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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部13章『大宇宙はどこまでも広がっているから』ペルセウス腕-胎動の宇宙
387/471

#11

「――って感じでね、私達の行動は全部筒抜けだったんだよ。たぶんリュックラセの周辺にスターゲート方面に向けた監視網でも展開してたんじゃないかな」

「プローブ置いてくる必要なかった?」

「結果的にはそうかもしれないね。でね、私達がスターゲートを壊したことがバレてて、そんな事をするってことは放浪機をこっちへ呼び込んだんだろう、ってスゥ局長に問い詰められたんたよ。スターゲートの件はアルカンシェルぐらいしか通れる船が無いからあんまり問題にならなかったけど、放浪機の方が問題でね……」

「……あのタヌキババア、よりにもよって外患誘致だなんて言うんですよ。酷い言いがかりですよね」


 お茶を入れたアリサが戻ってきた。

 でも外患誘致……って何だろう。


「アリサ、外患誘致って何?」

「外部から敵を招き入れて自分達を攻撃させようと企む裏切り者……ということです」

「まぁ、状況だけみればそう言われても仕方ない部分はあったよね。私達にそんな意図は欠片もなかったけど」

「ええ。外患誘致の認定には敵との通謀の有無が重要な争点になります。生命を抹殺することを目的としている放浪機と通謀が成立する訳がないじゃないですか」


 つまり、メラニーは私達が人類の裏切り者だと考えてたってこと?がんばって放浪機倒したのに。

 さらに納得がいかないことに、アリサが言うには外患誘致の罪が確定したら、確実に0号処分(処刑)の対象になるらしい。腑に落ちない。


「私達、0号処分なの?」

「いえ、外患誘致を認定するにはギルド法廷で裁判を行う必要がありますからね。裁判になれば私達が『何を』『どこから』招き寄せたか公開する必要があります。放浪機の存在とオリオン腕の現状が公開される事はメラニーにとって望むところではないはずですから」


 アリサが言うには、その情報はこれまではメラニーだけが知っていて、メラニーが隠そうとしている事実そのものらしいから、裁判沙汰にすること自体が本末転倒な結果に繋がるらしい。

 アリサはそれがわかっていたから堂々とメラニーに会いに行ったんだと言ってた。私はお茶を飲んでいたアイリスに視線を向け、お姉ちゃんもわかってたのかと目線で聞いてみる。


「うん、私もそれはわかってたよ。だから出頭命令だと言われてもそんなに危機感は無かったんだけどね。でも、アリサが裁判沙汰にするって抗弁するのもスゥ局長の想定範囲だったみたいなんだよ」

「ええ。あのタヌキババアは私達を牽制するために外患誘致と言ってきただけです。ですが……ナミから聞いた話は確かにペルセウス腕(こちら)の人々に公開するべき情報ではないのも事実です」


 生命を抹殺しようとする敵の存在。

 そして、オリオン腕側の人類がおそらく滅亡しているという状況。

 確かにそんな話が広まったら、実際に放浪機が来てなくても皆不安になるだろうね。


「だからね、私達を外患誘致に問わない代わりに、放浪機とオリオン腕の件については一切公の場で発言しないようにって箝口令を敷かれちゃったよ」

「まぁ、それは想定の範囲内だったのですが……問題は箝口令を守っている事を示すために、盗聴対策の解除を命じられた点ですね」

「盗聴?使い魔のやつ?」

「ええ、私達のフォトンタブに施していた防疫措置をその場で解除させられました。アルカンシェルについてはトワ様の船なので措置を強制できないそうですが、それでも私アイリスさんが地上に降りた時点で現在位置と会話内容がメラニーに筒抜けになります」


 アリサはげんなりとした様子でそう言った。そうか、だからさっきブリーズで戻ってきた時に通信に応答が無かったり、返事が素っ気なかったりしたのか。私がそう言うとアイリスが頷いた。


「そ。たとえ私的なものでも通信は『公の場』になるからね。だからあそこでは話せなかったんだよ。ごめんね、トワ」

「問題無い。罰はそれだけ?」

「ううん。そこまではまだ罰じゃなくてね……」


 そう言うとアイリスは少し気が重そうに説明してくれた。

 なんでもメラニーはアイリスとアリサの行動が管理官として不適切だと言ってきたらしい。スターゲートを通ったこと自体はギルド憲章のどの条項にも反してないけど、結果として人類に危機をもたらしかねない行動は管理官として問題だって。


「で、私もアリサも、管理官としての役職は当面停止。で、無期限の停職処分だって」

「無期限って、ずっと?」

「まぁ、ほとぼりが冷めるまで……って事だよね。アリサ、どれぐらいだと思う?」

「数ヶ月か、数年か……メラニーは私達の寿命が長い事を知っていますから、本気で懲罰を与えるつもりなら数十年、数百年と言ってくる可能性もありますが」

「げ、数百年とか言われたら、私ギルド辞めるよ」


 無期限と聞いて無限なのかと思ったけど、そういう訳じゃないらしい。なら最悪冷凍睡眠しておけば気付いた時には時間が経ってるんじゃないだろうか。

 私がそう提案するとアイリスがもの凄く嫌そうな顔をした。


「冷凍睡眠はパスしたいかな。完全耐性を得たといっても、1度死んでるからね、私。それにそんなことしたらマリエッタを置き去りにしちゃうじゃない」

「……ごめん」

「別にトワは悪くないよ。それでね、まだ処分の続きがあるんだよ」


 そう言うとアイリス処分の続きというのを話してくれた。

 なんでも停職期間中はアイリスとアリサは惑星上に留まり続ける必要が……つまり、宇宙を旅したらダメらしい。さらにアイリスとアリサが同じ惑星に留まるのは禁止という追加条件もあるそうだ。

 なにそれ、嫌がらせ?


「ええ、間違い無く嫌がらせですね。メラニーのやりそうな事です」

「まぁ私達が同じ惑星にいたらおそらく放浪機対策の検討とかしちゃうだろうし、外部に情報を漏らさないためにそういう動きを封じたいんだろうね」

「でも、それだとアリサと一緒にいられない」

「トワ様?私と一緒の星で、アイリスさんとは別れてイチャラブ新婚生活という選択肢は……?」

「ない」

「即答っ!?」


 アリサには悪いけど、アイリスかアリサ、どちらかとしか一緒にいられないなら私はアイリスを選ぶ。

 まぁ私はその処分の対象外だから、時々アリサに会いに行くことま出来るだろうけどね。


「で、ここから要検討事項なんだけど、どこの星で謹慎するかなんだよね」

「私は、故郷のペレジスへ戻ろうと思います。テレジアもいますし、孤児院もありますから」

「うん、アリサはそう言うだろうと思ってたよ。なら、私だけど……私達の故郷(CM41F3C)へ戻っても、もう知ってる人は誰も残ってないだろうし、そもそもギルド直轄地で謹慎っていうのも気まずいしね」

「どこの星でもいいの?」

「らしいよ。ただし48時間以内に移動を完了しろなんていう、アルカンシェルが無いと無理な条件出されたけどね」


 謹慎って、どこか場所を指定されると思ったんだけど……意外と選択の自由はあるんだね。

 それ、もしかしたらアイリスについて行くであろう私に対してメラニーが配慮してくれたのかもしれないね。


「ならアリサをペレジスへ送って、その近くで謹慎?」

「まぁそうなるかな。トワ、どこか行きたい所ある?しばらく腰を落ち着けることになるかもしれないけど」


 アイリスと一緒ならどこでもいいけど……どうせなら。


「牛乳が美味しい星がいい」

「あはは、トワらしいね。じゃ、ペレジスへ向けて出発して航行中にアルカンシェルにその条件で星を見繕って貰おうか」

「うん」

「トワ様、できるだけペレジスに近い星にしてくださいね?」

「牛乳のおいしさが優先」

「私より牛乳優先ですか!?」


 アルカンシェルがジャンプできる範囲内ならどこでも同じだと言いたかったんだけど、私の口が発した言葉はまるでアリサより牛乳の方が大事みたいな言い方になってしまった。

 まぁ、間違ってはないけれど。


「ところでアリサ、結局スゥ局長にナミの事を話さなかったけど良かったのかな?」

「今回はメラニーにいいようにしてやられましたから、隠し球としてナミの存在は秘匿しておいた方が良いかと思いまして」

「でもダンディライアン経由でバレない?」

「ヒナに出頭命令を伝えられた後、モルガンにギルドがナミを狙うかもしれないから全力で隠せと伝えておきました」

「なにそれ、ちょっと話盛りすぎじゃない?」

「あそこの機族は口が軽いですから、そうでも言わないと機密保持なんてできませんよ」


 アリサ、やっぱり腹黒いところあるよね。でも、私はあえてその言葉は口にしなかった。


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