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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部13章『大宇宙はどこまでも広がっているから』ペルセウス腕-胎動の宇宙
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#8

 私がヒナの評価を見直している間に、アリサは報告書に目を通し追えたらしい。何故か私に報告書を手渡してきたアリサは、ヒナを真剣な目で見据えて言った。


「ヒナ。貴女がこの件の担当監察官だったのですね」

「は、はいっ!」

「なら貴女に問いたいことがあります」


 あれ?何か引っかかることでもあったのかな?

 そう思った私はアリサに渡されたカルデクスでの一件にまつわる監察記録を斜め読みした。病死した支部長の息子が勝手に支部長代理を名乗り、横領に不正に内政干渉?

 ……挙げ句の果てに、統括局へ内部通報した職員を謀殺?どんだけ悪辣なのよ、このドラ息子。

 私は監察記録に記された顛末に眉をひそめた。


「あ、あの!すみませんっ!勝手なことを言いました!でも、ワタシは本当にアリサ様を女神だと思ってますし、心を捧げる覚悟です!」


 その台詞、どこかで……いや、さっき見た監察記録に書いてあったね。私は記録の該当箇所を確認する。

 あった。

「申し訳ありませんが、ワタシは既に心を捧げたヒトがいます。女神アリサ・シノノメ。ご存じでしょう?」

 ……って、なんで監察記録に記録者本人の発した台詞が一字一句書かれてるんだろうか。


 いや、それ以前に私、勝手にこの記録見て良かったんだろうか?

 確かに私も二等管理官だから監察権は持ってるけど、直接関係していない件の記録を回し読みするのはちょっと不味い気がしてきた。


「いえ、その件ではなく。貴女、聞き込みで農場プラントを訪れていますね?証言者であるファリウス夫妻の様子について詳細を」

「ファリウス夫妻……ですか?えっと、カルデクスの星都に近い農場プラントを管理されている若いご夫妻で、お子さんが2人……奥様は妊娠中のようでしたけど、あのそれが何か?」

「トワ様?」

「子供は女の子?男の子?」

「え?……えっと、確か大きいお子さんが男の子で、小さい子が女の子でしたが……」

「どっちに似てた?名前は?」

「えっと、どちらも奥様に似ていたような?女の子はミーナって呼ばれてた気がします……ってアリサ様?どういう事ですか?」


 ファリウスと言う姓は私も聞き覚えがあった。確かアリサが決闘騒ぎになったときの関係者で、ミリシャさんの婚約者であるイゼルドさんの姓がファリウスだったはず。

 ということは、アリサとトワが本当に聞きたかったのはヒナの監察内容じゃなくてミリシャ達がどうしてるか……って事だね。

 ヒナの答えに嬉しそうにしているトワとアリサを横目に、ヒナは訳がわからないと言う顔をしていたので、私がファリウス夫妻はトワとアリサの友人だと伝えると、ヒナはきょとんとしていた。


 その後、同じようにミリシャ達とは面識の無いマリエッタに私が事情を説明していると、ヒナが初めてマリエッタの存在に気付いたように声を掛けてきた。


「あの、アイリス様?そちらの方は?」

「マリエッタ。私の専属秘書官で、一緒に旅をしてる。未成年だから私が後見人になって……まぁ平たく言うと私の養子だね。マリエッタ?」

「はいっ!マリエッタ・ブースタリアですっ!よろしくお願いしますっ!」

「よ、養子!?旅……もしかして、アリサ様とも一緒に!?」

「はいっ、アリサさんには仲良くして頂いてますっ!」


 マリエッタは朗らかな様子でそう答えるけど、ヒナに目つきが胡乱げになっている。

 そういえばヒナはアリサを女神だって言ってたみたいだし……もしかして、自分が崇拝する相手と仲良くしている新顔が気に入らないとか?


「ヒナ、マリエッタは秘書官仲間なのですから仲良くなさいよ」

「秘書官仲間……ってどういうことですか?」

「メラニーから聞いていませんか?貴女は私の専属秘書官に任命されているのですけど」

「いつの間に!?どうして!?」

「たしか貴女が亜光速航行で研修に向かう途中に、私が指名して、ですね」


 アリサは淡々と答えるけど、その話は私も初耳だ。たしかアリサの専属秘書官はテレジアという人だったはずだけど。

 私がそう言うとアリサはこともなげに答えた。


「テレジアはもう老齢ですし、随分と前にギルドを抜けていますからね。私が活動を再開したので、新しい専属秘書官としてヒナを推挙したんです」

「……アリサ様ぁ!!」


 アリサの言葉にヒナが感極まった様子で号泣しながらアリサに抱きついている。

 まぁ、自分が崇拝している相手、でももしかしたら自分のことなんて忘れられていたかもと思っていた相手が、忘れるどころか自分の事を専属の秘書官に任命していたとなれば、そりゃ感激するでしょうね。


「ワタシが専属秘書官……あれ?でも、じゃあ……え?どういうこと?」


 でも、感激していたはずのヒナが何かを思い出したらしく急に戸惑いだした。コロコロと表情が変わるのは見ていて面白いけど……なにか訳ありなんだろうか。当然アリサもヒナの変化に気付いたようで、声を掛けている。


「どうかしましたか?」

「いえ、あの……今回、ワタシは監察報告をお届けする他にもう一つ使命がありまして……その、でも……えっと……」

「……?」


 急にヒナの言葉の歯切れが悪くなった。困惑してるみたいだけど、それはもう一つの使命とかいうのと関係ありそうだね。


「ヒナ、その使命ってなに?」

「……あの、たぶん何かの手違いだと思うんですが……その……統括局局長メラニー・スゥの名前で、アリサ・シノノメ二等管理官と、アイリス・ブースタリア二等管理官のお二人に対して……オラクルXVIIIへの出頭命令(・・・・)が出ているんです」

「出頭命令?帰還要請や召喚ではなく?」

「……はい」


 ミッション依頼等の際に発せられる帰還要請ではなく、出頭命令と来たか……。

 私とアリサはヒナの言葉に目を見合わせた。これは……やはり、スゥ局長が既にスターゲートの一件を把握しているとみて間違いないだろうね。


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