表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部12章『歪な三日月』ヨモツヒラサカ-永獄の惑星
366/541

#10

 そんなナミを見つめていたトワ様がふと何かに気付いたように口を開かれました。


「ナミ。この2人、まだかすかに生きてる」

「……何?」

「コアのC3。少しだけ反応がある。男の人は弱ってる。女の人はすごく弱ってる」

「タケハヤと、サクヤが?真か?」

「嘘つく理由がない」


 トワ様の答えに、ナミは手近なところに倒れていたサクヤという名の女性型機族の前に跪きます。

 うつ伏せに倒れているサクヤは左足の膝から下を失い、背中にも大きな損傷が見えています。ナミはそんなサクヤの体を抱え起こすと、仰向けに体勢を入れ替えました。

 機族の体は女性型でも人間よりかなり重量があります。それを幼女の体で易々と抱き上げるとは……やはり彼女はセレスティエルなのですね。


 仰向けになったサクヤは胸部装甲にも大きなダメージを受けていました。ナミは一瞬悲しげな表情をしたあと、サクヤの胸部装甲を展開します。

 そして……機体内部から取り出したのは、ひびが入り、輝きの鈍った虹色のC3でした。


「うむ……確かにまだ微かに魂の痕跡が残っておるな」


 ナミはC3の輝きを確認したあと、大事そうにそれをキモノへしまいこみます。

 続いてタケハヤと呼んだ男性型機族からも同様にC3を取り外しますが……こちらはひび割れもなく、虹色の輝きもサクヤより幾分強いように見えました。


「7……いや6割というところじゃな。トワよ、感謝するぞ。妾にはこやつらの魂が残っておることは感じられなんだでな」

「うん。でも、時間をおくと魂は消えるって」


 トワ様の言葉にナミは遠い目をしました。

 私は先ほど戦闘後にトワ様が話されていた、この星が機族の製造を司る星であったという推測を思い出しました。


 神産みの神というのが具体的に何をする存在なのかはわかりませんが、機族の母を自称する彼女がここにいること自体がその推測を裏付けているように思います。

 そしてヨモツヒラサカが機族を製造していたのであれば、本来ならこの星には多数のストックボディがあったはず。


「この星に、ストックボディは無いのですか……?」

「ほう、さすがテロマー、博識じゃな。輪廻の仕組みも知っておるのか?」

「ええ、実際に見学させて頂きましたから。それで?」

「あったぞ。幾万幾億の魂の器がな。全て彼奴等に奪われてしもうたが」


 やはり、そうでしたか。

 先ほどの戦いの前、トワ様が言おうとされていたこと……アヴローンの話は、第2世代の機族であってもC3、すなわち魂をインストールする前のボディは侵食を受けるのではないかという仮説を私にもたらしていました。

 そして、今のナミの言葉はその推測が正しかったことを裏付けています。


「あなたは神産みの神なのでしょう?ストックボディに魂を与えることは出来なかったのですか?」

「妾はただの小娘じゃよ。無から魂を産み出すことは出来ぬ。魂の器がなければ、無力じゃ」

「虹色のC3のこと?」

「うむ。あれを生成するにはソレイユの力が必要じゃ。じゃがな、この星におったソレイユの小僧は真っ先に戦死しおった。故に、妾は子を産むことも出来ず、ただ子に守られ、刻を過ごすことしかできなんだ」


 ナミの言葉に、これまで黙って話を聞いていたアイリスさんも会話に加わってきました。


「じゃあ、あなたはソレイユでもエトワールでもない……つまり、リューヌなの?」

「そうじゃ。そういえば主は何のセレスティエルじゃ?」

「私?私は……『アイリス』だよ。古語なら『アルカンシェル』になるのかな?……っとそうだ。そろそろアルカンシェルが到着してるよ。続きは船内で話そう」

「ナミ、荷物ある?」

「妾は身一つじゃ」


 アルカンシェルの名が出たことで、私達は現状を思い出し……取り急ぎこの場を離れる事になりました。



 その後、アルカンシェルへ向かう道すがら、この星には既にナミ以外の生存者がいない事が確認出来ました。


 そのナミ自身も機族達に守られながら冷凍睡眠ポッドで長期間眠り、時折起きては宇宙の状況を確認していたのだとか。

 眠っている間は仮死状態なので惑星を彷徨っている放浪機達は襲って来ないそうですが、彼女が覚醒する度に襲撃があり、戦いを重ねるごとに護衛の機族は倒れていき……最後に残ったのがタケハヤとサクヤだったそうです。

 そしてナミは救助を求めるため、定期的に冷凍睡眠から目覚め、唯一残っていた星外へ届く連絡手段である「狼煙」を上げる装置を作動させ続けていたそうです。


 それが私達が宇宙空間で観測していたバイタルウェーブの正体でしたが、ナミはバイタルウェーブが放浪機を呼び寄せる事を承知の上で、放浪機の目を他の星からそらす意味でも狼煙を上げ続けていたのだとか。

 いつの日か、放浪機ではなく人類の救援がくると……半ば諦めながらも、それでもわずかな希望に縋って。



 その後、広場に着陸、駐機していたアルカンシェルへ乗船し、上空2000m付近まで船体を上昇させたことで私達は少しだけ落ち着くことができました。

 茶を入れ、ラウンジでナミから話の続きを聞くことにします。


「茶なぞ飲むのは何千年ぶりやら……。で、主らが来たということは、我らは戦に勝ったのかえ?」

「戦というのは放浪機との戦いのことだよね?ごめん、私達はペルセウス腕からスターゲートを通ってきたから、オリオン腕の状況はわからないんだ。でも、スターゲート前には船の残骸が無数に漂ってたし、この星へ来る途中にも放浪機らしき艦影を確認して――」

「待て、主ら……ハンターに気付かれたのか?」

「ハンター?」

「星々を巡り、獲物を狩る放浪機の名じゃよ。この宙域にもハンターが徘徊しておる」


 やはりジャンプアウト時に発見した艦影は放浪機だったようです。

 タイミングが少しずれていたら鉢合わせていたのかと思うとぞっとしますが……。


「2光日先を飛んでるところをセンサーで見かけたよ。でも亜光速で遠ざかっていたから探知されてないと思う」

「……ふむ。じゃが、主ら……先ほどネズミと申しておったな?」

「うん、ネズミじゃないけど小動物型の放浪機と戦ったよ。侵食して巨大化してきたけど」

「それはまずいの……。あの小型は我らがシーカーと呼んでおる、放浪機の探査端末じゃぞ?主らの存在は既に放浪機の本船に知られておると見て間違いないじゃろう」

「なら、急いでここを離れよう。まだ4光日離れてるから、今なら追いつかれないはずだよ」


 アイリスさんはそう言ってブリッジへ向かおうとしましたが、ナミが呆れた様子で声を掛けました。


「何を戯けたことを言うておる?彼奴等はショートジャンプで既に戻ってきておるじゃろうよ。星外へ出た瞬間に喰らい付いてくることを覚悟しておくべきじゃ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ