#12
>>Towa
寝て、起きて、お腹が空いた私はまだ少し痛む足を引きずりつつラウンジへ向かった……けど、アイリスに捕まってベッドへ連れ戻された。
でもお腹が空いたので、今度はキッチンへ向かった私はアリサに捕まってベッドへ連れ戻された。
お腹は空いたままだったけど、シャワーを浴びてなかった事に気付いた私はシャワールームへ向かった。けど、今度は部屋を出たところでマリエッタに見つかってアイリスとアリサを呼ばれた。
むぅ、自由が無い。
「トワ、足を引きずらなくなるまではベッドから出たらダメ」
「そうですよ、トワ様。寂しいなら私が添い寝を……」
「それは却下だからね、アリサ」
「じゃあ、話し相手にブリギッタを連れてきますっ!」
「いや、あれ喋れないでしょ?ともかく、トワは大人しく寝てなさい」
心配されてるのはありがたいけど、もう少し自由にさせて欲しい。足だって2、3日もすれば元通りなのに。
私はそう主張したけど、全員からダメだと否定された。なら……せめて食べ物が欲しいと主張してみようか。お腹空いたし。いや、どうせなら食べ物よりもフルーツ牛乳の方がいいかな。
「フルーツ牛乳3本で手を打つ」
「飲み過ぎだよね?お腹ゴロゴロ言うよ?」
「セレスティエルのお腹は無敵」
「……マリエッタ?」
「ごめんなさいっ、昨夜私達が飲んだので最後ですっ……!」
「嘘っ、トワの分は?」
「えっと、あの3本で最後で……」
何という事だろう。私がベッドで寝ている間に、アイリス達は最後のフルーツ牛乳を飲んでしまっていた。
そして、アルカンシェルの船内には既にフルーツ牛乳は存在していない。この悲しみを紛らわせるには、買ってきて貰うしか無い。
「買ってきて」
「えっと、近くに牛乳スタンドもお店も無くてぇ……」
「買ってきて」
「あ、アイリスさん~!」
「……仕方ないわね……。リュミエールの往復航行試験もしないといけないから、それを兼ねて、フルーツ牛乳の買い出しでも行ってこようか?」
「あ、ならマリエッタがっ!ブリギッタと一緒に行ってきますっ!」
「ペット連れでお使い?」
「いや、ブリギッタはペットっていうよりも守護者でしょ……」
今アルカンシェルが停泊している最寄りの惑星は工業惑星で、牛乳……というか、酪農という産業自体が存在しないらしい。
なのでマリエッタが2.7パーセクぐらい先の手近な農業惑星までフルーツ牛乳を仕入れに行ってくれる事になった。なんでもその惑星ではコーヒー牛乳というのもあるらしい。楽しみだ。
そしてマリエッタが買い出しに行っている間にアルカンシェルは最寄りの惑星へ寄港してフルーツ牛乳以外の消耗品を補充することになった。
スターゲートの彼方へ向かうための準備を整えるのだとアイリスは言っている。そっか、私達はいよいよスターゲートを超えるんだ。
諸々の準備のためにアイリス達が部屋から出て行った後、私はベッドに横たわったままローヴがくれた剣……の残骸を取り出した。
ローヴが本当に存在したのかどうかは疑問だとアイリス達は言っていたけど、私は確かにローヴに出会ったし、一緒に戦った。なによりも傷の痛みがあの戦いが現実のものだったと私に告げている。
彼はエコーを助けることが出来たんだろうか?今頃二人で幸せに暮らしてるんだろうか?
それは私には判らないけど……きっとこの剣が朽ちていることが、二人の幸せを証明してるんだ。
私は悖理の剣に、二人が幸せであって欲しいと強く想ったんだから。
――微睡みの中、白い霧のようなもやが掛かった視界の中で、悖理の剣が仄かに輝きを放ち、虚空を照らしたように思いながら……私は眠りに落ちた。
トワが経験した不思議な「物語」はこれにて終了です。
次回から全3回でマリエッタが主役の幕間『ブリギッタ、オンステージ!』をお届けします。
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