↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部4章『凝晶!宇宙シェリフ・フォトナイザー!』トーエイ-光鎧の惑星
491/566

#9

>>Alyssa


「凝晶!」


 ステージに眩い輝きが溢れ、次の瞬間にはメタリックな輝きを持ったコンバットスーツを身に纏ったフォトナイザーが姿を現していました。

 観客席の子供達は大喜び……あ、年配の方も喜んでおられますね。


 おそらくゲルゲム団の侵攻を実際に体験された世代の方なのでしょう。


《宇宙シェリフ・フォトナイザーがコンバットスーツを凝晶するタイムは僅か1ミリ秒に過ぎない。では凝晶プロセスをもう一度見てみよう!》


 そして今回もどこからともなく流れるナレーション。どうやらこれは毎回のお約束のようです。

 ナレーションが終わるのを待ちながら、私は周囲を見回します。


 ここはオーイズミ郊外にある野外講堂、今は急遽実施が決まったヒーローショーの真っ最中です。


 舞台にいるのはポーズを決めたフォトナイザー、ケンと……彼を倒すべく立ちはだかった悪の大首領……つまり私、アリサ・シノノメです。

 もちろんそれっぽいマスクで顔を隠していますけどね。


 私が手に持つ獲物はペレジスを発つ際にテレジアから貰った量産型のレゾナンスブレードです。

 ツクヨミ?エネルギー兵器への特効効果をもつあの腐れ神剣ではフォトナイザーシステムを破壊してしまうので、今回はお休みです。

 私がそんな事を考えている間に変身プロセスの解説が終わったようで、ケンがこちらを指さしながら言いました。


『行くぞ、永遠の女帝(エターナルエンプレス)!』

「誰が女帝ですかっ!」


 ケンがその忌まわしい二つ名を知っているはずがありませんから、これは……きっと台本を書いたアイリスさんの仕込みですね?

 ケンにレゾナンスブレードを突きつけながら、舞台袖に目をやると笑いをかみ殺しているアイリスさんの姿が目に入りました。

 ええ、これはあとでお仕置き確定です。


 ですが、今は……!


「フォトナイザー、華麗に踊りなさい!」

『なにをっ!チュウッ!』


 ケンの実力を量るべく、手加減気味に放った私の斬撃はあっさりと回避されました。

 鈍重そうな外見にも関わらず、思ったよりも機動性があるようですね、このコンバットスーツ。


 身を躱したフォトナイザーがカウンター気味に放ってきたパンチをブレードでいなし、私はフェイントを織り交ぜた四連撃でフォトナイザーを攻め立てます。


 初手、二手目は防がれ、三手目のフェイントに……ケンは引っかかりました。


 本命の突きが、フォトナイザーの喉元を捉えます。


『くっ!』


 フェイントの時点でブレードをショックモードに変更していたので、スーツを纏ったケンにはダメージは全く入っていないでしょう。

 ですが、私が本気であればこの時点でケンは死んでいます。


 そして、彼もその事を理解したようです。ケンの攻め手が一瞬止まりますが、台本では私が負け、ケンが……正義が勝つことになっています。

 私はあえてケンと鍔迫り合いになる体勢に持ち込みながら、小声でケンに話しかけます。


「このあと、私を蹴り飛ばしなさい。そこからは台本通りに」

『だが……』

「私は、あなたより強いです。だから、心配は無用です」

『判ったんだぜ!……チュウッ!』

「ぐっ!」


 ケンは手加減をしているつもりなのでしょうけど、フォトナイザーの蹴りはとても重く……私が並の人間なら、おそらく内臓破裂で死んでいたでしょう。

 テロマーの耐久力と、蹴りが来る事が事前にわかっていて身を引いていたことで致命傷は避けられましたが……威力だけなら侮れませんね、フォトナイザーシステム。


 その後、私こと永遠の女帝(エターナルエンプレス)は無事にフォトナイザーに討伐され、ステージは観客の喝采を浴びながら幕を閉じました。



「アリサ、大丈夫?」

「大丈夫じゃないです。痛くて泣きそうです。トワ様を抱きしめて癒やされたいです」

「うん、全然大丈夫そうだね」

「どうしてそうなるんですか!?っていうかアイリスさん!?なんで私が永遠の女帝(エターナルエンプレス)なんですか!?」

「いや、それアリサが自称してた名前でしょ?」

「うぐっ……」


 ステージ終了後、痛むお腹を労りながらトワ様に慰めてもらおうと企んでいた私でしたが、アイリスさんの無情なつっこみによって阻止されてしまいました。


 私達がいつものじゃれ合いをやっていると、ステージでファンサービスをしていたケンが戻ってきました。

 舞台裏に戻ってきた途端、それまで笑顔だったケンの表情が曇ります。


 まぁ、見た目は同年代の、それも生身の女の子を相手にコンバットスーツで完全敗北した訳ですし、ヒーローとしての矜恃が傷付けられて不快な気持ちになるのは仕方ないでしょう。


 黙って私の方へ歩いてくるケンにトワ様達も道を譲ります。そして、私の前に立ったケンはしばらく無言で私の顔を見つめた後……おもむろに土下座しました。

 この人、昨日も私に土下座しましたよね?


「師匠……師匠と呼ばせて欲しいんだぜ!」

「お断りします!」


 思わず即答で断ってしまいましたが……。

 文句を言いに来た訳ではなく、自らの弱さを素直に認め、より高みを目指そうとする彼の姿勢は好ましいように思えました。



 私がケンに勝ったことで数日程度であればフォトナイザーが不在にしていてもトーエイの平和は脅かされないことを理解して貰うことができました。

 いえ、現状ではフォトナイザーが現れないほうが平和が維持出来ているのですが……まぁ、それはケンには言わないほうが良いでしょう。


 ケンから預かったフォトナイザーに変身するためのコアアイテムはベルトのバックルでした。

 これを装備してキーワードを叫ぶと衛星軌道上からスーツの元となるエネルギーが転送されてくるようですが、どうして叫ぶ必要があるのか理解に苦しみます。


 なにせ声を張り上げても衛星軌道まで届きませんし、バックルが声を拾うなら大声を出す必要は無いわけですし。

 ともあれバックルをトワ様とマリエッタに託してフォトンレギュレーターを組みこんで頂くわけですが。


「ケン、私も凝晶したい」

「それは無理なんだぜ!」

「いじわる」

「いじわるじゃないんだぜ!」


 どうやらトワ様はフォトナイザーに変身してみたいようですね。後ろでマリエッタも頷いているので、あの子も同様なのでしょう。

 ですが、ケンの返事はトワ様には変身できないというものでした。


「トワ様、おそらく変身者の認証があるのだと思います」

「そうなんだぜ!さすが師匠だぜ!」

「師匠じゃないですから」

「ともかく、ステラマリアで認証しないと変身できないんだぜ!」


 今、さらっとかなり重大な秘密を喋りましたよね、ケン。

 ステラマリアというのは確かフォトナイザーの母艦だったはず。つまり母艦を占拠されるとフォトナイザーシステムごと乗っ取られるということですか……。

 まぁ、バックルか母艦、どちらか片方が奪われても片方が手元にあればまだ奪還の機会はある分、セイフティは機能しているとも言えますが。


 それでも衛星軌道上の無人母艦はかなりのウィークポイントになりそうな気がしますが……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。