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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第3部序章『行こう、物語の世界へ』ヴェルデナ-再翔の惑星
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#7

 アリサが待機していた1時間の間に、ペレジスの星都クリスタンティアを中心とした11箇所で事件が発生した。


 例えばクリスタンティアの中心から少し離れた豪華なビルの最上階にあるペントハウス。


「お、おい……今のって……」

「クローンマフィアの事じゃねぇか!やべぇそ、アイツを買った事がバレたら俺たちまで全力制裁の対象になる……!」

「ギルドの奴等にバレる前に処分しろ!」


 ペントハウスの主は、アリサの不在中に勢力を拡大しようと画策していた違法薬物販売の元締めだった。

 彼はライバル組織や警官隊への押さえとしてクローンマフィアを1体購入していたが、頼りになる用心棒の筈だったクローンマフィアの存在が、自分達の命を脅かす要因と化した。

 そう判断した元締めの行動は速かった。


 自分達が制裁対象から外れるためにクローンマフィアを処分する。

 命令に絶対服従という触れ込み(・・・・)のクローンマフィアは黙って処分されるだろうと元締めは考え、深く考えずにブラスターを向けた。

 ジャック(・・・・)に向かって。


 ジャックがそれを自らへの攻撃と判断し、過剰に反撃するのは当然の流れだった。

 なぜなら、オリジナルジャックはクローンに絶対服従などというセイフティは組みこんでいなかったのだから。

 かくしてジャックに銃を向けた元締めと、その取り巻き達は瞬く間にジャックによって殺害された。


 他の10箇所で起きた事件も、ほぼ同様だった。

 11箇所全てでクローンマフィアは購入者達と戦闘し、そして勝利した。


 ……1時間後。

 アリサは持っていたクローンマフィアのコントロール端末から「自壊」コマンドを送信した。


 ジャックはクローンを「息子」と呼びながらも、遠隔操作でクローンを自壊させる機能を組みこんでいたのだ。

 そして、その機能は正常に機能を発揮し……11箇所の大量殺人現場で、クローンマフィアは静かに動作を止め、崩れ落ちた。


 端末に示されていた、11体の反応が全て消失したことを確認したアリサは、傍らに控えていたテレジアに端末を手渡しながら言った。


「テレジア、端末を解析してクローンの最終位置を割り出してください。後始末のために警官とギルド保安部の派遣要請も併せてお願いします。私はオリヴィエの所へ行きます」

「承知しました。ですが、アリサ様?着替えはお忘れなく」

「……当たり前です」

「忘れていましたよね、ご自身がどんな格好をしているか」

「……テレジアの意地悪」



 オリヴィエの容態が安定していると報告を受けたアリサは一旦帰宅し、返り血を洗い流すと共に血まみれのドレスを焼却処分した。

 オリヴィエの血だけであれば問題なかったのだが、ジャックの返り血をかなり浴びていた。

 気持ち悪いというよりも、衣類に染みこんだ血液からDNAが採取され、再度ジャックが生産される事を危惧したのだ。


 忌まわしい記憶と共にドレスを焼却したアリサは、オリヴィエが収容されているギルドが運営する病院へと向かった。


 医療用ポッドに寝かされたオリヴィエにはサイバネティック手術が施されていた。

 右肩部を欠損した事によるダメージは見た目より大きく、出血はもちろんのこと、骨格や筋肉のバランスが崩れ、さらには腋窩部のリンパ節が損傷したことで感染症のリスクも高まっていたと医師は説明した。


 そのため、クローニングによる部位再生では間に合わないと判断され、応急的に胴体側の欠損部位を補う形でサイバネティック義体が埋め込まれていた。


 義体部分はオリヴィエの肌に合わせた色になってはいるが、質感の違いからどうしてもそこが義体であることは視認できてしまう。

 そしてなによりも腕部に相当するモジュールが装着されていないため、肩関節の機構が露出していることで痛々さが増しているとアリサは感じた。


 メディカルマシンに表示されたバイタルサインは若干の乱れこそあるものの、生命維持には問題無い状態で安定しており、現在は麻酔の影響でオリヴィエも眠っている。

 サイバネティック手術の拒絶反応を抑えるための措置が執られているため、意識が覚醒するのは3日後だと医師に説明され、アリサはその日はそのまま病院を後にした。


 3日後、オリヴィエは意識を回復した。

 自身でも死んだと思い込んでいたオリヴィエは、自分が生きていること、そして右腕を失ったことに驚いた様子だった。

 腕の無い右肩を見て気落ちした様子のオリヴィエにアリサは声を掛ける。


「オリヴィエ、本当にごめんなさい。私がもっと早く戻っていれば……」

「いや、お袋は悪くない。アタシがヘマしただけだ。でも、これじゃ……利き腕を無くしたらもう、仕事も続けられないか」

「……オリヴィエ?腕、付きますよ?機械製ですけど」

「そうなのか!?じゃあ、問題なしだな!」


 どうやらオリヴィエはずっと右腕無しで生活することを覚悟していたらしく、本人の希望に合わせたサイバネティック義肢が用意されると聞いて安堵の表情を浮かべた。


 医師が言うにはまず簡易的な仮設アームでサイバネティック義肢のコントロールに慣れるための訓練を行い、その間に希望する義肢を建造。

 コントロールになれた段階で換装するという形で治療が行われるらしい。


 どのようなアームが良いかと聞かれたオリヴィエは、少し悩んだ後に医師と……テレジアとに相談したいと言った。


「私には相談してくれないんですか?」

「お袋には内緒だ!」

「……腑に落ちません」


 アリサは不満げな口調でそう言ったが、その表情はとても穏やかだった。

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