二度目の対峙
「あ~、イライラする」
「どうしたの父さん?」
「どうしたのじゃねぇよ。一体いつになったら闇族は出てくるんだ。もう一週間だぞ」
テイモスに来て一週間経ったが、闇族が現れる気配が全く無い。
その代わり、毎日現れる魔物と戦ってばっかで流石にストレスが溜まってきた。しかも全部危険度が高い魔物だから余計にな。
「まぁ、確かにガクラに同意だな。そろそろ終わらせねぇと、スイン達の疲労が溜まる一方だ」
「そうだね。皆疲れてきてる」
俺達光族は回復が早いから良いが、冒険者の皆はそうでもない。
毎日一級や二級の相手なんて、流石の高ランク冒険者でも荷が重い。
さっさと終わらせねぇとマジでぶっ倒れそうだぞ。
「皆。次元の穴の反応が出たわ」
「またかよ!」
やっぱり今日も現れて思わず声を上げる。
「ちょっと。イライラしてるのは分かるけど、急に大きい声出さないでよ」
「悪ぃ。で、何処だ? いくつ現れた?」
「えっとー……そんなに遠くは無いけど、反応は二つだけね。しかもそんなに離れてない」
二つ? これまでは最低でも五つ以上だったのに随分少ねぇな。
「魔物のストックが無くなってきたか?」
「だと良いんだけどな」
空中に投影されている地図を見て次元の穴が開いた場所を確認すると、部屋の中にスイン達冒険者が入ってきた。
「ガクラさん。また反応が出たって聞いたけど」
「ああ。だがお前等は休んでろ。幸い反応は二つだけだからな」
「良いの? 僕達は休んでて」
心配そうに言うユールにエスティーが声を掛ける。
「どう見たってお前等の方が疲れてるだろ。二つだけなら俺達で何とかなる」
「ん~……」
「なら休ませてもらおうじゃねぇか。アイツ等なら大丈夫だろ?」
「それもそう……だね」
ブラークに言われてユールは引き下がると、俺達は反応が出た場所に向かった。
船の近くの上空に現れた二つの次元の穴に近づくと、それぞれの穴の中から青い立方体が一つずつ出てきて地面に落下すると、青い立方体が崩れ中から魔物が出てきた。
一体は全身に棘が生えたスパインドラゴン。
もう一体は強靭な顎をした二足歩行の蜥蜴の魔物、デビルリザード。
二体とも一級だ。
「両方一級か。メンドクセー相手だ」
「現れちまったもんはしょうがねぇ。ノフア、俺達はスパインドラゴンを相手にする。お前等はデビルリザードを任せた」
「あの肉食恐竜みたいなやつだね。分かった」
ノフア、ソロモワ、レウィ、ネオン、リージャ、パトランはデビルリザードの方へ向かい、俺達はスパインドラゴンと対峙した。
――――――――――――――――――――
「ブレイマー。今ので最後か?」
「うむ。”コイツ”を除いて今送った二体で最後だ」
「よし。その二体が倒されたら、我等の出番だ」
「ヒャハァァァ! やっとか! 待ちわびたぜ!」
グロードは金棒をバシッバシッと叩く。
「またこの世界で奴等と戦うのか。次は負けん」
「今度こそ倒すザマス! 美しく!」
復讐に燃える闇族達。その横にはとぐろを巻いている巨大な蛇、エンペラースネークがジッと待っていた。
――――――――――――――――――――
「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
俺とエスティーの剣でスパインドラゴンを斬りつけると、スパインドラゴンは咆哮を上げて倒れる。
「はぁぁぁ……やっと倒せた」
「元から凶暴なスパインドラゴンが更に凶暴になってるから」
俺達は武器を納めると、デビルリザードと戦っていたノフア達が駆けつけてきた。
「おーい!」
「あ、ノフア。そっちも終わったか?」
「終わったのだー」
「それにしても本当、一級って言うのはタフなのね。全然倒れない」
「でも倒せたから良かったわね」
「あ~、疲れた」
リージャが地面に座り込むと同じ気持ちなのかネオンが頷いた。
「まぁ討伐は終えたし、船に戻るか……っ!?」
嫌な気配を感じ振り向くと、飛んできた人影に俺は殴り飛ばされた。
「ぐあっ!!」
「「父さん!?」」
殴り飛ばされた俺は木々にぶつかりながら船の近くまで吹き飛ばされる。
その人影からエスティー達は離れると、そいつを見て目を見開く。
「久しぶりだなお前等。そしてアビーナ」
「テメェは!」
「ベシド……」
現れた人間の姿のベシドにアビーナは息を呑むと、ベシドの後ろからクラウル、ビュレト、キグマ、ヴィネク、ストリブラー、グロードが歩み寄ってきた。
「ちっ。またお前等とこの世界で会うとはな」
「私達の復讐にはピッタリの場所ですね」
「今度こそ貴様等とこの世界の人間共に粛清を」
「ブレイマー! 奴を呼べ!」
ベシドが空を見上げて声を上げると、上空にいたブレイマーが次元の穴を開けた。
――――――――――――――――――――
「痛ててて……」
「おいガクラさん。大丈夫か!?」
船から出てきたスイン達が顔を押さえて倒れているガクラに近づく。
「何とかな」
「闇族の反応が出たって聞いて外に出てみたんだけど」
「ああ。多分、前にこの世界で戦った奴等だ」
ガクラは立ち上がると、上空に巨大な次元の穴が開き、そこから頭に四本の角が生えた巨大な長い生き物が出てきて地面に下りた。
「あれは!?」
「エンペラースネーク!?」
アスタラード最大の魔物、エンペラースネークが次元の穴から出てくると、赤い目が紫に光り進みだした。
「マズい! あっちには町がある!」
「町を襲う気か!?」
ガクラはエンペラースネークを見た後、スイン達冒険者にある事を頼み込む。
「お前等。悪いが、エンペラースネークの討伐を任せたい」
「え、ちょっと待ってよ! エンペラースネークはこれまでに討伐された記録が無いのよ!?」
「だったらその記録をお前等が造ればいい。俺達は闇族の相手で手一杯だからな」
冒険者達は少し黙り込むと、ブラークがゴンッと拳同士をぶつける。
「エンペラースネークと戦う事は視野に入れてたからな。やってやるよ」
「そうだな。やるしかないか」
「我等全員で挑めば、恐らくは」
冒険者達が意を決した表情になると、突然船が上昇しオペナの声が聞こえた。
『私にも任せて』
「オペナ?」
『今こそ、”とっておき”を使う時よ!』




