#3
>>Towa
私達が目指した星、ヨモツヒラサカは既に滅亡している可能性が高いとアリサは言った。
アイリスもまた、状況的に滅亡は間違いないだろうと言う。
なら、私が帰るべきところは既に滅んでいるってことだ。
でも、それでも何かが私を呼んでいる気がする。さっきのC3の共鳴波のようなもの……アリサはあれが「囮」のための狼煙のようなものだと言ったけど、それだけじゃない気がしたんだ。
マリエッタとアリサが地表の映像を解析しながら着陸地点の選定を行ってくれているけど、惑星上はどこも荒廃した廃墟ばかりでまともな建造物は殆ど残っていない。
こんな状態ならどこへ降りても同じだろうとアリサはいうけど……。
「さっきの共鳴波、どこから出たかわかる?」
「指向性のない放出でしたけど、センサーで惑星を注視してましたから解析すればわかると思いますっ!
「……ね、共鳴波っていうと普通のC3通信と紛らわしいよね?何か区別する名前でもつけてみる?」
気軽な様子でアイリスがそう言ってきた。たぶん、緊張をほぐすためにあえて気楽にしてくれてるんだろうな。
アイリスの心遣いに私は嬉しくなった。
「お姉ちゃん、優しい」
「え?『お姉ちゃん優しい波』?」
「それは違う」
ツッコミ担当のアイリスがボケてくるのはめずらしい。
もしかしたらアイリスも緊張してるのかもしれないね。でも、さすがにお姉ちゃん優しい波は違うと私も思ったので、別のものを提案することにした。
「バイタルウェーブとか?」
「なるほど、生命を偽装する波長だからバイタルウェーブか……いいんじゃない?アリサ、マリエッタ、それでいい?」
「よしなに」
「はいっ、じゃあアルカンシェルさんにもその名前で登録しておきますっ!トワさんも、これで教授になれますよっ?」
「ザ・イゼン教授ごっこが捗る」
そんな事を言っている間に、バイタルウェーブが放出された場所が特定できたとマリエッタから報告があった。
それは惑星上で最も大きな都市……だったと思われる、瓦礫の街の中央にある、ひときわ大きな半壊した建物と、その周囲に広がる小さな建物の残骸がある場所。
都合の良いことに敷地内に開けた場所があるのでアルカンシェルを直接着陸させることもできそうだ。
「大きな建物だし、位置的に星都の中央官庁か行政府の建物かな?」
「位置的にはそうですけど、あれが行政府の建物なら普通はもっとシンメトリーな構造になっていると思います。みたところあれは拡張性重視のモジュール構造のように見えますし、周辺に規模の小さい建物が複数あるようですから……研究拠点ではないでしょうか?」
「なるほど、ここは『神産みの神』がいる惑星だったっけ。なら……あそこは研究施設であると同時に、人造の神が産まれる神殿でもあるってことかな?」
アイリス達の言葉を聞きながら半壊した建物を見ていた私は、何故かとても悲しい気持ちになってきた。
だってアイリスの言う人造の神が産まれる場所というのは多分セレスティエルが産み出される場所ということで、それはつまり私が産まれた場所である可能性があるってことだからね。
そんな事を考えていると、マリエッタが鋭く声を上げた。
「地表に動体反応ありっ!」
「えっ……生存者!?」
「いえ、これ……機族……です?」
マリエッタの続報は少し自信なさげだった。アルカンシェルのセンサーが捉えた動体反応は2つ。
生体反応が無くて金属で構成されていて……上空からだとまだ詳細はわからないけど、ドローンというよりももっとスリムな人型に見える。
そして映像に映し出されたそれのフォルムはどこか歪な形に見えた。
「アリサ、あれって」
「ええ……おそらく、放浪機に侵食された機族……つまり、放浪機そのものでしょうね」
「マリエッタ、着陸予定地点とその動体反応の距離は?」
「……約5.7Kmですっ!」
「まずいね、それ。間違いなく着陸に気付かれる距離だし、着陸中に接近される可能性も高い。降りた途端に攻撃を受けるかもしれないね」
「臨戦態勢で降りましょう。念のため私達が降り次第アルカンシェルは上空待機させますか?」
「いや、地表で待機させよう。勝てないとわかった時にアルカンシェルが上空だと逃げ場がなくなるからね。マリエッタ、あなたは緊急離脱に備えて船内待機」
「……わかりましたっ。でも、わたし独りじゃ絶対帰らないですからねっ!?」
「私だってこんな星に置き去りは嫌だよ。それにアレを排除したらマリエッタにも同行して貰うよ?」
「はいっ!」
アイリスの考えていることはわかった。初戦で私達が放浪機を凌ぐことができれば、マリエッタが同行していても彼女を守ることが出来る。
でも、もし私達の誰かが倒れるような事態になれば……マリエッタを守る余裕がなくなるからね。だから最初は生身の人間であるマリエッタを留守番させるのは正解だ。
その後、私達は戦闘に備えて準備をした。
アイリスはブラスターとフェイザーの二丁装備。ブラスターはアイリスの要望で以前故郷で放浪機を倒した時に使った紅紫、高威力貫通仕様に再調律しておいた。
アリサはツクヨミとレゾナンスブレードの二刀流。うん、2人とも本気だね。
私はレゾナンスシールドに加えて今回はブラスターも持って行くことにした。私が撃っても当たらないだろうから、アイリスが弾切れになった時に渡すための予備としてだけど。
そしてイグナイト……今回は朱と蒼を2つづつ用意して、グレネード型の朱をアイリスに、停滞フィールド型の蒼をアリサに渡しておいた。2人の戦闘スタイル的にそれがベストだと思ったから。
イグナイトは元々、いつか放浪機と戦うことを想定して開発したものだけど、まさか本当に放浪機と再戦する機会が来るとは思ってもみなかった。
通用するんだろうか、イグナイト……。
「じゃあ作戦確認。私達の目的は放浪機の殲滅じゃないから、生存を図ることが最優先事項だよ。倒せないとわかったり、負傷した時点で即座に撤退。誰かが撤退指示を出したら異議を挟まずにまずは撤退すること。無理だと思ったら躊躇わずに撤退指示を出すこと」
「はい」
「わかった」
「次点の優先事項は対放浪機の戦闘データ収集だね。いつか私達のところへ放浪機が来るかもしれないからね。集められるデータは集めておく」
アイリスは口にしないけど、きっと私達がスターゲートを開けたせいで故郷が放浪機の襲撃を受けるリスクを作ってしまったことに対する償いという意味もあるんだと思う。
「なら有効打を与えることができても、同じ攻撃を繰り返すのではなくて他の攻撃を試した方が良いですね」
「でも、最優先事項は私達の生存だからね?アリサ、無茶したらダメだよ?」
「もちろんですよ。私の中にはトワ様から頂いた血が巡っているんです。そんな貴重な血を流してたまるものですか」
「わたしっ、戦闘には参加できませんけどデータは完璧に取っておきますっ!で、提案なんですけど、プローブを2機ぐらい設置していいですかっ?」
「プローブ?」
「はいっ!定点観測装置代わりに使えば得られる情報が増えますし、戦闘後は周辺監視や索敵にも使えますっ!」
さすがマリエッタ。宇宙用のプローブを定点観測装置につかうという発想の転換はさすがだね。アイリスが提案を承認したことで、プローブの配置も決まった。
これで準備は完了。さぁ、戦いの時間だ。




