#1
>>Towa
マリエッタとヒナをアノインティングに残し、私とアイリス、そしてアリサの3人はナミが緊急救援を求めてる惑星パノプティコへと向かった。
サクヤが言うにはナミからの通信はて途中で途切れたらしく、日頃は何事にも軽い感じで対処するサクヤがえらく取り乱している。
まぁ、この子は結構お母さん子だから仕方ないよね。
でもパノプティコって言う星はそんなに危険なところなんだろうか?
私がそう疑問を口にすると、アイリスは少し考えてから言った。
「んー、聞いている限りだと良さそうな星だと思うけど?なんでも長期滞在する旅人の多くが定住しちゃうって話だし」
「ご飯がおいしい星?」
「どうだろうね?分類的には文明レベルが高い技術惑星になってたから、農業惑星みたいに食べ物が美味しいって感じじゃなさそうだけど……」
「ほほう」
「確か犯罪発生率はほぼゼロで、警察機構とかも存在しないって聞くよ?子供が夜に一人で歩けるぐらい安全だとかっていう話も聞いたことあるし」
警察が無い……うん、私達の故郷にも無かったし、私も子供時代に割とフラフラと夜歩きしてたからCM41F3Cと似た良いところかもしれないね。
ただ、CM41F3Cは単に人口が少なくてみんなギルドの身内だったから犯罪なんて無かっただけだけど。
でも私達の話を聞いていたアリサが少し困ったような顔で言った。
「パノプティコは……少々特殊な星なんです」
「特殊?独裁者がいるとか?」
「いえ、その逆です。パノプティコには統治者というものが存在しません」
統治者がいないということは、誰も指導しないということで……昔疫病で崩壊する寸前だったヴェリザンみたいな無政府状態ってことなのかな?
「それ、情報と違って実はかなりやばい星ってこと?ナミ、そんな所でトラブルに巻き込まれてるの?」
「いえ、それがパノプティコ自体は非常に治安が良い星なのは事実なんです。それこそ、他の惑星政府が参考にしたがるレベルで治安が安定しています」
「ほほう」
「ですが、パノプティコからは不思議と統治や政治形態に関する公式な情報発信は一切行われていませんし、視察に出向いた他惑星の人間も場合によっては居着いてしまうとかで……」
「それ、逆に胡散臭くない?」
「ええ、だから特殊な星だと」
うん、良くわからない星だね。ご飯が美味しくて帰りたくなくなる感じじゃなさそうだけど、なにか帰りたくなくなるようなものでもあるんだろうか?
ちょっと楽しみな気がしてきた。
でも、じゃあどうしてナミはそんな星から緊急救援要請を送ってきてるんだろう?
到着したパノプティコは衛星軌道上から見ると割と普通の星に見えた。
アイリスが念のためだと言って、普段は未開の惑星にしか行わない衛星軌道上からの画像解析を行ったんだけど、映像を見る限り星都周辺はかなり高度な文明化がされているっていう前評判通りの結果がでた。
高層建築や階層化された都市構造、公共交通機関らしきものも綺麗に整備されていてヴェリザンみたいな荒れた印象は一切無い。
ただ、星都の外には何も無い荒野が続いているけど、あれは開拓のために資源を取り尽くしたとかなんだろうか。
「上から見る限りだと典型的な都市国家ぽい印象だね。プラント類は郊外に配置されてるから、星都は純粋な居住用都市だと割り切ってる感じかな」
「生産拠点と消費拠点を明確に分けること自体は珍しくありませんが……」
『ね、そんなこといいから、早く母様を助けてあげて!』
アイリスとアリサも映像を見ながらパノプティコの状況を分析していたけど、サクヤが早くナミを助けに行けとうるさいので私達は取り急ぎパノプティコへ向かうことにした。
ブリーズで到着したパノプティコの軌道ステーションはこれまで見たどのステーションよりも綺麗に清掃が行き届いていた。
塵一つ落ちてないっていうのはこういうことなのかな?
床も、窓も、ピカピカに磨かれているよ。
入星ゲートでギルド章を示した私達は、来訪目的をギルドの業務と伝えた。
ナミの救援要請がどんなものか判らないから、正直に友達を助けに来たとは言わない方が良いし、そもそも申告手続きの理由欄にそんな選択肢はなかったからね。
係官は私達のギルド章を確認すると穏やかに微笑みながらパノプティコへようこそ、と挨拶してくれた。
うん、丁寧な星だよね。でも、他の星だとそれで手続きが終わりのはずなんだけどパノプティコでは私達1人1人に小さなバッジのようなものが手渡された。
なんでもパノプティコの地表、ベンサムという名前の星都に滞在する間はそれを胸に付けておくのがこの星の決まりらしい。
入星ゲートをくぐった私達は互いのバッジを見比べてみた。
私のバッジには75と言う数字が表示されていて、アイリスとアリサのバッジには85と表示されている。
なんだろう、これ。
バッジを付けたアイリスとアリサを見ながら数字の意味を考えた私は、しばらくて正解に思い当たった。
「これは間違った数字」
「え?どういうこと?」
「アイリスの85はたぶんあってる。でもアリサは85じゃない。100以上はある」
「えっと、トワ様……?それはどういう……」
「あと私は75もない」
だって私、68だもん。
気にはしてないけど、ちょっと腑に落ちない。
そう思いながら私が数字について説明すると、2人はようやくこの数字の意味を理解したようだ。
「いや、トワ?これバストサイズじゃないからね?どこの世界にバストサイズ晒しながら生活する星があるのよ」
「じゃあ、何?」
「トワ様、これは……信用スコアです」
シビルスコア?スコアと言うからには何かの点数だと思うけど、私この星に着いてから特にテストとかも受けてないんだけど。
よくわからない上に聞き慣れない言葉に私は首をかしげる。
そんな私の様子にアリサがパノプティコの仕組みについて説明してくれた。
なんでもパノプティコではその人がどれぐらい立派な人かを示すために社会的な信用度の評価目安になる数字……つまりシビルスコアが導入されているらしい。
シビルスコアの基準値は60で、それが普通の人。それよりスコアが高いと立派な人で、低いとダメな人だと見なされるらしい。
で、ギルド関係者は社会的な信用があるから数値は高めになるんだって。
私とアイリス達で数字に違いがあるのはシンガーである私より、管理官であるアイリスやアリサの方が社会的信用があると評価されているんだろうとアリサは言った。
「解せぬ」
「ええ、全くです。トワ様のスコアが100ではないという時点で、このシビルスコアとやらはおかしな制度だということは明らかです!」
アリサが強い口調でそう言った瞬間、バッチが軽く光ってアリサの数字が85から84に減った。
え、なにこれ。
「アリサ?今、数字減ったけど……。もしかして、この星の制度に理不尽な批判をしたから?」
「……そのようですね。なんとなく、この星のことが判った気がしました」
そう言うとアリサはげんなりした表情を浮かべた。




