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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部9章『ホーム・リフォーム』第1037技術開発拠点-残技の衛星
320/355

#11

>>Towa


 アリサの問いかけに対してG17がスターゲートの事を話し始めた途端、私の心の奥底がざわついた。

 これは……故郷にいたときに感じていた、あの「私は帰らないといけない」という感覚。大宇宙(おおぞら)に旅立ってからは殆ど感じる事がなかった、あの焦燥感だ。


 確かに私は自分のルーツを知りたいと思っていたけど、G15の星で自分がセレスティエルであるという事を知って、私の自分探しは終わったのだと勝手に思っていた。

 だけど……今、スターゲートを超えた先の事を聞いたことで、私の心はそこへ帰らないといけないという使命感……いや、アイリスが言っていたエレメントの強制力のような焦燥感で満たされていた。


「アイリス。アリサ。それに……マリエッタも」

「どうしたの、改まって?」

「私……帰らないといけない」


 無意識のうちに口がそう語っていた。

 そうか、私はみんなと別れてでも、独りでも帰らないといけないんだ。スターゲートの向こうへ。


 だけど、私の覚悟をよそに、アイリスは、アリサは……そしてマリエッタまでが、私と共に行くと言い出した。スターゲートの向こうがどうなっているか判らないのに。帰ってくることが出来るかどうかも判らないのに。


 結局、私は皆に説得される形で同行を了承することになった。そして旅立ちにに必要な「鍵」は既にアルカンシェルに備わっていたらしく、思ったよりもあっけなくスターゲートの彼方へと向かう最低限の準備は整ってしまった。


「トワ、何考えてるか大体判るけど……まだ全然準備整ってないからね?」

「どうして?」

「まず情報!次に物資!それからアクションプラン!」

「情報とアクションプランはともかくとして、物資をここで手に入れるのは難しいですね。スターゲートに近い惑星で調達する必要がありそうです」

「なら、わたしはエクソギアの部品を調達したいです!」

「じゃあ、調達先とアクションプランはアルカンシェルへ戻ってから決めようか。で、情報は……ここで手に入れるのがベストだよね?」


 私がスターゲートの向こうへ行こうと言ったのに、いつの間にかアイリスが手はずを整えてアリサやマリエッタが準備を始めていた。これじゃあ誰のための道行きだか判らないよね……。


 私がそんな事を思い悩んでいる間にアリスはG17に色々な質問を行っていた。

 残念ながら質問の多くはデータ破損、そもそも記録が無いという回答だったけど、それでもいくつか判ったことがあった。


 まず、スターゲートは一方通行ではないということ。二つのゲートがペアになっていて、「鍵」を使うと2点間の行き来が出来るようになるらしい。

 なんでも二つのゲートが繋がるらしいけど……正直、G17の説明は良くわからなかった。アイリスとアリサ、それにマリエッタは頷いていたから、これ私だけ判ってない感じ?

 あとでアイリスに説明して貰おう。


 次に、アルカンシェルに搭載されている観測機器であればスターゲートの彼方であっても現在位置の座標が計測できる可能性があるらしいということ。

 アイリスは計器の測定限界を超えることを心配していたらしい。普通の航宙船だと、この宙域を航行することしか考えられていないからお隣の渦状腕(オリオン腕)の座標なんて測定できないらしい。

 でもアルカンシェルならたぶん大丈夫。さすがだね、私の船。たぶんっていうところは少し心配だけど。


 あと最後にアルカンシェルが持ってる鍵は入口、出口のどちらでも開けられるってこと。

 これは重要だよね。入口しか開けられないなら、向こう側から帰って来れなくなるから。

 私がそう言うと、G17は鍵は入り口も出口もあけられるし、一度開いたゲートは約半年間開いたままになるって教えてくれた。なら、用事を済ませて半年以内に戻ってくれば万が一鍵が片側しか開けられなくても大丈夫なのかな?


 そして問題点もいくつか判明した。まずはスターゲートの向こう側に関する情報が全く残ってないということ。

 なんと出口がどこに通じているのかすら判らないらしい。それ、出た途端にブラックホールとご対面……なんてこともあるんじゃないだろうか?


『スターゲートは恒星系の近傍には存在しません。従って通常であればスターゲート周辺にブラックホールは発生しません』

「通常でなければ?」

『ゲート通過後、そのまま事象の地平面に囚われ消滅すると考えられます』

「……トワ、あんまり怖いこと聞かないでね……?」


 次に問題になったのはスターゲートを抜けた先の星図が残っていない、つまり寄港できる場所の情報が皆無ということだった。

 アルカンシェルはフォトンエネルギーを自前で生成できるとはいえ無限に飛び続けられる訳じゃないし、食料や水だって積める量は限られている。

 どこかで補給やメンテナンスを行う拠点が必要なのに、その情報が全くないらしい。


 アイリスもアリサも難しい顔をして、とりあえずスターゲート周辺だけを探索して引き返すことを検討している。そんな二人の様子を見ながら、私は気になったことをG17に聞いてみた。


「じゃあ、ヨモツヒラサカの座標はなんで残ってるの?」

「……そういえば、そうだよね。G17?その情報ソースは?星図は無いんだよね?」

『はい。ヨモツヒラサカに関する情報は汎銀河エンサクロペディアに記載されているものを引用しました』

「何、その汎銀河百科事典的なやつは?」

『その名の通り、銀河のあらゆる情報を収集することを目的とした百科事典です。ただし、編纂途中に作成していた組織が消滅したため記録は不完全ですが』

「使い物になるの?」

『惑星上の文明に関する説明部分は状況が変化している可能性が高いですが、恒星系の座標情報は変化しません』

「なるほどね……。じゃあ、そのエンサイクロペディアとやらから可能な限り人類が入植している惑星の情報を抽出してアルカンシェルへ送っておいてくれる?」

『承知しました。抽出完了、1706件の惑星座標を確認』

「少なくない?」

『申し訳ありません。エンサイクロペディアを保存しているストレージが劣化しており、情報の多くが欠落しています』


 アルカンシェルに保管されているデータは壊れてないのに、どうしてG15やG17のデータは欠落が多いんだろうか。私がそう疑問を口にするとマリエッタが教えてくれた。


「記憶装置も不滅じゃないんですよぉ。普通、1000年もすれば媒体が劣化したり、装置が壊れたりしてデータが読めなくなると思いますっ!だからアルカンシェルさんは凄いんですっ!」


 そうか、データを保存している記憶装置や媒体そのものが歳月に前に劣化、風化してる可能性があるのか……。

 そういえばアルカンシェルはステイシスフィールドでモスボール処理をされていたから、劣化が始まってなくて、G15とG17は施設を管理するために稼働状態だったから記憶が風化しつつあるってことなんだね。


 アイリスは抽出したデータのいくつかを表示させて確認を行っていた。私もどんな星があるのか興味があったので、横から覗き込んでみる。


「観光惑星に先端工業惑星はいいとして、放牧惑星?って、家畜を飼うためだけの惑星?そんなものもあるの?」

「アイリス、こっちにカジノ惑星とホロムービー撮影惑星がある」

「百科事典に載るだけあって、ユニークな所ばかりだね。まぁ、何千年か前の情報だろうから、今行っても何も残ってない可能性が高いだろうけど」

「牛が支配する元放牧惑星」

「ヒトが飼育されてそうで怖いよ、それ……」


 私達が百科事典の項目を読んでいる間に、アリサとマリエッタも何か作業をしていたようだ。


「アイリスさん、G17のデータを元に暫定的な星図データを構築しました」

「さすがアリサ、手が早いね」

「いえ、大半はマリエッタのおかげです」

「えっへんっ!」

「ありがとう、マリエッタ。優秀な秘書官で助かるよ」

「もっと褒めてくださいっ!わたし、褒められると伸びる気がしますっ!」

「……それ、トワの受け売りだよね……」


 二人が作ってくれた暫定星図は広範囲に星が散らばっていた。この感じだとスターゲートから出る位置がどこだとしても、アルカンシェルが辿り着ける範囲内に人が住める惑星の一つか二つは存在している事になるのかな……?

 まぁ、牛しかいない星だとあんまり意味ないけど。

 ともあれG17から聞けることは概ね聞き出せたような気がする。


「今聞いた情報だけでも学術界の常識を根底から覆す発表ができそうだよね」

「ええ、そうですね。件のドレッバー教授なら、殺してでも奪い取ろうとする情報でしょうね……」


 アイリスとアリサがそんな事を言っていた。

 そういえば私達は古代文明の船とか知性体とかと頻繁に接しているからあんまり希少感無いけど、今こうやって見聞きしている話は本来なら世間を大きく騒がせるような話なんだろうな。


 きっと、学会とかで発表したら一躍有名人になれたりするに違いない。そういえばマリエッタはアカデミーを卒業していたと言ってたし、発表するならマリエッタ名義だね。


「マリエッタ、発表して教授になる?」

「きょ、教授って、ポスト争いとか、人事権の奪い合いとか賄賂とか裏工作とかする人ですよねっ!?そんなドロドロした世界はごめんですっ!」

「それ、この間みんなで見たホロムービー……たしかホワイトタワーだっけ?あれの話だよね」

「ザ・イゼン教授は格好いい」

「いや、主役だったけど破滅する役どころじゃない……」


 多くの部下を引き連れて廊下を颯爽と歩くシーン、格好良かったけどなぁ。

 私も一度、ザ・イゼン教授を見習ってあれやってみたい。今度、オラクルの廊下でやってみようかな。


「トワ?ダメだからね?」

「考えを読まれた」

「いつものことでしょ?」


 私達がそんな事を言ってじゃれ合っていると、珍しくG17の方から声を掛けてきた。


『セレスティエル。スターゲートの彼方へ向かわれるのであれば、HF-PX00Aに武装を搭載することを提案します』

「武装って、惑星破壊爆弾とかでしょ?さすがにあんなの積んでいく気にはならないよ」

『違います。当施設のドックには汎用型の装備がいくつか保管されています。それらの中からHF-PX00Aに取り付け可能なものをいくつか提案可能です』

「例えば?」

『まず、惑星破壊爆弾』

「だからそれはいらないって」


 アイリスは即座に否定するけど、面白そうだよね、惑星破壊爆弾。使い道は思いつかないけど。


『次に光子魚雷。4連装発射管を内蔵可能です』

「光子魚雷って、さっきのやつでしょ?魚雷自体が結構大きかったよね?4連装発射管で戦闘できるだけの弾薬を積んだら他に何も積めなくなるじゃない」

『ではグラビティカノンはいかがですか』

「それ、リュミエール3号機に搭載されてるやつだよね。どんなもの?」

『重力カタパルトと重力場で形成した仮想の空間圧縮砲身を組み合わせた兵器で、砲内に投入した物質を加速・射出する質量兵器です』


 G17がアイリスに説明しているグラビティカノンの話を聞いてた私はあることを閃いた。もしかしたら……。


「ゴミとか残飯でも攻撃できる?」

『はい。航宙船の装甲材程度であれば破壊する事が可能です』

「いや、残飯で撃墜される船の人が可哀相すぎるでしょ……。いいよ、G17。提案してくれた事は感謝するけど、私達は戦いに行く訳じゃない。トワが帰る場所を探しに行くだけだから武器は不要だよ」

『……指示、受諾』

「だから、感謝はしてるから拗ねないでよ……」


 結局アイリスはG17が提案した武装提供を全部断った。

 私としては廃棄物で攻撃できる武器にはちょっと興味あったんだけどな。エコだし、面白そうだし。人間サイズのグラビティ装備がないかあとでG17に聞いてみよう。


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