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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部4章『凝晶!宇宙シェリフ・フォトナイザー!』トーエイ-光鎧の惑星
497/535

#15

>>Towa


 その日のパトロールは特に変わった出来事もなく終わり、ケンは凝晶する事もなかった。

 せっかく新しいフォトナイザーが見れると思ったのに。


 私が残念に思っていると、アイリスがこの後もフォトナイザーショーが行われると教えてくれた。

 場所は前回と同じ野外講堂。今回はギルド支部に手配して貰って、敵役も着ぐるみでちゃんとしたアクターさんが演じてくれるらしい。

 ちなみにフォトナイザー役はもちろんケンが務める。


 で、今はそのショーの最中だったんだけど、大変な事がおきた。

 ステージ上で凝晶したケンに満席になった観客席が盛り上がったあと、ケンが台本を無視して観客席へと飛び込んだんだ。


 ファンサービスかと思って盛り上がる観客だけど……なんとケンが飛び込んだ先のお客さん、若い男の人にいきなりパンチを入れたんだ。

 舞台袖で観ていた私は、いくら手加減システムを搭載したからっていっても観客を殴るとか、ケンはおかしくなったのかと思ったんだけど……。


「クソっ、バレたか……!おのれフォトナイザー」

『貴様、何者なんだぜ!』

「オレ様はゲルゲム団の幹部、オロ・カナー様だ!」


 そう言うと殴られた男性は、獣魔の姿に……ううん、あれは違う、マントが付いてるから獣魔将だ!


 獣化したオロ・カナーは剣状になった腕を振りかぶるといきなりフォトナイザーに斬りかかった。


「フォトナイザー、キサマノクビ、モライウケル!」

『ぐっ……みんな、コイツは本物の獣魔だぜ!逃げるんだぜ!』


 それまでショーの演出だと思っていた回りのお客さんだけど、突然の獣化とその後のオロ・カナーが放つ殺気にこれがショーではなく本当にゲルゲム団の襲撃だと気付いたようだ。


 うん、他の星ならともかくこの星は実際に獣魔の脅威にさらされた事があるし、大人世代の人達は実際に獣魔を見たことがある人も多いだろうからね。


 でも相手が本物だと判ったことで今度は観客席がパニックになりかけてる!

 なんとかしないと。

 でもどうしたらいいのかと私が一瞬躊躇っている間に、大音響でアイリスの声が響いた。


『皆さん、こちらモーリオンギルドです!非常事態発生!怪人はフォトナイザーが対処しますが、念のため落ち着いて待避してください!後方の出口、前方のステージ裏からも退出できます!』


 その言葉に前方と後方の客席に座っていた観客……まだ演出だと思っていた人達もこれがイベントじゃないと理解したようで、急いで講堂から退出しはじめた。

 私はマリエッタに前方の避難誘導を任せて、後方の出口へ向かう。


 客席を飛び越え、出口側へ向かう間にもフォトナイザーとオロ・カナーの戦いは続いている。

 幹部というだけあって相手は手強そうだけど……。


『フォトニック・ブレード!チュウッ!』

「グワッ!」


 あっ、フォトナイザーが生成した光の刃がオロ・カナーの肩口を捉えた!


 傷は浅いけど、先に一太刀でも入れれば動きが鈍くなるから、勝機をたぐり寄せることが出来るってアリサも言ってたし、これはケンの勝ちだ!

 私がそう安心した瞬間だった。


「コノショウブ、アズケタゾ!」

『待てっ!逃げるとは卑怯なんだぜ!』


 ……オロ・カナーは講堂の壁を飛び越えて逃げていった。

 そうだ、幹部ってこういうとき初回じゃ絶対逃げるんだよ。

 お約束の展開だけど、なんで最後まで戦わないんだろう。


「ケン、追って!」

『判ったぜ!』

「マリエッタ、今日のショーは生配信されてたよね?配信ログからさっきケンが殴った相手の顔解析できる?」

「はいっ、もう特定しましたっ!」

「偉いっ!じゃあ周辺の監視カメラでその男を追える?」

「かしこまりてすっ!」


 あ、アイリスったらお約束を無視して初見の幹部を追い詰めようとしてる。

 うん、まあお約束なのは物語の中の話で、これは現実だからね。幹部クラスの怪人を野放しにするのは良くないだろうし。


「アイリス、私は?」

「トワはマリエッタのサポートお願いできる?私はケンのサポートに行くから」

「わかった。気を付けてね」


 私の言葉にアイリスは軽く頷くと、そのままケンが向かった方向へと走り出した。

 オロ・カナーは幹部だけど、たぶん初回退場になるんだろうな……私はそんな事を思ったけど、残念ながら、そうはならなかった。



 20分ぐらいしてケンとアイリスが戻ってきた。

 私は最初、2人がオロ・カナーを倒して来たんだと思ったけど、よく見ると2人とも表情はかなり厳しい。と言うことは逃げられたのかな?

 マリエッタもさっきから監視カメラの映像をいくつもホロディスプレイで展開してるけど、配信に映っていた男の顔はどこにもヒットしていないようだし。


「アイリス、どうだった?」

「逃げられたよ……しかも面倒な事になってる、と思う」

「逃げた時点で面倒」

「そうなんだけどね……。ん……トワ、マリエッタ。ちょっと考えをまとめたいから、アリサが合流してから説明でいい?」

「わかった」

「はいっ」

「あとマリエッタ、さっきの男の追跡だけど、もういいよ。たぶん見つからないだろうから」

「……はい?」


 アイリスはさっきのオロ・カナーが幹部だと名乗ったことで、あの怪人が人間態へ再擬態する能力を持っていると判断したんだと思う。

 アニメでもそうだったし、ケンに聞いた話だと実際に過去の幹部もそうだったらしいから。


 だから獣化前の顔をマリエッタにチェックしてもらって、人間態の行方を追おうとしたんだと思うけど……その追跡がもういいって、どういうことなんだろう。


 ただアイリス自身もまだ事態をどう説明したらいいか悩んでるみたいだし、今無理に話を聞くよりアリサが合流するのを待った方が良いのかな……。


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