#14
>>Towa
「G17、まだ聞こえる?」
『はい、セレスティエル・トワ。航海の無事を祈ります』
「色々とありがとう。また、会える?」
『私が機能を維持している間であれば。お早いお越しをお待ちしています』
「重力アンカー、大事にして」
アルカンシェルが出航し、第1037技術開発拠点から少し距離が離れた頃。私はふと思い出してG17に声を掛けてみた。
既に後方にあったはずの小惑星はクローキングデバイスでその姿を隠蔽していて、肉眼でもセンサーでも捉える事はできない。だけど、まだ通信だけは届いたようだ。
重力アンカーが壊れていて漂流していたG15にはもう二度と会えないだろうと言われたけど、G17とはまた会えるらしい。
G15……今はどこを漂流してるんだろう。彼女の妹に会ったっていう話をしてあげたいな。
「しかし、驚きの連続だったよね」
「ええ、まさかこんな所にまでギルドの……いえ、メラニーの手が及んでいたとは」
「スゥ局長、ますます謎が深まるばかりだよね」
アイリスとアリサはそんな事を言っている。
マリエッタはG17からもらったエクソギアの技術資料を見るのに夢中だ。アルカンシェルに手伝って貰って、現代技術の移植を目指すといっていた。
面白そうだから、私もあとで見学させて貰うことにした。
そういえば実は私もG17に頼んでいくつか「失敗作」を譲って貰ってたんだ。残念ながら手持ち式のグラビティカノンは無かったけど他にも面白そうな……でも使えなさそうなものは色々とあったから。暇なときに弄ってみよう。
「トワさん、船倉へ行きませんかっ?G17さんが積み込んでくれた荷物、確認したいですっ!」
「わかった」
「あ、マリエッタ、船倉へ行くなら悪いけどついでに積み込んだ品の目録作っておいてくれる?」
「はーいっ!」
マリエッタに誘われて私も船倉へ向かうことになった。
ブリッジを出る際にアイリスが依頼してきた目録作りは……うん、マリエッタに頼んでたから私は手伝わなくてもいいかな。私、こういう細かいチェック作業苦手だし、手を出すとマリエッタに余計な手間を掛けそうだしね。
乗船時にもちらっと見たけど、船倉の一番手前にはエクソギアが格納されていた。人の上半身みたいなデザインだから、座しているというより上着がハンガーに掛かってるような感覚だよね。
近くの壁際にはいくつかのコンテナ。私が頼んだものはどれに入ってるんだろうか。
「トワさん、先に目録作っちゃいますから、コンテナ開けるの手伝ってくださいっ」
「わかった」
まぁ、コンテナを開けるぐらいなら私にでもできるだろう。
積み重なっているコンテナを開けやすいように船倉に平積みし、一つ一つ開封していく。大きいコンテナに入っているのは機械部品……たぶん、エクソギアの補修部品だろう。
「わっ、これマッスルシリンダーですかっ?すごい、こんな精緻で強力そうなのは見たことないですっ!」
「こっちは?」
「あれ、これ頭部ユニットですよね……スペア?ううん、これ……トワさん、このソケットもしかして」
「C3ソケット?」
「ですよねっ?わぁ、この子C3対応モジュール付いてるんだっ!これならわたしでも制御ソフトウェア作れそうですっ!」
マリエッタは部品を確認する度に歓声を上げている。
次に開けた小さな箱は……あ。これ永久保存食だ。
そういえば施設で一つ試食したけど、心なしかお腹がゴロゴロしてる気がする。G17は消化できないかもしれないって言ってたけど、食べ物なんだから大丈夫だよね?
箱のサイズ的には……私が食べたものが1食分だとすると、200食分ぐらいあるかな。
「これ、食品サンプルみたいな食べられないやつですよねっ?目録に載せておいた方がいいのかなぁ……でも、載ってないと処分の検討もできないですよね……」
マリエッタは食べ物を処分するという、とんでもない事を言っている。処分されそうになったら私の私室へもっていって保管しておこう。
次のコンテナは細長くてやたら重かったやつだ。中身を見ようと思ったけど、コンテナを開放するための把手が無い。どうやって開けるんだろう、これ。
「あれ、これっ……もしかして……」
「マリエッタ、これ何?」
「これコンテナじゃないですよね、たぶんっ。これで単独のユニットというか……でも、この大きさだと……ひょっとしてっ!」
マリエッタはそう言うと、船倉の壁に取り付けられている通信端末へと走って行った。
小声でなにかを話している声が聞こえてくる。話し相手は……G17かな?まだ通信圏内だったのか。
「……れ、アイリスさんが……こうし……って言ってた……」
『……すが、必要……勝手に……ありません』
「……でも内緒……わかりました……」
しばらくすると、うつろな目をしたマリエッタが戻ってきた。なんだろう、聞いちゃいけない話だったんだろうか。
でも、聞かなかった振りをするのも違う気がしたから、一応話を振ってみることにした。
「今の、G17?」
「はひっ!?き、聞こえてたんですかっ!?」
「セレスティエルは耳が良い」
「良すぎですっ!あんなに声を潜めてたのにっ」
「で、何が勝手で、何が内緒?」
「うひゃぁ、内容までバレてますっ!?」
「こうしって言ってた。つまり、フルーツ牛乳関連?」
「光子……子牛……ああ、そういう……。えっと、まぁそんな感じのものですっ!」
「古代の牛乳?飲めるの?」
「飲めませんっ!だから、アイリスさんには内密に……」
「良くわからないけど、わかった」
「どうしよう、廃棄したほうがいいのかなぁ……」
「マリエッタ、食品廃棄は良くない」
「うう、捨てることも出来ないんですねぇ……」
そういえば子牛の後に魚類って言ってたような気もするし、G17が贈り物として保存食の詰め合わせを搬入しておいてくれたのかもしれないね。
アイリスには内緒らしいけど、あとでマリエッタにコンテナの開け方を聞いておこう。
「でも、わたしは……必要だと思うんですっ。大事な人のために。だから、ごめんなさい……」
次のコンテナを開けていると、マリエッタが小さく呟くのが聞こえた。けど、なぜか今の言葉は聞かなかった事にしておいたほうが良い気がした。
「……ってトワさんっ、それ、フレンドリファイヤじゃないですかっ!」
「手持ちグラビティカノンの代わりに貰ってきた」
「撃てればなんでも良かったんですかっ!?……え、そっちのは?それ、展示されてなかったですよねっ?」
「確か『インターなんとかター』」
「なんですかっ、そのなんとかター!って、かけ声みたいなのはっ!」
ちょっと暗い表情だったマリエッタが笑顔になったので、私は安心し……先ほどの小さな出来事は心の奥にしまい込んだ。
――新しい力と、小さな隠し事を載せて、アルカンシェルは星空を往く。スターゲートの彼方を目指して。
第2部9章はこれにて終了です。
今回はいわゆるパワーアップ回ですが、トワ達一行にとって最大のパワーアップは……やはり檜風呂でしょう。
物語世界の真相も明らかになり、第二部もそろそろ山場へと向かいますが、
次回からはアルカンシェル船内での日常生活を描く幕間「アルカンシェル24時」を全3回でお届けします!
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