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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部2章『サクラメント』アノインティング-恵授の惑星
454/521

#15

>>Towa


 眠い。

 そしてお腹空いた。

 どうしてこんな朝イチから儀式をするんだろう。


 みんなお昼まで寝ていたいはずじゃないの?

 それに儀式の前はご飯食べたらダメとか意味がわからない。

 私が祭祀長なら儀式はランチの後から始めるのに。


 動きにくい服を着せられて、星見草の種がたっぷり入った籠を持たされた私はそんな事を考えながら、星の油壺の前に立ち広場に集まった人達に何やら話しているフローラの事をぼーっと眺めていた。


「――では、間もなく朝日が昇ります。星の実りに感謝を捧げ、本年の星賛祭を執り行います」


 どうやら挨拶は終わったようだ。

 回りから拍手が起きるけど……私も拍手した方がいいのかな?隣を見ると、アリサもアイリスも拍手してる。

 マリエッタは……立ったまま半分寝てるね。


 私も拍手しようと思ったけど、よく考えたら種の籠を持ってるから拍手できないや。


 昨夜の賑やかな前夜祭とは違い、早朝から行われる祭りの開会宣言?開幕儀式?まぁそんな感じのものは厳かな空気に包まれている。

 派手な音楽もライトアップもなく、ただ日の出前の薄暗い広場にいくつかの灯火が焚かれているだけ。

 儀式が始まるのが日の出の1時間前からということもあって人は少ない。


 屋台はまだ営業してないし、お祭りを楽しみたいだけの人は参加してないはず。たぶん早朝の儀式に集まっている人達はみんな伝統を大事にする人達なんだうね。

 フローラも昨日そんな事を言ってた気がするし。


 伝統行事と聞いて私はてっきり年配の人が集まるんだと思っていた。歳を取ると朝が早くなるって良く聞くからね。


 でも実際は年配の人だけじゃなくて、若い人も子供も交じってて、みんな真剣な表情でフローラの話を聞いていた。

 この星で星賛祭がどういう位置づけなのかは来訪者である私には良くわからないけど、単なる収穫祭とは少し違うような気がした。


「――では巫女による星種奉納の儀を行います」


 あ、そろそろ私の出番かな。

 長い裾を踏んづけて転ばないように気を付けながら、私は星の油壺の方へゆっくりと歩き始めた。



 これから「女神のC3」になる予定のC3が設置されている場所は、昨晩に前夜祭へ来たときに確認を済ませてある。


 実は私、昨日フローラに話を聞いた時にC3の紛失騒ぎで星の油壺が厳重に警備されてると思い込んでたんだけど、実際は昨夜も警備員の人が油壺の前に2人立ってるだけで触ろうと思えば普通に触れる状態だったのは驚いた。


 なので、本当なら昨夜のうちにちゃちゃっと再調律(リチューン)することもできたんだけど……まぁ、せっかく巫女役をさせてもらえるんだし、急がなくて良いかと思って今日この場にいる訳だ。


 宿に帰ってからアイリスにそう言うと、呆れ半分でお説教されたけど……私だって朝ご飯抜きだと知ってたらたぶん昨夜のうちに再調律(リチューン)済ませてたんだけど。


 油壺の前に立ってはみたけど、どう始めたら良いのか良くわからない。

 フローラが何か手順について説明してくれていたような記憶もあるけど、眠くて考えが纏まらない。


 でも、まぁいいか。私は完璧な巫女をするためにここにいる訳じゃなくて、C3の再調律(リチューン)をするために来たんだからね。

 だから、私は油壺の前に跪き、C3に手を触れると前置きなしに大きく息を吸い込み、歌を紡ぐ。



『Starlight falls from silent skies, Healing flows on scented breeze.』

(夜空に降る 星のひかり 香にのせて 癒しは満ちる)

 『Tiny seed in gentle hands, Bloom as stars upon this land.』

 (手のひらの 小さき種よ 咲けよ この地に 星々の花)


『Light the oil, carry prayers, Ancient words ride through the air.』

(香油を灯し 祈り継げば 祖の言葉 風に響く)

 『Time turns, and buds gently sway, Blessed starseed greets the day』

 (めぐる時に 蕾はゆれて 祝福宿す 星の種)


 私の歌に反応してC3が明るく朱く輝く。

 その輝きの中に一葉の葉が舞い降りたように小さな碧が混じる。


 歌声が風に溶けてゆくのに合わせて、光は徐々に淡くなり……そして、消えた。


 朱による火力調整と、碧による熱浸透速度の向上。

 この2つのコントロールを適正に行う「女神のC3」が再調律(リチューン)によって完成した。


 私は目の前にある奉納箱に種を流し込む。

 勢いよく流し込んだからちょっとこぼれちゃったけど……まぁ許して貰えるかな。


 種をそそぎ終えて振り返ると、アイリスがジト目でこっちを見てることに気が付いた。

 あ、雑にやったのがバレてる。これは後でまたお説教されるパターンかな?

 フローラにも怒られそうな気がしてフローラの方を見てみたけど……なんか複雑そうな顔してるね。

 やっぱりこれはフローラにも怒られるんだろうか。


 そんな事を思いながら、私は星の油壺の前から、皆の方へ戻ろうとした。

 私が一歩足を踏み出すと……それまでしんと静まりかえっていた広場に拍手が響いた。


 みると、執事の人……スチュアートさんだっけ?が拍手してくれている。

 そして、回りにいた人たちも、どんどんその拍手に参加してくれてるみたいだ。

 あれ?私、褒められてる?


 うん、私は誉められると伸びる子なんだ。

 そう思った私は胸を張ってアイリス達の所へゆっくりと歩き始めた。


 裾を踏まないように注意しながら。



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