#12
それにしても……ずっとみていると、この場所がとても寂しく、悲しい場所だと言うことが改めて実感できた。恒星からも遠く薄暗い宇宙空間。無数の船の残骸。
アリサはここで虐殺が起きたと言っていたけど……一体どれだけの人がここで亡くなったんだろうか。そんな事を思うと、私は無意識に弔いの言葉を口にしていた。
「魂の輝きが、永遠に水晶に宿りますように」
『『『魂の輝きが、永遠に水晶に宿りますように』』』
私が弔いの言葉を口にしたあと、しばらく間を置いて、アイリスと、アリサと、マリエッタの声が聞こえてきた。
死者を悼む気持ちはみんな同じ。そして、こんなことをする放浪機が許せないと思った。
『トワ、戻ってくる前にもう一つだけお願いしていい?エアの残量、問題無い?』
「うん。大丈夫。何?」
『そのプローブ、後ろを向けた状態で、アルカンシェルの少し下方向へ置いてきて欲しいの』
「置いていくの?」
『もともとそのプローブは使い捨てだからね。でも定点観測用に置いておけば、私達がいない間に誰かが通ったかどうかわかるでしょ?』
「なるほど。わかった」
さすがアイリス。こういうときも抜け目がないね。私はアルカンシェルの船底側へ回り、カメラを後方に向けた状態でプローブを手放した。
……うん、ちゃんと静止してるね。
「プローブ設置完了」
『お疲れ様!じゃ、戻ってきて。座標測定の補正ももうすぐ終わるみたいだから』
「わかった」
クロノメーターでみると船外活動時間は70分を超えていた。エアの残量もいつの間にか30%を切っていたけど……今回は何事も無くEVAを終えられたようだ。
ハッチからアルカンシェルのエアロックへ入って命綱を外し、エアロック内に空気が満ちたことを確認して私はエアフィールドを解除した。
呼吸はできるけど、ちょっと息苦しいんだよね、これ。それに……ほんの1時間ぐらい無重力の所にいただけなのに、船内の重力で体が重く感じた。これ、順応性が高いっていうことなのか、体がなまってるのかどっちだろう。
そんな事を思いながら船内側の扉を開くと……いきなり小柄な人影――というかアイリス――に抱きつかれた。
「トワっ、大丈夫?怪我とかしてない?息苦しくない?」
「大丈夫」
「ホントに?ああ、トワ可愛い。トワ大好き!」
どうやらアイリスの『絆』が暴走してるらしい。別に私、危険なことをしてきたわけじゃないんだけどな……。
そんな事を思いながら、私はアイリスに可愛がり倒された。
アイリスに手を引かれてブリッジへ向かうと、今度はアリサに思いっきり抱きしめられた。私の姉達、やっぱり過保護だよね?
しばらくアリサに抱きしめられたあと、ふと見るとマリエッタも私の方を見ていた。
「マリエッタ、ハグする?」
「は、はいっ!お疲れ様でしたっ!」
アイリスとアリサもハグしたんだから、マリエッタだけのけ者にはできないよね。私的にはマリエッタは妹分だと思ってるから、私の方からハグを求めてみた。
うん、これは間違いなく姉ムーブだよね。
そんな事をしている間に、アルカンシェルが天測データを元に現在位置を特定してくれたらしい。そして、アルカンシェルに記録されているこの宙域の星図――G17の百科事典からピックアップできた惑星の座標を使った暫定的なやつ――に表示する。そして現在位置からアルカンシェルのジャンプ可能エリアを重ね合わせると、ジャンプ可能エリアの中に入った星は3つ。そして……ラッキーなことに、その中の一つが私達の目的地、ヨモツヒラサカだった。
「一度のジャンプで辿り着けるのは助かるけど……これ、偶然かな?」
「50パーセクほど離れていますし、最寄りの星系という訳ではないですよね。なら、偶然ではないかと思いますが」
「そうだよね。考えすぎか。ま、オリオン腕の反対側にあるって言われるよりはよっぽどマシだよね」
「アイリスさん、トワさんの天測データを元にデブリ帯が一番薄い方向確認できましたっ!方向転換して、そちら側へゆっくり移動すれば40分ぐらいで無傷のままデブリ帯から抜けられそうですっ」
マリエッタの報告を聞きながら、私はゲートから出る前にお風呂に入ろうと思っていた事を思い出した。
「ジャンプまでの間にお風呂入る」
「トワ様、じゃあ私も……」
「アリサは後で。ちゃんと操船してね?」
「そんなっ!混浴タイムが……それに、操船はアルカンシェルがぁ!」
アリサの悲鳴を聞きながら、私は独り檜風呂へ向かった。うん、お風呂の分の責任は果たしたからね。
ゆっくりとお風呂に入らせてもらってもバチはあたらないだろう。
今回はもう1話、続けて更新を行っています




