう、例外であった理由だ。

 そのことを問うた私にマリナは答えた。


「私は生物学者ですから。先行して入植可能な惑星の探索と調査を行っていました。いくつかの惑星を発見したことで契約満了となり、後は自由意志で研究を行っていました」

「なるほど、専門家枠か……確かに複数の星で調査をするなら人間よりも機族の方が圧倒的にアドバンテージがあるね。じゃあその調査データはどこへ送ってたの?」

「惑星クレリスです。1879年前に開拓が行われ、同時に惑星規模のデータベースが設置されました。私が調査したデータも、そのデータベースへ情報を集約していました」

「クレリスのデータベースって事は……カルティアのところ?」

「はい。あの子は私の妹のような存在です」


 そうか、カルティアもペルセウス腕へ来てから新造された機族の一人だから、マリナがら見れば機族の姫であっても妹分ということになるのか……。

 いや、でも待て。オリオン腕に絡む話で脱線したけど、今の話はとても重要な意味を持ってると私は思った。


 マリナが発見した惑星のデータはカルティアに報告されている。

 つまり、それはオリジネーターの制度が構築される以前から、マリナがオリジネーターとしての権利を保有していたことの証明になるんじゃないだろうか?


「アイリス。どういうこと?」

「んー、簡単に言うと……この海を守れそう、ってことかな」


 私の言葉にトワの瞳が金色に輝く。

 あともう一押し、カルティアに確認が取れれば……ギルドの開発を止める事ができるはずだ。



 その後、カルティアにデータ照会を依頼した私は、彼女が回答してきたいくつかの結果……それも想定外の結果に頭を抱えることになった。


 まず1つ目の結果。

 カルティアのデータベースには確かに惑星ヘカテーの発見者として「機族の生物学者マリナ」の名が記されていた。


 調査データが登録されていたタイミングは1501年前。ヘカテーからクレリスへ向かって連絡用の亜光速ブイを飛ばすのに掛かった時間を考えれば妥当なタイミングだろう。

 この事によって、マリナがヘカテーのオリジネーターである事は立証できた。


 問題は2つ目の結果だ。

 当時マリナがヘカテーから発信した惑星発見の報告は1つではなかった。


 そう、マリナはヘカテーと同時にヘリオスも発見していたんだ。

 それはそうだろう。だって2つの惑星はトロヤ惑星で、宇宙的視点で見れば目と鼻の先だ。

 マリナがヘリオスを見落とし、ヘカテーだけを発見する方がどうかしている。


 そしてその事が意味するのは……マリナはヘリオスのオリジネーターでもあると言うことだ。

 これが遙か彼方の惑星であれば統治権を放棄したと認定される可能性がもあるけど、同一恒星系内、それもほんの20光分の場所にある惑星に留まり続けているわけだから、権利放棄とは見なされないだろう。


 この事が意味するのは……現在のヘリオス政府は、マリナの許可を得ずに非合法に統治を行っている侵略者、海賊政府という位置づけになりかねないということだ。

 これはかなりやっかいな火種を見つけてしまった。


 おそらく今回の問題でマリナがヘカテーのオリジネーターであると主張すると、連鎖的にヘリオスの件も明らかになる。

 事前に何か手を打っておかないと、ヘリオスが大混乱に陥りかねないよ、これ……。



 そして最後の問題は……ヴェルデナ、トーエイ、そしてヘカテー。この所私はカルティアに頼りっぱなしだったこと。

 そのせいでカルティアにそろそろ借りを返して欲しいと暗に要求された事だ。


 まぁ、ヘカテーからクレリスは一度のジャンプで到達できるからね。この件が落ち着いたら顔を出すことにしよう。

 いや、無事に顔を出せるように、なんとかここの問題を穏便に解決しないと……だね。

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