表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部8章『土竜の歌』ティンバリス-誤災の惑星
305/355

#31

 そして私は我が身を呈して最後の実験にチャレンジした。


「マリエッタ、やって」

「あの、大丈夫ですか?」

「倒れたら、あとは任せた」

「ひぇぇ、それはちょっと……危なそうならすぐ止めますからっ。じゃ、行きますっ!」


 そう言ってマリエッタはドローンに木を切るように指示をした。私は、マリエッタの隣でイヤーマフをせずに待機する。

 サウンドマスキングが本当に効果があるなら、私は気分が悪くならないはず。失敗したら……この至近距離だと、たぶん吐いちゃうだろうな。そんな事を思って身構えていたけど。


 うるさいだけで、気分は悪くならなかった。これ、成功じゃない?きっと土竜も我慢してくれるんじゃない?そう思えた。


「トワさん、大丈夫ですかっ?袋を用意してますけどっ?」

「大丈夫。そこへトカゲいれて帰ろう。串焼き美味しそう」

「ひぇぇぇ!?トカゲ君達、食べるんですかっ!?」

「この後スタッフが美味しく頂くのはお約束」

「いや、逃がしてあげて下さいっ!できれば、お礼に餌を与えてからっ!」


 マリエッタはあまり食に興味は無いらしい。串焼き、美味しそうなのに。解せない。



 その後、私はアイリスとアリサを呼んで、サウンドマスキングが上手くいったことを説明した。実証実験を行うというとアリサはぞっとしたような表情を浮かべたけど、私が手を握ったら実験に立ち会ってくれた。

 ちょっと体が震えてたけど。


 結果的に歌でマスキングされた作動音は2人にも悪影響が出なかったので、低周波の影響を軽減出来ていることはほぼ間違いない。なので私はこのまま実証実験へ向かうことを提案した。


「今から現場へ向かうと夕方になるけど……でも、あまり時間を掛けすぎるよりは今日中に片付けておいた方がいい、かな?」

「もし土竜が凶暴化して襲ってきたら、戦うにしても逃げるにしても不利だと思いますけど……」


 アイリスは賛成、アリサはやや反対っぽい。普段なら私が意見を言うところだけど、今はマリエッタがいるので、私はマリエッタに意見を求めた。


「わたしっ、トワさんの事を信じてますっ!だから、きっと土竜は大人しくしてくれますっ!」

「……そう言われると、私がトワ様を疑ってるみたいじゃないですか……。マリエッタ、あなた策士ですね」

「えへへ……ちょっとアリサさんのこと、判ってきましたっ!」


 アリサを手玉にとるとか……マリエッタ、恐ろしい子。でも、マリエッタの説得で全員賛成になったので実証実験へ赴くことになった。

 ジョイナーギルドの人達?うん、あの人達はまぁ、付いてくるだけだしね。特に意見は聞かなかった。



 私達はジョイナーギルドの人達にサウンドステークを装備したドローンを運んで貰うことにして、自分達はブリーズで移動することにした。

 修復可能箇所は全て自己修復完了したというアルカンシェルのメッセージを見て、ようやくマリエッタが使用許可を出してくれたから。

 操縦は私が担当する。ライセンスを取って初めての操縦だけど、ブリーズならアリサが操縦するのを見慣れてるからなんとかなるよね。目指すのは昨日土竜と遭遇した6番デポ。たぶんあの土竜の縄張りがあのあたりなんだろう。


「トワ、ちょっと操縦荒いよ。ちゃんと集中して」

「わかった」

「マリエッタの方が丁寧な操縦でしたね……いえ、トワ様の操縦もワイルドで素敵ですが」

「ワイルドな操縦って、単に雑なだけじゃない」


 考え事をしていたせいがなんだか酷いことを言われている気がするけど、とにかく前を見て操縦しよう。


 そして、着陸操作……だけど、ライセンススクールで操縦したエアロプレーンよりもずっと簡単に着陸できた。私が操縦桿を見つめて不思議に思っているとアイリスが説明してくれた。


「ブリーズは重力制御だからね。着陸時の推力調整とか気にしなくてもいいから普通のエアロプレーンよりも格段に操縦が簡単なんだよ。ビークルで言えばオートマチックとマニュアルの違いぐらい、差があるんじゃないかな」

「もしかして、ライセンス取らなくても乗れた?」

「乗るのがブリーズだけならね。でも、他のも乗りたいでしょ?」

「うん」

「なら、ライセンス研修は無駄じゃないよ?」


 2日間の訓練が無駄では無いと判ってちょっと安心した。いや、ライセンス取れたこと自体が嬉しかったから、無駄でも別にいいんだけどね。

 そんなことを言っているうちに後続のドローン搭載エアロプレーンも到着したようだ。


 今回、ドローンは伐採済みの丸太を一本運搬した状態にしてある。だって周囲は焼け野原で……下生えの緑は所々で復活してるけど、さすがに切れるような木は一本も無いからね。


 私達はドローンを伴い、爆心地のクレーターへ向かう。ジョイナーギルドの人達は危ないからクレーターが目視出来るギリギリの位置で待機してもらうことにしたから、ドローンの操縦担当はマリエッタだ。

 彼女がドローンを操作して中央部に丸太を設置し、チェーンソーを起動する準備を整える。


「どうする?効果測定するために、最初はマスキング無しで動かして土竜を呼び寄せる?」

「実験手順としてはそれが妥当なんでしょうけど……効果が無かったら危険では?」

「アリサさん、大丈夫ですっ!」

「……マリエッタ、笑顔で私を責めるのは止めてください」


 とは言え万が一に備える必要はあるから、アイリスに蒼のイグナイト(ステイシスフィールド)を渡しておいた。これがあれば土竜の動きを鈍化させて逃げる時間を稼ぐことが出来るからね。

 これで準備が整ったので、私はマリエッタにチェーンソー起動の合図を出した。


「ちょ、トワ様……まって……!うぷっ……」


 あ、アリサが口元を押さえてクレータの外へと走って行った。しまった、私も気分が悪くなってきたよ……。


「トワ、地下から振動……来るよっ」


 アイリスも顔をしかめながら、でもしっかり仕事をしている。さすがはお姉ちゃんだ。

 そして……数瞬後、クレーターの側面を破って土竜が姿を現した。その目の色は……紫だった。


「マリエッタ、サウンドステークっ」

「は、はいっ!」


 私の指示にマリエッタは土竜の姿におびえながらもステークの作動信号を送る。


 不快な低周波の影響が薄れていき、吐き気も収まっていく。土竜は……低い姿勢でこちらを睨み付けていたけど、ステークが起動した瞬間に瞳の色が紫と黄色の明滅に変わった。

 やっぱりあの瞳の色……土竜の感情みたいなものを現してるんじゃないかな……?


 緊張しながら様子を見守っていた私達だけど……土竜はしばらくドローンを睨んでいたけど攻撃するような素振りは見せなかった。

 そして何度か瞬きした土竜の瞳の色が黄色の単色から緑と黄色の明滅に変わり、やがて緑単色へと変化した。

 緑のまなざしで土竜はしばらくドローンを見つめていたけど、やがて不思議な音程で一声鳴くと、ゆっくりと踵を返して元来た地中へと戻っていった。


「ふぅ……どうなるかと思ったよ……」

「成功……しました?」

「うん。成功」


 マリエッタとアイリスに成功を告げ、私はガッツポーズをした。

 うん、これで土竜問題は解決だ。どういう原理かは結局判らなかったけど、まぁそれはジョイナーギルドの人達に解明を委ねればいいだろう。


「大丈夫ですかっ!?」

「今のが土竜ですか!?」

「なんと恐ろしい……あんなのが地下にいたとは……!」


 土竜が姿を消したことで、遠巻きに見ていたジョイナーギルドの人達がクレーターの方へやってきた。そういえばジョイナーギルドの人達、土竜を生で見るの初めてだっけ。

 確かに初見だと怖いよね、あの子。でも悪い子じゃないんだし、ドローンやジョイナーギルドの人達とも仲良くしてくれそうだから……これからは共存できるといいな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ