表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部4章『凝晶!宇宙シェリフ・フォトナイザー!』トーエイ-光鎧の惑星
498/530

#16

>>Iris


 ショーに乱入した怪人……オロ・カナーとか自称していたゲルゲム団の自称幹部の逃走経路はマリエッタから送られてくる監視カメラの映像で概ね追えていた。

 それにケンが手傷を負わせていたこともあって、独特な緑色の血液も点在していたから捕捉は難しくない筈だったんだけど……。


 カメラの死角になっている通りの奥、さらにその路地裏で事態は急変した。


 そこには頭部を食いちぎられた男性らしき死体が転がっていたんだ。


 凄惨な光景も衝撃的だったけど、問題はマリエッタが周辺の監視カメラをスキャンした結果、元々擬態していた男の顔が路地の周辺から一切検出できなかったと言うことだ。

 路地裏から通りへ抜ける道には緑も赤も、血痕は無かった。つまり、ここでオロ・カナーが再度擬態を行ったことは確実なんだけど。


 変身可能時間の10分が近づいたらしく、既に周辺に敵がいないことを確認したケンはフォトナイザーへの変身を解除している。

 私は事態が急速に悪化していることを感じながら、ケンに声を掛けた。


「ケン、幹部って人間の姿に戻れるんだよね?」

「そうなんだぜ!」

「その仕組みって、わかる?」

「仕組み?詳しい事は良く知らないけど、保有しているヒト遺伝子に従って擬態するって聞いたぜ!」


 ヒト遺伝子に従って擬態。

 その言葉が意味することは、おそらく私が想像している面倒な事態の裏付けになる。


 そう思いながら私は言葉を続けた。


「そのヒト遺伝子が、他人のものだったどうなるの?」

「他人の?良くわからないけど、仕組み的には他人になるかもだぜ!」


 シンプルな答えだ。

 そして、それは私の疑念を裏付ける答えでもあった。


 オロ・カナーはここで再偽装を行った。

 しかし元の人間態がこの路地を出て行った形跡は無い。

 幹部は保有(・・)しているヒトの遺伝子に基づいて再偽装を行う。

 そしてここには頭部の無い誰かの死体がある。


 つまり、オロ・カナーは、この誰か判らない人物に擬態してこの路地裏を出た。擬態先がどんな人物なのか判らないように、ご丁寧に頭部を隠蔽して。

 要するにオロ・カナー……いや、ゲルゲム団の幹部は他人になりすますことが出来る。それも、遺伝子レベルで。


 頭部を喰らったのは証拠隠滅と……もしかすると記憶をも吸収している?

 荒唐無稽な話だけど、そもそも論で言えば悪の秘密組織が怪人を作って暴れている時点で既に現実とフィクションの垣根は壊れている。

 なら、最悪の事態を想定しておいた方が良いだろう。



 私とケンは現場の状況をトーエイの治安機構に通報した上で、野外講堂へ引き返すことにした。

 治安機構内部でもショーの配信映像を見ていた人――仕事中でしょうに――がいたらしく、余計な説明をする必要が無かったのは幸いだった。

 けど、生配信でゲルゲム団残党が暴れるシーンが流れた事でオーイズミ、ひいてはトーエイ全土に動揺が広がっているらしい。


 事態の急展開に頭を痛めながら、私とケンはトワ達と合流し、アリサの到着を待った。


「遅くなりました。それで何が……と聞くまでもないですね。見るからに戦闘の痕跡がありますし」

「話が早くて助かるよ、アリサ。でも、もっと面倒なことがあるんだ」


 そう前置きして私はアリサ達に先ほど路地裏で見たこと、そしてそこから推測できる他人への偽装の可能性について説明した。


 私の話を聞いていたアリサの顔が目に見えて険しくなっていく。

 一通り説明を追えた、さっきから気になっていたことをケンに確認した。


「ケン、さっきのオロ・カナーっていう幹部と戦うのは何回目?先代が討ち漏らしたリストには入ってなかった気がするんだけど」

「初めて見る幹部なんだぜ!でもおかしいんだぜ……」

「どういうこと?」

「獣魔は獣魔将でも産み出すことができる。けど獣魔将を産み出すことが出来るのは首領ジャーアックだけなんだぜ……」


 その言葉はつまり、オロ・カナーが本当に獣魔将なら、13年前に討伐されたはずの首領ジャーアックか……もしくは彼女と同格の能力を持つ新しい首領が誕生しているということになる。

 私がそう指摘すると、これまで黙って話を聞いていたアリサが口を開いた。


「おそらく……ジャーアックは生きています。先ほどの他人の遺伝子を使った偽装の話を伺って、確信しました。そしてケン、あなたに残念な知らせがあります」

「残念な知らせ……?」

「はい。あなたの師であるジョウジ・モリヤマは既に死亡しています。おそらく、6年前に」

「……モリヤマ先生が……?どういうことなんだぜ!?」


 ケンの疑問に答えるように、アリサは静にかに「モリヤマ大臣」との会談について語った。


 事前の人物評では、モリヤマと言う人物はかなり頑固な保守的性別役割(ジェンダーロール)論者であったにも関わらず、モリヤマ大臣の言動からはそのような思想は一切見て取れず、取って付けたように「モリヤマ」の座右の銘を口にするだけ。

 そして、不可思議なことに男性であるはずのモリヤマからアリサは女性を感じ取ったという。


 それが意味することは……。


「産み出された新たな獣魔将。そしてモリヤマに擬態した女性(・・)幹部。すなわちそれは……モリヤマに擬態しているのが、ジャーアック本人ということです」

「……反論できるだけの材料が無いね。あんまり考えたくないけど……。それで、6年前っていうのは?」

「ジャーアックがモリヤマに擬態したのはおそらく6年前に内務大臣就任時です。その前後で彼の言動が大きく変わっていますから、擬態のタイミングはそこで間違いないでしょう」

「じゃあ、モリヤマ先生は……」

「ジャーアックが擬態元を生かしておく理由がありません。モリヤマはジャーアックの仇敵であるフォトナイザーのサイドキックだったのですから、むしろ積極的に殺害する理由があると考える方が合理的でしょうね」

「そんな……じゃあ、オレは……オレは……!」


 アリサの冷徹な指摘にケンが崩れ落ち、トワとマリエッタがそんな彼に寄り添っている。

 恩師を殺されたショックは理解できるし、私もケンを労りたいけど……今は事態の把握を優先させるべきだろう。


「でもアリサ、ジャーアックは13年前に討伐確認されてるよね?」

「はい。その点が不可解なのですが……トワ様、少しよろしいですか?」

「うん。何?」

「トワ様がご覧になった再現アニメでジャーアックはどのように倒されていましたか?」

「アリサ、ネタバレ大丈夫?」

「ええ、大丈夫です。それで?」

「ジャーアックは大首領の姿でフォトナイザーに負けて逃げる。逃げ込んだ本部で人間態に戻った所を倒される」

「ありがとうございます。アイリスさん、どう思いますか?」

「普通に考えれば怪人態で敗北し、力を失って人間に戻った所を討たれた……って考えるところだよね?」

「ええ。ですが獣魔本来の姿は怪人態です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ