#12
>>Towa
ケンに預かったフォトナイザーシステムのコアアイテム。
認証が通らないとフォトナイザーには変身できないとは言われたけど、私もマリエッタもダメ元でチャレンジしてみた。
「凝晶」
「ダメですね……じゃあ次はマリエッタがっ!凝晶ですっ!」
「変身できてない」
「うう、認証システムをハックするしかないですっ!」
マリエッタが認証ハックをすると聞いて私達も変身できるようになるんじゃないかと一瞬思ったけど、そんな改造をしたら間違いなくアイリスにお説教される。
なのでいったん思いとどまった私達は、まずアイリスの指示通りにフォトンレギュレーターを組みこんでおいて、その後で時間があったらシステムを弄ることにした。
作業にはC3の加工が必要になりそうだったから、ギルド支部の工作室を借りることにした。
ここなら音波カッターもあるからフォトナイザーのバックルに合わせた形状へC3を整形することができるからね。
細かい技術的な作業部分はマリエッタに任せるとして、私はレギュレーター用のC3を調律するのが主な仕事だ。
支部にあったフォトナイザーシステムの設計図的なもので内部構造はおおよそわかってるんだけど、ケンが言うにはシステム完成後に1度アップデートが行われているらしい。
なので、その改造部分が図面に反映されていない可能性があるってアイリス達も言ってたけど……。
「わっ、思ったより改造されてますっ!」
「ほほう」
「新しい部品が組みこまれてますっ!これ、予定してたスペースの1/3ぐらいしかスペースが空いてないですっ!」
私達が用意していた組み込み用の回路……フォトンレギュレーターはCランクのC3を使う予定だったんだけど、サイズが1/3になるということはC3のランクを2つ上げないと予定していた効果を発揮しないということになる。
「トワさんっ、これ……規格品のC3じゃ無理ですっ!削って小さくするにしても、小さすぎて……」
「ふむ。マリエッタ、基板は小さく出来る?」
「え?あ、はいっ、こっちはソケットの形状を変えればスペースにはめれると思いますっ!」
「じゃあ、ソケット調整して。このサイズで」
そう言って私がマリエッタに示したのは、イグナイトの点火装置。
そう、このサイズはC3の欠片を使うイグナイトのものとほぼ同じサイズなんだ。
そして都合の良いことに私はいくつかイグナイト用にC3の欠片をストックしてある。
もちろんその中にはCランクより高いものも含まれてるから……これを使えばサイズが小さくなっても問題無くレギュレーターの機能を実装することが出来るだろう。
私達はそれぞれの作業を黙々とこなした。
どれぐらい時間が経ったかわからないぐらい作業に熱中していた私達だけど、工作室のインターフォンの呼び出し音で我に返った。
「誰?」
『支部長のハッテです。お二人とも、お食事がまだでは?』
「……今何時?」
『もう昼食時をかなりすぎておりますよ。食堂に食事を用意しておりますのでよろしければ……』
「マリエッタ、お腹空いた?」
「……ご飯の話を聞いたら、急にお腹空いてきましたっ!」
「私も。じゃあ、食べに行く」
『承知しました。では扉を開けて頂いても?』
「うん」
そう、フォトナイザーシステムを分解して改造するっていうのは結構な機密作業だから、私達は工作室に中から鍵を掛けるようアイリスに言われてたんだ。
ギルド支部の地下にある工作室って、ここへ来るまでにいくつもセキュリティが設定されてるから、誰かが侵入してくることはないと思うんだけどね。
私とマリエッタは食事後に作業を続けやすいようにテーブルの上を簡単に片付けてから、鍵を開けて工作室の外へ出た。
外にはハッテさんとデカい人……アルゴスって言ったっけ?その人がいた。
「では施錠して頂き、念のためにアルゴスを見張りとしてここへ立てておきますので、安心してお食事を」
「わかった。ありがとう」
「ありがとうございますっ!」
ハッテさんもアルゴスっていう人も親切だよね。
まぁ、正義の味方の秘密を守るために協力してくれるのは当然かもしれないけど。
私達はハッテさんに案内されてギルド支部の職員食堂へ向かった。
「何ですか、これっ!」
「……贅沢」
「我々のヒーローであるフォトナイザーに協力頂いているのですから、できる限りのおもてなしをさせて頂こうかと思いまして。デザートも用意しておりますので、食事が終わりましたら係の者へお申し付けください」
「はいっ!」
職員食堂だって言うから、てっきり簡単な定食でも用意してくれているんだろうと思ったけど、テーブルに用意されているのはどうみてもフルコース的な料理だった。
しかも係の人が言うにはまだこの後も料理が運ばれてくるし、なんならデザートもあるらしい。
この前チューリングでご馳走を食べ損ねた分、ここで挽回できるってことだね。
「トワさんっ、これどうやって食べるんですかっ!?」
「口に入れて、噛む。そして飲み込む」
「そうじゃなくてっ!」
良くわからない料理に苦戦しながらも私達は食事を楽しんだ。いや、これが役得っていうやつなのかな。
結局デザートまで到達するのに1時間ぐらい掛かってしまった。
食べてる最中は気にならなかったけど、よく考えたらアルゴスって言う人、ずっと工作室の前で見張ってくれてるんだっけ。
あまり待たせたら悪いと思った私達は、デザートをテイクアウトにしてもらって工作室へ戻ることにした。
「あれ?工作室の扉、開いてますよ?」
「アルゴスもいない?」
地下へ戻ると扉が開いていて、アルゴスの姿もなかった。
けど、私達がそんな事を話していると……工作室の中からアルゴスが出てきた。あれ?鍵掛けてなかったっけ。
「失礼、中で物音がしたため支部のスペアキーを使って確認を」
「ほほう?」
「特に異常はありませんでした。作業を再開されますか?」
「うん」
「では私はこれで失礼」
そう言うとアルゴスは地上階の方へと去って行った。
部屋に入った私達は念のため、何かが無くなってたりしないか確認した。
用意のいいマリエッタは部屋を出る前に状態を写真に撮っていたらしく、現状を再撮影して相違点をチェックしている。
うん、こういう手際は私だけじゃ無理というか、思いつかないよね。
「トワさんっ、フォトナイザーシステムのコアアイテムがほんの少しだけ動いています!」
「ネズミが触れた?」
「ですっ!かなりいデカいネズミだと思いますけどっ!」
デカいネズミか……。
アイリスの言うことを疑っていた訳じゃないけど、お姉ちゃんが言ったとおりだったのかな。
私はそう思いながら、工作室に再度内側から鍵を掛けた上でポケットから作業中だったC3を取り出した。
マリエッタも、肩から掛けていたポシェットの中からフォトンレギュレーターの回路基板を取り出している。
お腹はいっぱいになったけど、心にちょっと寂しさを感じながら私達は作業を再開した。
その後、夕食の準備が出来たとハッテが言いに来たけどそれは断って、私達は全ての作業をそのまま終えた。
結構夜遅くなってお腹は空いたけど、ポケットに入れていたいつものかちこちで空腹は凌いだ。
うん、マリエッタは美味しくないと嘆いてたけど、そんな事じゃ立派な航宙船乗りになれないと諭しておくのも忘れなかったよ。
で、作業が終わった私達は工作室を出て、受付の人に一声だけ挨拶して宿へ帰った。
ハッテやアルゴスに見つかると呼び止められそうだったからね。
でも宿に帰った私達をショッキングな事態が待ち受けていたんだ。
「嘘っ!アイリスさんっ、酷いですっ!」
「アイリスは酷いし、ずるい」
「いや、酷くないし、ずるくないよね?って言うかなんで怪人の襲撃に遭遇したことで私が非難されてるの!?」
「だってアイリスさんっ、ワニダブラーですよっ!」
「ワニダブラーは3話と8話、11話に登場する。もはやセミレギュラー獣魔」
「まるで推しのアイドルみたいに言うのやめてね?相手は怪人だからね?」
そう、なんでもアイリス達はケンと一緒にパトロールをしている時に生ワニダブラーを見たって言うんだ。
しかもアリサはワニダブラーを倒したって……あれ?もしかして。
「アリサ、凝晶した?」
「してません!というかトワ様も昨日見てましたよね?私、フォトナイザーよりも強いのですけど!」
「解せぬ」
「解してください……」
どうやらアイリスが懸念していたように、トーエイにはまだ獣魔が残っているらしい。
なら、私達が改造したフォトナイザーシステムはきっと役に立つ。
新しくなったフォトナイザー、ケンが気に入ってくれると良いんだけど。




