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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部11章『彼方へと続く門』スターゲート-還遠の星門
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#11

>>Towa


 ヨモツヒラサカの座標はわかっているからジャンプすれば問題なく辿り着ける。そう思っていたんだけど。

 アルカンシェルにFTL航法の指示を出した私達は思ってもみなかった状態に陥った。


[FTL Unavailable.]

[Reason: Current Location Unknown.]


「アイリス、これどういうこと?」

「表示されてるのは現在位置が不明だからジャンプドライブが使えないってことだけど……」

「あっ、もしかしてっ!」


 私とアイリスが初めて見る表示に首をひねっていると、マリエッタが声を上げた。


「アルカンシェルさん、FTL航法……ジャンプって、出発地点と目的地の二点がわからないとジャンプできない仕組みですかっ!?」


[Affirmative.]


「どういうこと?だってアルカンシェルはゲートを超えても位置情報がわかるって……」

「それがですね、実はさっきから位置情報が安定しないんですっ。一応、ある程度の範囲内で数値変動してるんですけど……周りにデブリが多いし、観測できる基準データもないから位置が確定できないんじゃないかとっ」

「つまり目的地だけでなく出発地点についても正確なデータが無いとジャンプできないということですか?」

「はいっ、そうだと思いますっ!たぶん、しばらくこの宙域を飛び回れば観測データも集まるから現在位置の特定も出来ると思います……けど……」


 マリエッタの言葉は尻つぼみになった。うん、この周辺には放浪機がいる可能性があるから、飛び回っていると注意を引いて攻撃される可能性があるよね。

 でも、このままここからはジャンプが出来ない。

 あれ、これ手詰まりってじゃない?私にはどうしようもなくて、アイリスも、アリサも、マリエッタも難しい顔をしている。なら頼れるのは……。


「アルカンシェル、どうしたらいい?何か方法ない?」


[Of Course, Mam.]

[360-Degree Celestial Measurement for Location Correction.]


「360度天測で位置補正が出来るの?」


[Yes, Mam.]

[Using Astronomical-Observatory Behind Bridge.]


「げっ……まさか」


 アルカンシェルが表示したメッセージを見たアイリスが変な声を出した。お姉ちゃんがそんなカエルみたいな声を出すなんて珍しい。 でも、これどういうこと?天体観測室……?ブリッジの、後方……あれ?


「もしかして……いえ、もしかしなくても……檜風呂のあるところ、ですよね?」

「ま、まぁ……檜風呂にした時点で、天体観測機器はもう積んでなかったけど……」


 もしかして、私が要らないからって売り払った天体観測機器、今使う必要がでてきたってこと?

 星の観測なんかしないと思って降ろしちゃったんだけど……。


「あの。ごめん」

「いや、トワは悪くない……っていうか、これトワの船だから私に謝る必要ないよ?」

「でも風呂にした」

「まぁ、お風呂は大事だから……ね?」


 アイリスは慰めてくれるけど、私とんでもない事をしちゃってたみたいだ。

 せっかくアルカンシェルが打開策を提案してくれたのに、私のミスでそれが使えないなんて。私が後悔と絶望に陥りかけた時、アイリスが言った。


「大丈夫だよ、トワ。まだ方法はあるから。マリエッタ?プローブのセンサーを観測機器代わりにして天測出来る?」

「できます……けど、360度を観測するには射出数が足りないですっ」

「射出しなくていいよ。プローブを手持ちの観測機にして、EVAしながら船外をぐるっと回ればデータが取れるでしょ?」

「それは……できそうですけどぉ……」

「じゃあ、そういうことで。マリエッタ、データの取得お願いね。私、ちょっと行ってくるから――」

「ダメ」


 アイリスがそう言って席を立とうとした。

 でも、私はそれを押しとどめた。

 だって、これは私のミスだ。なら、責任を取るのは私だ。それに、ここへ皆を連れてきたのは私だから。

 少しでも危険のあることは……私が引き受けるべきだ。


「トワ?」

「私が、行く。これは譲らない」

「……観測機器を処分した責任とろうとか思ってる?」

「思ってる。けど、それだけじゃない」


 アイリスは私の言葉を待ってくれている。私の口は……私の想いをちゃんと伝えてくれるだろうか。


「私が、この旅を決めた。だから、これは私がしないといけないこと」

「でも、危険だよ?」

「それはアイリスも同じ。それに、私には……これがあるから」


 そう言って私は左手に付けたレゾナンスシールドを示した。正直、宇宙船の残骸みたいな大きなものをこれで防げるかどうかはわからないけど……それでも、何も身を守る術が無いよりは格段にマシだから。


「アイリス。信じて」

「……わかった。でも、無理はしないでね?」


 アリサとマリエッタは何も言わなかった。2人も心配してくれているけど、アイリスがいいというなら口を挟むことはない……って思ってるんだろうな。

 うん、全員を説得するのは大変だから、その方が私としては助かる。


「じゃあ、行ってくる」



 エアロックから外へ出ると、思ったよりも大変そうな光景が目に入った。回り、デブリだらけだよね、これ……。アルカンシェルが広めにレゾナンスフィールドを展開してくれてるから、私の近くまでは流れてこないけど。

 ……無数のデブリが宇宙を漂い、互いに衝突し合いながら複雑な軌道でうごめいてる。なんとも気持ちの悪い光景だ。


『トワ、プローブの切り離し完了したよ。船体の下に回ってキャッチできる?』

「わかった、やってみる」


 アイリスの声が通信機から聞こえる。外を眺めるのは観測中にでも出来るし、そろそろお仕事に行こうか。

 そういえばこうやって本格的にEVAしたのは初めて宇宙にでた際にキャメル067の推進器を宇宙空間で再調律した時だっけ。

 あれ以来、何度かこうやって宇宙に生身で出た事あるけど……そういえばあの時、酸欠になって死にかけたんだっけ。あれ?ひょっとしたら私……あの時も実は死んでて、リブートしてたのかも?

 アイリスがかなり心配する状況だったらしいし、ひょっとしたらそうなのかも。もしかしたら私の残機って思ってるよりも少ないのかもしれないね。


 そんな事を思いながら、アルカンシェルの船底へと回り込む。

 周囲を見回すと、いつもは何も無い筈の船底に三つの箱が取り付けられていて……そのうちの一つから、丸い無人探査機(プローブ)が漂い出ていた。

 ケーブルは付いてないから、無線タイプみたいだけど……そっか、私が付けてる命綱と絡まるとややこしいから無線にしてあるんだね。でも、ケーブルが繋がってないということは、下手に力を加えるとどこかへ飛んで行ってしまうかもしれない。

 私は慎重にプローブへと接近し、優しく抱きとめる。うん、ちゃんとキャッチできた。


「アイリス、プローブをキャッチした」

『じゃあ、さっそくで悪いけどアルカンシェルからみて下側の方向へプローブのカメラを向けてくれる?』

「わかった……カメラを向けるというより、私がそっちを向けばいい?」

『そうだね。抱えた状態でトワがそっちを向いてくれたらいいよ。マリエッタ、データ取れてる?』

『はい、えっと……もう少し、トワさんから見て右方向へカメラを振って貰えますか?デブリが邪魔で少し……あ、いけましたっ!』


 アイリスとマリエッタの指示に従い、カメラの向きを調整する。デブリが動いているから、私も小刻みに角度を変えながら、下向きの観測をしばらく行い……そしてOKがでた。


『じゃあ次は後方……だけど、アリサ、後ろどうなってる?』

『ゲートが開いてますから、あまり近づかない方がよいかと。それに後方側には星、殆どありませんよ』

『そっか、じゃあトワ、後ろはいいから……船首から見て右側の横方向お願いできる?』

「わかった」


 そんな感じで私はアルカンシェルの上下左右で観測を行った。

 といっても観測するのはプローブとそれをコントロールしてるマリエッタで、私はカメラを指定されてる方向へ向けてただけだけど。

 アルカンシェルの後方は星が無いから観測不要、前方はアルカンシェル本体のセンサー類で測定できるから、最後に上を観測した時点で私の船外ミッションは終了だ。


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