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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部8章『土竜の歌』ティンバリス-誤災の惑星
298/368

#24

>>Towa


 ブリッジに向かったアイリスの後に続いて私もブリッジへ上がった。

 アイリスはマリエッタが装着していたボディカメラの映像を確認するらしい。カメラから映像をアルカンシェルに転送する準備を整えながら、アイリスが私に声を掛けてきた。


「トワ、ごめんね」

「ん。気にしてない」

「……何の事か、本当にわかってる?」


 私があっさりと気にしていないと答えたことで、アイリスは自分の意図が伝わっているか心配になったようだ。

 でも、私とお姉ちゃんの仲だよ?このタイミングで謝ろうとしてくることなんて、一つしかないじゃない。


「名前の事でしょ?」

「……うん。勝手に話を進めて、ごめん」

「だから、気にしてない」


 私もかつてはトワ・ブースタリアだった。旅に出るときにお義父さんが私をパパの姓であるエンライトに戻してくれたけど、それでも私の人生の半分はブースタリアで、アイリスの家族……戸籍の上でも妹だったからね。

 だからアイリスは「家族」である私に断り無く、マリエッタを新しい家族として迎える判断をした事を謝ってくれているんだ。


 私の半分はトワ・エンライトで、残りの半分はトワ・ブースタリアだ。それが私のアイデンティティなのは間違いない。

 だけど、お姉ちゃんが養子としてマリエッタを迎えるというのなら、それは「妹」である私がどうこう言う話じゃないからね。ただマリエッタに叔母さんって呼ばれるのはちょっと違和感あるけど。

 そうだ、それはちゃんと伝えておかないと。


「叔母さんはやめて」

「えっと……マリエッタがトワを呼ぶ呼び方についてかな?」

「うん。小姑の方がいい。『キーこの泥棒猫』的な感じを希望」

「たぶんそれ小姑じゃないし、マリエッタが養子になってもトワは小姑にはならないと思うけど。そもそも一体どこでそんなネタを仕入れてくるんだか……。でも、ありがとうね、トワ」


 名前の話はそれで終わり、アイリスはカメラの映像解析を開始した。

 まず転送が完了したことを確認した上でカメラの接続を解除し、次にアルカンシェルにあるデータの複製を取る。アイリスらしい慎重さだ。

 私だとカメラを繋いだままデータを編集して間違ってオリジナルを書き換えて大変な事になりそうだけど。


 アイリスはコピーデータを冒頭から再生し……アリサが振動に気付いた時点で映像を一旦停止した。


「アルカンシェル、ここまでの部分は不要だからカットして。あと、これから再生する部分の音声出力は最小限まで下げて、代わりに可聴域外を含めたサウンドデータを高速フーリエ変換とウェーブレット変換で解析して、共鳴周波数を特定するために音波の増幅パターンもシミュレーションしてみてくれる?あと音響カメラで採取したデータを元に音を可視化して映像に重ねて欲しいんだけど……できる?」


[Don't Ask If I Can, Just Tell Me to DO IT!]


「前回そう言ってダメージ受けたよね?今回は大丈夫?ダメージ受けないよね?」


[Affirmative.]


 アイリスとアルカンシェルは仲がいい。アルカンシェル、私の船なんだけどな……。ちょっと嫉妬してしまう。


「アルカンシェル、後で遊んで」


[Of Course, Mam.]


 アルカンシェルの表示は心なしかいつもより文字が大きい気がするけど……これ、私に気を遣ってくれてるのかな。

 私がアルカンシェルとそんなやり取りをしている間にもアイリスの映像解析が進んでいる。


「んー、やっぱりこれ、ただの超音波じゃなくて共鳴波だね。周波数スペクトルのピークが生体、特に聴覚に影響を与える数値になってる。しかも……指向性があるね。明確に私達の方をマーキングして放ってるよ、これ」

「指向性の、攻撃?」

「この時点ではそう見えるね。でも、それだと……このシーンと整合性がとれないんだよね」


 そう言ってアイリスが示したのはドラゴンが地中から出没したシーンだ。


「姿を現した時点で共鳴波が止まってるんだよ。攻撃意図があるなら目視出来た時点で共鳴波の出力を強化するなり、ピンポイントで頭部を狙い撃ちするなり出来るはずなのに」

「そもそも襲って来なかった」

「うん、それも気になってるんだよ……あと、ほらここ。最初は緑と黄色で瞬いていた目の色が時間と共に緑になってるでしょ?しかも緑単色で落ち着いたら何もせずに引き返していったし」


 私達の星には無かったけど、人口や交通量が多い星だと、交通の流れを制御するために「信号」というものが使われているらしくて、確か赤が止まれ、黄色は注意して進め。緑は進め……だったと思う。


「黄色は注意して進め、緑は進め?」

「それ、黄色も止まらないとダメだからね?それにそれは人間の価値観だからね……未知の惑星の生物が人間と同じ意味で色表示してるかどうかは判らないけど」

「……アイリス、今映像に音波データ出た」

「ホントだ。ドラゴンが去って行くときに共鳴波聞こえなかったけど……私達とは違う方向……ドラゴンの進行方向に向かって共鳴波が出てるね。もしかしてこれ、地中探索用のレーダー代わりなのかな?」

「地下だと見えないから」

「そうだね……」


 そもそもよく考えたらドラゴンの「攻撃」って私とアイリス、アリサにしか効いてなかったよね。マリエッタはドラゴンが現れる直前まで何も影響受けてなかったし。

 と言うことは……私達の聴覚が敏感すぎたから影響を受けていただけで、本来なら攻撃にすらなっていなかったって事じゃないかな?

 私がそう指摘するとアイリスも納得したように言った。


「うん、やっぱりこのドラゴンは攻撃の意思が無いと判断するのが妥当だね。じゃあ、どうしてドラゴンのテリトリーである地中に入り込んだ私達を放置したのに、リーヤのご両親や地表で活動していたドローンを襲ったんだろう……?」

「ドラゴンに聞く?」

「話が通じそうには見えなかったけどね……でも、聞ける相手ならいる、か」

「誰?」

「ドラゴンを目撃した生存者、リーヤだよ」



 ベルナさん達にドラゴンの存在を報告するついでにリーヤから話を聞くことにした私達は、ラウンジへと降りた。

 マリエッタとアリサはまだ眠っていたので、アルカンシェルに行き先と起きたら連絡するよう言伝を頼んでおいて、私達だけで先に出かけることにした。


 ログタウンに戻ってきたときにはまだ昼過ぎだったけど、いつの間にかかなり陽が落ちかけている……晩ご飯の時間も近いね。

 タイミング良く街中で友達と遊んでいたリーヤを見つけることが出来たので、彼を連れてジョイナーギルドの本部へと向かった。


 リーヤはドラゴン退治の話が聞けるとワクワクしてるけど……ごめん、私達は負けた。……というか、そもそも戦ってないんだよね、ドラゴンと。



 朝出発した時と同じようにベルナさん達ジョイナーギルドの人達は忙しそうにしていたけど、私とアイリスが来たことに気付いて一斉に仕事の手を止めた。ここは何か言わないと。


「ドラゴン、いた」

「「「ええっ!?」」」

「トワ、もう少し穏当な話の出だしとかあるでしょ……」


 隣にいるアイリスに呆れられた。そして反対側にいたリーヤは目を輝かせていた。


「だろ、いただろ!?やっぱりドラゴンはいたんだ!」

「まさか、リーヤの作り話だと思っていたのに……管理官、それの話は本当ですか?」

「ええ。映像記録もあります。必要であればアリサも証言しますが……ドラゴンとの接触で受けたダメージがあるので今は休んでいますので、彼女の話は後ほど改めて」

「ダメージ……戦闘になったのですか?ではドラゴンは……」

「言葉で説明するより、映像で見て頂いた方が早いかと。そこのホロディスプレイ、お借りして良いですか?」


 アイリスは許可を取ると壁面に投影されていた一番大きなホロディスプレイをフォトンタブに接続し、ドラゴンと接触した際の映像を再生した。

 ……改めて見ると、私達が勝手に苦しんで倒れてるだけだよね、これ。そしてマリエッタがドラゴンに立ち向かった事で、大写しになるドラゴンの姿。


「こいつだ!こいつが、父ちゃんと母ちゃんを!」


 リーヤが大声を上げる。

 やっぱり彼が両親を失ったときに見たのはこのドラゴンだったんだね。これでリーヤのドラゴンボーイと言う不名誉なあだ名は返上になるだろう。

 いや、最初にドラゴンを見つけたドラゴンボーイという意味では称号になるのかな?私がそんな事を考えている間に映像の再生は終わった。


「まさか、この星にこんな生物がいるとは……」

私の秘書官(・・・・・)が推定したサイズと概ね一致しますし、映像にもあったように前腕の爪はドローンに刻まれた傷と同じ三本。しかも活動痕である地下トンネルがドローン破壊現場へと通じていました。ドラゴン……かどうかはともかくとして、この大型爬虫類がドローン破壊の犯人であることはほぼ間違いないでしょう」


 アイリスは映像を巻き戻し、ドラゴン……大型爬虫類が大写しになった画面で映像を停止した。


「それで、これを駆除できるんですか!?」

「駆除は無理だと思います。これまで観測されていないということは基本的に地表には出てこないと考えるべきですよね?なら駆除作戦は地下で行う事になりますが……人が持ち運べるサイズの武器、例えばブラスター程度ではどうにもならないでしょうし、爆発物を使ったら攻撃隊が生き埋めになりますよ。それに何より……この爬虫類、クレーターが出来る爆発の直撃を受けても傷一つ負ってないんですから」


 アイリスの言葉に駆除と口にしたジョイナーギルドの人は顔面が蒼白になった。

 倒せない巨大な敵が地中にいる。それも、一匹だけとは限らない。そんな恐ろしい話を聞かされて、平然としている方が難しいだろう。


「ところでリーヤには悪いのですが、これはドラゴンではないと思うので別の名前を付けた方が良いと思います。例えば……」

「土竜。土の竜で『どりゅう』。格好いい」


 アイリスが例えばの例を出す前に、私がアイデアを出してみた。

 あのドラゴンを見た時から、なんとなく土竜っぽいと思ってたんだよね。うん、ドリュウ……格好いいネーミングだ。


「トワ?土に竜って……それ、モグラだよ?」


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