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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部11章『彼方へと続く門』スターゲート-還遠の星門
342/354

#1

>>Iris


 フルーツ牛乳を買いに行くというマリエッタをリュミエールで送り出し、私達はそのまま惑星へと接近、寄港する事になった。

 目的地は工業惑星リュックラセ。ここは星域の最辺境に位置する文明圏外縁部だけど、辺境によくある未開の惑星ではない。まるで中心星域のように……いや、それ以上に文明が発達した星だ。


 もちろん辺境であるのに文明が発達しているのには理由がある。このリュックラセは人類が銀河に版図を広げた最初期に入植を行った、最古の入植惑星のうちの一つに数えられる歴史ある星だからだ。

 この事はスクールで習う人類史にも当然記載されている。つまりここは辺境でありながらも銀河的に有名な星の一つということだ。


「アイリス、この星、辺境なのになんでこんなに栄えてるの?」

「えっと、トワ?スクールで習ったよね?ここ、あのリュックラセだよ?」

「よっこらせ?」

「それ、お年寄りのかけ声だよね?っていうか、ちゃんと人類史の勉強した?」

「興味ない科目は聞いてなかった」

「……だよね。知ってた」


 まぁ、中にはトワのみたいな例外もいるけど、もちろんアリサもマリエッタもリュックラセの事は知っていたし、オリジンスターがスターゲートの彼方にあると考えている私達にとっては、最古の入植惑星であるリュックラセ(ここ)がスターゲートに最も近い惑星というのは、納得の行く話でもあった。


 それはさておき、マリエッタが帰還するまでには最短でも48時間は必要だから、ここでしばらく滞在してあの子を待つ必要がある。

 なので、私達……というか、私とアリサは手分けをして物資の手配を行う事にした。


 トワは足の傷が癒えかけているけど、まだ傷跡が見えるのでもうしばらくはアルカンシェルでの待機を申しつけておいた。

 もの凄く不満そうな目をしていたけど、アリサに「私の時は3週間でしたよね?」と言われると黙って従ったけど。



 スターゲートの向こうがどんな状態になっているかわからない以上、現地での物資調達は不可能だと考えておいた方がいいだろう。

 宇宙空間に浮かぶ氷塊が見つけられれば水や酸素を手に入れることは出来るけど、食料や補修用の物資、エアフィルタ類についてはそうはいかない。それ以外にもフォトンバッテリーやブラスター用のカートリッジなどの消耗品や医薬品等も多めに仕入れておくべきだろう。

 幸いにも船倉に鎮座していたブリギッタはリュミエールに搭載できたので物資を積み込むスペースは確保できている。船倉を満杯にする必要はないにしても、必要なものについては150%……いや200%の充足率を目指して補充しておくべきだ。


「アイリスさん、ちょっといいですか?少しお高いですが、良さそうなものを見つけました」

「何?必要なもの?」

「ええ、おそらく。ほらこれ、無人探査機です」


 アリサがアルカンシェルのホロディスプレイに表示したのは、プローブと呼ばれる使い捨て型の小型無人探査機だった。

 確かに未知の領域へ向かうなら探査機があった方が良いのは間違いない。リストに表示されているものは船外に固定できる保管兼射出ユニット本体と、プローブが3機セットになったモジュールで、何セットかが売りに出されている。

 価格は……個人で買うには少々お高いね。


「うーん、結構値が張るね……」

「お安いのもありますが、取得できるデータ種類と探知レンジが随分短くなるんですよ」

「価格を取るか、情報を取るか……なら、考えるまでもないか」

「ええ、ティンバリスでお金を惜しんだ結果を見てきたところですからね」


 アリサの言葉に、ジョイナーギルドが初期の探索コストをケチったせいで面倒な目にあっていた事を思い出し、私は苦笑した。

 あの後、ジョイナーギルドが結局どうしたのかはまだわからないけど、いずれ機会があれば状況を確認してみてもいいかもしれない。私達全員がアルカンシェルで出向かなくても、リュミエールで誰かに見てきて貰えばいいわけだし。


 それはさておき、問題はいくつ無人探査機を購入するか、だ。

 私達はギルドの幹部なので相応の給料は貰っているし、トワがC3を調律することで高額な報酬も貰えている。なので資金的な余裕はそれなりにあるけど……。


「では、こういうのはいかがですか?お高い無人探索機を1ユニット。お安い無人探索機を2ユニット。合計3ユニット、プローブ9台です」

「なるほど、ハイローミックスってやつだね。確かに使い捨てのプローブを全部高価なものにする必要は無いし、ある程度数を揃えておいて使い分けた方がベターかな」

「ええ、そういうことです。これなら高級機1.5ユニット分のお値段で済みますから」


 これがギルドの公式任務なら必要経費だと主張して全部高級機で揃えることもできるんだろうけど、今回のはあくまでも私達の私的な好奇心……と、トワの為の探索行だからね。

 削減できるコストはしておいた方がいいだろう。なので、私はアリサの提案に同意して無人探査機の購入を決定した。


 プローブユニットの取り付けは業者に任せておけばいいし、一通り必要な物資の手配と搬入も目処が立ったから、私はアリサと連れだってそのままリュックラセの地表へ降りる事にした。

 トワには内緒だけど、むろん遊びに行くわけじゃない。スターゲートについての情報を収集を試してみようと思ったんだ。


 ネットワーク経由での情報探索はその道のエキスパートであるマリエッタが戻り次第任せることにして、私とアリサはネットではない情報源……すなわち人に直接聞くという手段をとることにした。

 私がギルド支部へ、アリサはリュックラセのアカデミーへ。午前中に出発し、それぞれ手分けして情報を収集しら日没前に軌道エレベーターで合流。半日もあれば多少の情報が集まるだろう。

 そう思っていたのだけど。


「……どうだった?」

「まるでダメですね。アイリスさんの方は?」

「こっちも全然ダメだったよ」


 なんと、スターゲートに関する情報は一切手に入らなかった。

 もちろん、スターゲートというものの存在は皆知っている。だが、それが実在するということや、どこにあるのか、またどんなものなのかという情報が全く出回っていないのだ。


「アカデミーの天文学者でも知らないってことは、この星にはスターゲートの位置を知ってる人はいないってことだよね?」

「ええ、おそらく。ギルドの管理する情報には含まれていたはずですが、ギルド支部でも……?」

「うん、支部長まで呼び出して確認したけど……あれは隠してるんじゃなくて、本当に知らない感じだったよ」

「ですが、ギルドネットにはスターゲートの座標情報がありましたよね?」

「うん。あったね。でもあの情報のセキュリティクリアランス、確認してなかったよね?」

「……そういえば、普通に表示されていたので確認しませんでしたが……もしかして?」

「たぶんあれ、ギルド秘なんだよ。しかもかなり秘匿レベルの高い」


 私もアリサも二等管理官というギルドの高位幹部としての身分を持っているから、ギルドの管理下にある情報についてはかなり高いレベルの……というより、ほぼ無制限に情報にアクセス出来る権限がある。

 スターゲートについては民間レベルでも時折話題に出てくるものだったから機密扱いではないと思い込んでいたんだけど、もしかするとそれは私達の勘違いで、実はあの情報はかなり秘匿性の高いものだったのかもしれない。

 いや、そうでないと情報がここまで出回っていないことに説明が付かない。


「近くにあることすら知らないというのはかなり念入りな情報統制ですよね」

「まぁ近いと言っても5パーセク近く離れてるし、座標情報から考えるとスターゲートがあるのは辺境域よりもさらに外側だからね。狙って探査船でも飛ばさない限り見つからない所だと思う」

「オンブルの件と併せて考えるまでもないですが、メラニーの仕業ですよ、これ」


 つまり、情報を隠蔽しておけば、偶然見つかる可能性が低いということだ。なら、どうしてスターゲートの存在自体は広く流布されているのかという問題があるけど……さすがにそこまでは私達にもわからなかった。

 そして、スターゲートの情報隠蔽がスゥ局長の手によるものというアリサの見解に、私は異を唱えるつもりも無かった。


「ねぇアリサ、私達がスターゲートを目指してること……スゥ局長にバレてるかな?」

「間違い無くバレてるでしょうね。だってアイリスさん、ギルド支部で話を聞いたんでしょう?」

「そっか、私がリュックラセにいて、スターゲートの話を聞いてる時点で筒抜けか」

「諜報部の連中が襲いかかってこないことを祈りましょう。彼らが無駄死にしないために」


 そう言って微笑むアリサの表情は、まるで血に飢えた獣のようだった。

 とんでもない美人が浮かべる好戦的な笑みって、ビジュアル的には映えるんだけど……でも、軌道エレベーターに同席している他の人達がびびりまくってるよ、アリサ……。



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