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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部3章『籠中の鳥』パノプティコ-案点の惑星
476/583

#11

>>Towa


 やっぱりこの星はおかしい。

 こんな数字一つで人の人生が左右されるなんて。

 アリサもアイリスもこの星がおかしいと口に出しては言わないけど、それでも私と同じようにこの星がおかしいと思ってることはわかる。

 けど……。


 ギルド支部に戻って支部長さんに運転手の話をしたら、悲痛そうな顔をしたけど、この星では良くあることですと言っていた。同時に、ギルドは内政干渉禁止だから、この件については何も言えないんだとも。


 それにしてもスコアを失ってヨタになるっていうことが、そんなに良くあるならヨタって沢山いるんだろうか?


「ヨタの人数ですか?ヨタはシステムの管理から外れた存在なので公的な調査が行われている訳ではないですが……前任者の残した報告書では2,000から2,500人程度が存在しているとされていました」

「ロワーズは?」

「そちらはデータがありますね。スコア40~49のロワーズと呼ばれる層の人数は5,219名となっています」

「崖っぷちで踏みとどまっている者と、崖から落ちた者が合わせて8000名弱ですか……。ベンサムの人口は350万人程度でしたよね?なら構成比率は0.22%……いえヨタは統計に含まれないなら0.17%と言ったところですか」

「何が?」


 アリサがぽつりと呟いた数字の意味がわからず、私は首をかしげた。

 私が発した質問に、アリサはそれがパノプティコの貧困率に相当する数字だと教えてくれた。

 パノプティコではスコアが全てで、社会保障や行政サービスみたいな基本的な権利すらスコアが低いと保証されないのだとしたら、ロワーズやヨタは他の惑星でいうところの貧困層……つまり、文化的な最低水準の生活ができていない状態と同じなんだとアリサは言う。


 そしてその数字だけ見ればパノプティコは楽園のように福祉が行き届いた星だ、と付け加えたけど……アリサが本心ではそう思っていないことは、表情を見ればすぐに判った。

 アリサの言葉には私も同意する。

 だってサクラも、アオもミドリも、どうみても「文化的な最低水準の生活」ができているようには見えなかったから。



 あまり盛り上がらない会話をしばらくしていると、アイリスが戻ってきた。

 一瞬、ナミはもう旅立ったのかと思ったけど、なんでもナミはアルカンシェルに滞在することになったらしい。

 よかった、せっかく買ったライスクラッカーが無駄にならなくて済んだよ。


 でもアルカンシェルに乗ったってことは、これからしばらくまたナミと一緒に旅ができるのかな?

 そう思ってアイリスに確認すると、ナミがリュミエールを持っていて、1人で旅をしていると教えてくれた。

 その答えに私もアリサも顔を見合わせた。


「リュミエール?4機目が発見されたのですか?」

「私もそう思ったんだけどね、なんでもギルドがG17から奪った1号機らしいよ」

「メラニーがあの船を手放す……?俄には信じがたいですが……」


 うん、アリサが言うようにリュミエールを欲しがる人はいくらでもいるけど、手放したがる人なんていないだろうからね。

 なにせオンブルと違ってリュミエールの操縦にはシンガー能力が不要だし、いくらメラニーがオンブルを持ってると言っても汎用性が違いすぎるから。


 ナミの話だと一度分解したリュミエールを組み立てられなくなって、使い道が無くなったから機族のところへまわってきたらしい。

 それを機族が組み立てて、機族の母であるナミに寄贈した……ってことなんだそうだ。

 それなら納得できるかな?


「そうだ、トワ?後でいいからナミのリュミエールを回収してアルカンシェルにドッキングさせておいてくれない?ナミ、1人だと軌道ステーションの利用できないし」

「わかった。でもいいの?」

「もちろん、ジャンプは禁止だよ?」


 アイリスは私にリュミエールの……というかリュミエールのジャンプドライブ使用禁止令を出している。

 以前テスト航行の時に亜空間へ迷い込んじゃったからね。


 だから基本的にアルカンシェルに搭載しているリュミエール2号機はマリエッタ専用みたいになってるんだけど、今回は久しぶりに私もリュミエールに乗って良いらしい。


「ライセンス未取得の子供に、駐車場の内で駐車練習させるノリだよね」

「アイリスさん、それ……トワ様に失礼ですよ?的確な例えだと思いますけど」


 酷い言われようだ。

 私、ちゃんとライセンス持ってるのに。


 ……あ、でも私のライセンスってエアロプレーン専用だから、本当は航宙艇には乗れないんだっけ。


 その後、アイリスはパノプティコの法規についていくつか確認したいことがあると言った。

 なんでもヨタを助ける方法をいくつか考えてくれているらしいけど、この星の定める法や規則に抵触しないようにプランを煮詰めたいんだそうだ。


 さすがアイリス、頼りになる!

 ただ、それが実現可能かどうかは未知数らしくて、あらぬ期待を抱かせないために具体的なことはまだ話せないと言われた。


「トワ様、アイリスさんと私でプランの検討を進めておきますから、その間にリュミエールを回収されてはいかがですか?」

「あ、それ良いね。あとトワ?ついでにお風呂入って着替えてきなさい。ちょっと臭うよ?」

「……わかった」


 自分ではわからなかったけど、どうやら下水道に入り込んだときの匂いがまだ残っているらしい。


 私は姉達の言葉に従い、リュミエールの回収と、入浴に向かうことにした。


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