表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部9章『ホーム・リフォーム』第1037技術開発拠点-残技の衛星
321/368

#12

>>Iris


 程なくしてG17がアルカンシェルのメンテナンスが完了したと報告してきた。

 見るとマリエッタが持って行くと言ったエクソギアなるメカもいつの間にか搬出されている。一瞬、トワが余計なもの――例えば惑星破壊爆弾――を持って行くと言い出していないか気になったけど、件の爆弾は展示されたままだったので安心した。


 ドックへの案内は小型のドローンが先導してくれた。トワが言うにはG15の管理する施設では半壊した清掃ドローンぐらいしか動くものが無かったそうだけど、この技術開発拠点では作業用ドローンの類いは複数稼働していた。

 ただ、繊細な作業を行う保守管理用のドローン群が機能を停止しているそうなので、施設もドローンも、遠からず徐々に機能を停止していく事になるのだろう。


「ねぇG17。メンテナンス用のドローンって復元したり再生産したりできないの?」

『ドローン自体の製造は可能ですが、保守管理を担当する人工知性体R07が機能を停止しています。そのため運用が行えません』

「担当が違うって事か……。どこかで保守管理担当の知性体を見つけて、コピーしてきたら使える様になる?保証は出来ないけど、見つけたら連れてくるけど」

『はい。ご厚意に感謝いたします』


 私がそう申し出たのはユニークなメンタリティを持つ彼女(G17)に対する愛着を感じ始めたというのもあるけど、この施設はアルカンシェルのメンテナンスが出来る貴重な拠点だからだ。ここを維持し続けることは私達の利益にも繋がるからね。

 とは言え、保守管理担当の知性体なんてどこにるのか……機族を連れてくることで代用できたりするんだろうか?今度カルティアに連絡することがあれば、彼女に相談するのもありかもしれないね。



 航宙船用のドックは施設の地下……小惑星の内部に位置していた。開発拠点だけあって複数の船舶に対して作業が出来るだけの広大な空間が確保されているけど、あいにくと停泊しているのは私達のアルカンシェルだけだ。

 状態のいい中古の航宙船でもあればアキラに送ってあげるんだけど……なんて取らぬ狸の皮算用をしていたけど、そう上手くはいかないようだ。


 ドック内に静かに停泊しているアルカンシェルの姿が視界に入ると安堵した気持ちになるのはこの船がいつの間にか私達の家になっているからだろうか。


 既に整備用のドローンは撤収しているようで機体周囲に動くものはない。

 船首の脇に大きめのコンテナが置かれているが……あれは補修部品でも入っていたのだろうか?そんな事を思いながら、ふと見やるとアルカンシェルの艦首形状が見慣れた双胴型から一体化した流線型に変化していた。どうやら既にリュミエールがドッキングしているらしい。


「いや、あんなにぴったりとはまるとは思ってなかったよ。むしろこの状態が本来の形だったのかもしれないね」

「フィット感抜群」

「トワ様、あれは白だからフィットしてるのです。もし黒だと……ああ、おぞましい」


 アリサはそう言うけど、オンブルがアルカンシェルにドッキング出来るかどうかなんて判らないからね。そういえばまだリュミエールの中を見ていなかったけど、これどうやって乗るんだろうか。


「G17?リュミエールってどうやって乗り込むの?ハッチだったところ、ドッキングしたら露出してないよね?」

『HF-PX00Aのブリッジから搭乗可能です』

「そっか、アルカンシェルの船内から移乗できるんだね。でも、そんな場所あったっけ」


 船内、特にブリッジ周りの構造を思い浮かべながら、私達はアルカンシェルに足を踏み入れる。

 ブリッジへ向かう前に船倉を覗くと、威圧感のあるエクソギアが鎮座していた。いくつかのコンテナがあるのはマリエッタ曰くエクソギアの補修部品やコントローラーの類いらしい。

 他にも大小様々なものが運び込まれているから、あとで仕分けをしないといけないね。そんな事を思っていると、先にブリッジへ向かっていたトワが船倉へ戻ってきた。


「アイリス、ブリッジに謎の扉が」

「謎っていうかリュミエールの搭乗口でしょ?」

「でも、謎めいている」


 トワの言葉に興味をそそられた私はブリッジへ向かった。

大げさな表現だとばかり思っていたけど……たしかにそこにあった扉は謎めいていた。


 ブリッジ上階の壁側に設置された補助シートの前にアルカンシェルがホロディスプレイを表示しているけど……その下、床面にハッチの様なものが出現している。あそこは確か、普通の床だったはずだけど。

 そして何よりも謎なのが、そのハッチを開けて下に降りたとしても位置的にはラウンジにたどり着くだけだと思われる、よくわからない位置関係だ。

 そんなことを考えていると、ホロディスプレイの表示を読んでいたアリサが何かを納得した表情で教えてくれた。


「アイリスさん、このシートに座ると扉が開くらしいです」

「これ、補助シートだよね?」

「ええ。ですが、これに座らないと開かないとアルカンシェルが」

「んー、じゃあ座ってみるよ」


 そういえばこのシート、普段は壁の方を向いていて手近なコンソールを操作できる配置だったはずだけど、今は機首の方を向いて座るようになっているね。

 怪訝に思いながら私がシートに座ると、アームレストに緑のライトが点灯した。これを押せって事かな?

 そう思ってライト部分に触れると、目の前の床が音も無くスライドして開き……そしてその開いた空間の中にシートが吸い込まれる様に滑り落ちてゆく!


「ちょ、まっ!」


 思ったより速い速度で暗闇の中へ転げ落ちた思った次の瞬間、目の前は行き止まりになっていた。

 横手に見える小さな扉……ってこれ、気密扉だよね?


 どうやら真下に降りてラウンジ内へ転げ落ちるのではなくて、前方へ斜めに滑り降りる形で船首の双胴部分に繋がっていたようだ。


「これ、座席ごと移動するシューターになってたってこと?」


 私はブリッジにいるアリサ達に声を掛けるが返事が無い。首をひねって後ろを確認すると……真っ暗だ。つまり、シートが吸い込まれたハッチが閉じているらしい。なにこれ、閉じ込められた?


「アルカンシェル?聞こえる?」


[Yes, Lady.]


 私の言葉に、シートの前にホロディスプレイが表示される。よかった、アルカンシェルとコンタクトが取れるなら安心だ。


「ね、アルカンシェル。どうなってるか説明してくれる?」


 私の言葉にホロディスプレイの内容が変化した。

 書かれていた内容によると、私の横手にある扉はリュミエールのハッチと連動しているらしく、今は開けるとリュミエールの船内に入れる状態になっているそうだ。


 だけど、リュミエールがドッキングしていない場合は扉の先は何も無い……つまり宇宙空間。

 なので、万が一のためにこのシューターの空間をエアロック代わりに使う構造になっているらしい。なるほど、それで上のハッチが閉まってる訳か。


 あと、アルカンシェルの説明にはなかったけど、おそらくセキュリティ的な目的もあるんだろうと思った。

 これまで気にしたことが無かったけど、リュミエールがドッキングしていない状態だとアルカンシェルの双胴部分の内側に簡易エアロックの扉があることになる。

 当然ながらエアロックは出入り口なので外部から侵入する経路になりかねない。


 だからリュミエールが接続されていない時にはブリッジ側の床面ハッチ自体を封鎖し、昇降に使うシートも上階へ保管しておくことで、ここのエアロック側から侵入しづらくすることもできるんだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ