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14/16

case11・リョウメンスクナ

洒落にならんほど怖い話集めてみない? その22


139:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/23 10:31:02 ID:EzAchpgjkW

俺、解体業者の下っ端やってるんだけどさ

今日の現場で変なモンが出てきたんだよ


140:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/23 10:36:18 ID:ysK0brQbnY

変なモン?


141:139 2020/3/23 10:41:32 ID:EzAchpgjkW

そう。2メートルくらいの黒ずんだ箱なんだけど


142:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/23 10:44:52 ID:QwzDwNR3ow

なんでそんなの出てきたわけ


143:139 2020/3/23 10:49:23 ID:EzAchpgjkW

今日の現場がお寺でさ

住職にこんなん出ましたけどどうしましょって言ったら

工事は一時中断してくれって言われたんだわ


144:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/23 10:55:18 ID:LIBJ0ElnCA

なんかまずいもんだったのかね


145:139 2020/3/23 10:59:30 ID:EzAchpgjkW

リョウメンなんとかって言ってたけど……


146:lim 2020/3/23 11:03:45 ID:tTOPeMWv7H

もしかしてリョウメンスクナでは?


147:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/23 11:07:29 ID:16b34ijaMQ

リョウメンスクナってあの?


148:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/23 11:12:48 ID:OybPACCssp

いやいや、まさか

え…………まじで?


149:139 2020/3/23 11:17:53  ID:EzAchpgjkW

そうそうそんな名前だった!


150:lim 2020/3/23 11:22:26  ID:tTOPeMWv7H

どこのお寺ですか?


151:139 2020/3/23 11:26:45  ID:EzAchpgjkW

東北の方だけど……

もしかしてマジでヤバい奴?


152:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/23 11:32:25 ID:gG3CpGk8BC

目の前の箱だか板だかで調べろ


153:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/23 11:36:22 ID:2vmSELKPr7

もし本当にリョウメンスクナならヤバくね?


154:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/23 11:41:17 ID:7jNmt178wP

はは……国外逃亡しようかな……











 春の足音がすぐそこまで来ている三月下旬のある日の事。温室でハーブの手入れをするタカラの後ろ姿を俺は入口に寄りかかって見つめている。特にやることもねぇし、客が来る気配もねぇしと、暇つぶしにこうやってタカラを眺めることにしたわけだ。この家は娯楽が少なすぎるんだわ。

3月にしては暖かく、ぽかぽか陽気が庭と温室を照らす。くわぁと大きなあくびをして、思い切り油断していた俺の耳に羽ばたきの音が聞こえた後、俺の頭上が陰った。空に顔を向けた先には漆黒の大鴉がこちらに目掛け急降下しているのが視界に入る。なーんか見覚えがある大鴉だなぁ?すっと左腕を伸ばすと、大鴉はそこにふわりと着地した。


「あぁ、やっぱ司くんのとこの子か。なんかあった?」


 羽ばたきを聞いてか、俺の声を聴いてかタカラが振り向いて、鴉を見て眉間の皺が深くなるのが見える。タカラはそのままずんずんと俺の方に歩み寄ってきて不思議そうに鴉を見つめた。


「そのカラスもしかして」


「司くんの式神的なヤツだな。お前にも視える?」


「はっきりと」


「そ。さすが司くんとこの子だな。段違いに力が強い」


「それで、こいつどうして来たんだ?」


「さぁなぁ……けど、緊急事態っぽいのはわかる。茶を用意していくか」


「わかった準備する」


 さっさと家の中に戻っていくタカラはすっかり俺の助手の顔に戻っていて感心する。さっきまで、動物園に行った子供みてぇな顔してたしな。

ま、そこは仮にもプロだから心配はしてねぇけどよ。ぐっと大きく伸びをして一歩足を踏み出した。

裏庭から一番近い二階のキッチンに繋がる裏口から家の中に入る。階段を一段上るごとにハーブの香りが強くなっていく。ドアを開けるとタカラがハーブティーをタンブラーに移しているところだった。


「もういけそうだな」


「ああ。早速行くだろう?」


「もちろん」


 タンブラー入りのバッグを受け取って、そのまま一階に降りて玄関から家を出る。裏ルートという最高のショートカットを使い、『Limbo』を訪れた。


「司くん邪魔すんぞ」


勝手知ったる他人の店なので遠慮なく、ドアを開け放つ。真っ昼間だというのに店内は薄暗く、古書独特のにおいが充満していた。

妙だな、司くんは確かに色んな事に無頓着だが最低限の換気はしてたはず……。それに、電気もついていなのも変だ。

俺の肩に乗った大鴉は翼を広げ、店の奥に飛んでいく。一鳴きした鴉は俺達に早く来いといっているらしい。タカラと顔を見合わせた後、慌てて鴉の後を追う。彼だか彼女だかがは本が積み上げられたカウンターに着地した。カウンターの裏を覗き込むと、古書に埋もれるようにして倒れる司くんの姿があって、一瞬で血の気が引く。


「司くん!?」


「矢代さん!?」


「うう……ん……あれ、ぼく……」


 ゆっくりと瞼が開かれ、司くんはぼんやりと天井を見つめた。徐々に焦点が定まって俺達を認識したらしい。目が大きく見開かれ闇色の瞳がよく見える。ぱちぱちと瞬きする司くんの目の下にはくっきりと隈が浮いていた。そんな司くんの額に大鴉は降り立って、溶けるように影に還っていった。


「……ああ、そういえばお二人をお呼びしていたのでした……すみません、ずっと調べ物をしたもので……」


「いや、いいけど……何があったの?」


「タカラ、その前にハーブティーを飲ませてやって」


「大丈夫です、自分で飲めますよ」


 よいせと起き上がった司くんはタカラからハーブティーを受け取った。司くんは冷ましもせずにハーブティーを啜る。はぁと息を吐き出した司くんは落ち着いたようで一安心だ。

闇色も瞼に隠れて、俺がよく知る糸目に戻っていることにも安心する。


「何があったか……ですか……こちらをご覧ください」


 そう言って司くんが差し出していたのはスマホだった。その画面には俺も良く知る掲示板のオカルト板のページが開かれている。そこに書かれていた事を理解してさっと血の気が引いていくの自覚した。


「……マジかこれ」


「どうやら本当のようです。だから、お二人から力をお借りしようとお呼びしたんです」


「……なるほどな」


「どういうことだ?」


「リョウメンスクナが出てきたらしい」


「リョウメンスクナ?」


 聞きなれない言葉とばかりにタカラは首を傾げる。ああ、そうかまだコレは教えていなかったか。

……いや、それにしたって元々の両面宿儺位は知ってて欲しいんだが。これは過ぎた願いか?


「まぁ教えてないから知らなくて仕方ないか……」


「何か言いたそうだな?」


「気のせいじゃね?」


「リョウメンスクナは『両面宿儺』と書きます」


 カウンターに置かれたメモ帳に司くんはさらさらと文字を書いていく。その文字を見たタカラはそれでもピンとこないらしい。


「リョウメンスクナは異形の者、もしくは鬼神と伝えられています。古くは日本書紀にも記されているとか……」


「古くから言い伝えられてる神様だか異形が目覚めたのか?」


「いや……今回のモノはもっと悍ましく、やべモンだよ」


「というと?」


「大本となったものは『両面宿儺』で間違いないのですが……。なんと申したらいいでしょう……。名は同じですが本質は全くの別物なんですよ。コレはとあるカルト教団が所有していた即身仏と言われていまして」


「両面というだけあって、頭が二つあるらしいぜ。所謂、シャム双生児ってやつなのかねぇ?俺もネットとかで調べただけだから、どこまでが本当か知らねぇけど。そのカルト教団が見世物小屋から数人の奇形を買い取って、密室に閉じ込めて蠱毒をやったらしい。いくらお前でも蠱毒は知ってんだろ?」


「百の蟲を壺に入れて食い合いさせて作る呪物だったか」


「そう。それを人でやった。んで、生き残ったのがシャム双生児だったわけだ」


「彼が生き残るように色々と細工されていたと伝えられています」


「出来レースじゃないか」


「身も蓋もなく言やぁな。教団に必要だったのは蠱毒を生き抜いた二つ頭の男だけ。彼で即身仏を作ったらまるで阿修羅像のようになるとでも思ったんじゃねぇか?どういう思考回路してんだろーな」


「折角地獄を生き残ったのに、彼はすぐに別の部屋に連れ込まれ餓死させられ即身仏になったそうです、そして彼こそが今回、問題になっている「リョウメンスクナ」なんですよ」


「リョウメンスクナは教団の本尊として祀られた。だがな、あれは結局は呪物なんだわ。人を呪うための道具でしかねぇの」


「呪物って事は呪いの対象がいるんだろ?」


「その対象は、日本という国家だと言われています」


 司くんの言葉にタカラは眉を顰める。まぁ、いきなり国家を呪うだなんて言われて信じられないのはわかるがな。そんなタカラの反応を見越していたらしい司くんはメモ帳のあるページを見せた。


「ここに書かれているのは大正時代に起きた災害とその被害者数です」


「これがどうした?」


「全てリョウメンスクナが移動した土地だと言われているのです」


「流石に偶然だろ?」


 タカラの言葉に司くんは緩く首を振り、一番最後に書かれた文字を指さした。

そこに書かれていたのは大正時代の大災害、関東大震災の日。まさか、とタカラは顔を上げて司くんを見つめた。


「この災害の前日に教祖は自害したとされています。リョウメンスクナの前で喉を掻き切って。その場には血文字で書かれた遺書もあったそうです」


「遺書には、なにが?」



日本滅ブベシ



 ひゅっとタカラが息を飲む音が古書店内に響く。震える唇を開いたタカラは何とか声を絞り出した。


「……その教団の名前って」


「そこだけどこにも残されてねぇ。まるで、意図的に隠されてるみてぇに。だが、教祖の名前は伝わってる」



物部天獄って名がな。



 その名前を聞いたタカラの目が見開かれた。


「その名前、先日先生と鬼門の結界を直しに行った時に襲ってきた女が言っていた……。『天獄様万歳!!!!!』って」


「大当たり。あの女はあそこの教団の信者」


「ケイさんから話をお聞きしましたよ。その女性が叫んだ名前から、物部天獄が関係してると踏んで張っていたのですが……まさかこんなに早く動きがあるとは思わず……」


 ああ、だから大慌てで色々と調べ物をしてたわけか。あの様子じゃ限界まで寝てねぇみたいだし。……いや、そもそも司くんに睡眠って必要なのかどうか知らねぇが。

けど、俺達を呼んだという事はどうすべきかわかったんだろ?


「んで?どうにかすんだろ?」


「ええ、さすがケイさん。リョウメンスクナの在処がわかっておりますし、教団より先に封印するのがよろしいかと」


「了解。んじゃ早速行くか。タカラ、ハーブティーまだあんだろ?」


「後二本あるな」


「OK。司くんの方は?」


「二人をお呼びした時点で準備はできていますよ」


 その言葉の通り、司くんは近くに転がってる肩掛け鞄を手に取って、よいしょと小さく呟いて立ち上がった。すっかり顔色も良くなった司くんは穏やかな微笑みを浮かべ俺を見つめ返す。すべての感情を押し殺した笑顔の下に怒りという炎が燃えていたのを俺は見逃さなかった。











 司くんの調べによるとリョウメンスクナが見つかったのは、東北のとある寺だという。現在、俺達はランドクルーザーに乗り込み、裏ルートを通って目的地に向かっている。


「すこし意外だ」


「意外、ですか?」


「矢代さんがこんなに必死になってる事が。何があっても我関せずというスタンスだと思っていたからな」


「タカラ、口が過ぎんぞ」


「……否定はしませんよ」


 くすくすと嗤う声が聞こえ、そっとバックミラーに視線をやると司くんが艶然と微笑んでいるのが見えた。色気溢れる笑みに背筋にぞくぞくと冷たいものが駆け上る。


「いつもだったら放っておいたのですがね。今回は国に関わる事でしょう?僕は、日本に滅んで欲しいわけではありませんよ。この国は居心地がとてもいいのです」


 ええ、とてもね、と司くんはますます笑みを深くした。

なぜだろうか、どうしてもその言葉の裏を探りたくなってしまう。けれど、本能が警告する。これ以上踏み込むべきじゃないと。

バックミラーの中で、思い切り薄く開かれている闇色と目が合った。にこりと綺麗に笑った司くんは唇に人差し指を当てる。どう見ても、それは深入りするなという警告だった。

無理矢理笑みを作った俺は、何とか話題を変えようと口を開く。


「俺達は現場でどう立ち回ればいいんだ?」


「流れでここまで来たが詳しい話は聞いていなかったな」


「僕のサポートをお願いします。相手は最凶の呪物と名高いモノですからね。いくら怨み屋とは言え一筋縄ではいかないでしょうし」


「わかった。んじゃあ俺が視て、いざとなったらタカラが祓う感じか?」


「いえ、今回はできれば現状のまま封印したいのです」


「ああ、なるほど。怨み屋的にはそうだろうな。じゃあ俺らはリョウメンスクナ自体には手を出さないようにするわ」


「すみませんね。ボディーガードの様な扱いになってしまい」


「かまわねぇよ。司くんは魔法とか呪物耐性はカンストしてっけど、物理耐性マイナスだかんな」


「マイナスは言いすぎですよ……ああ、ほら見えてきましたよ」


その言葉に目線を上げた俺の視界に、取り壊されかけている寺が映る。どうやらそこが目的地らしい。門の前に住職らしき坊主がいて、俺達を出迎えてくれる。


「急にすみません。ご連絡いたしました矢代と申します」


「あなたが……わざわざありがとうございます。そちらのお二方は?」


「彼らは僕が最も信頼を置く祓い屋です。能力も日本一だと僕は思っているので今回助太刀をお願いいたしました」


「普段は占い屋をやっています。ケイと言います。こちらは助手のタカラです」


「どうも」


「よろしくお願いいたします……もう、どうしたらいいのか」


「僕たちにお任せください」


 にこりといつも通りの笑みを浮かべた司くんに、住職は深々と頭を下げる。感心する位手回しが早いことで。司くんはぱっと見人畜無害そうだし、物腰も柔らかだから依頼人の受けがいい。だから無駄に衝突もしないんだろうな。


「ケイちゃんも愛想よくしたらいいのに」


 耳元で揶揄うような声と笑い声が響く。

静かにしてると思ってたら、余計な事言いやがって。俺は今のままでいいんだよ。

ただでさえ、若い見た目のせいで舐められやすいんだからよ。


「若作りのせいだけじゃないと思うけどねぇ」


 うりうり~と頬をつねられて心底不快だ。無言で機嫌が急降下する俺をタカラは怪訝そうに横目で見てくる。

そんな俺達の様子を知ってか知らずか、司くんは住職との話をまとめたらしい。


「では、後は僕たちにお任せください。終わりましたらご連絡いたします。それまでは避難していてください」


「わかりました……それでは、頼みました」


 また深々と頭を下げた住職はスクーターに乗って去って行った。どうするんだと顔を見合わせる俺とタカラに構わず、司くんはさっさと門をくぐってしまう。先を行くひょろりとした背中を追った。

中に入って周りをまじまじと見る。この寺は取り壊しの途中で放置されたようにしか見えない。事実、司くんが調べたところによると寺を取り壊している最中にリョウメンスクナが出てきてしまったという。解体業者から連絡を受けた住職は工事を一時中断させたらしく、こんな廃屋みたいになってるらしい。


「リョウメンスクナは中庭の方に置かれているそうです……ああ、見えてきましたね」


 そう言って、司くんが指さした先から禍々しい気配が漂っているのがわかる。じわりじわりと視界の端から侵食してくる、ドロドロの靄に足が竦んだ。

今までいろんな呪物を見てきた俺でも恐怖を覚えるくらい禍々しい。コトリバコの『ニホウ』なんて比べ物にならないくらいの怨念を感じる。

ゆっくりと示された先に視線を向けると、2メートルくらいの黒ずんだ箱が無造作に置かれているのが見えた。その箱の隙間から靄が漏れでていて……。

思わず隣に立つタカラの腕を掴んだ……その瞬間、身体に纏わりつく靄と恐怖が消える。

ちらりとタカラを見上げるといつもと変わらない、眉間に皺を寄せた気難しそうな表情と目が合った。俺を安心させるようにふっと緩められた表情に、こいつがいれば大丈夫だという安心感が湧き上がってくる。そうだ、どんなに恐ろしいモノでもタカラがいたら大丈夫。それに、今回は呪物の専門家である司くんもいるわけだからな。


「これにリョウメンスクナが入ってんのか」


「なんとも禍々しいな……」


「さて……じゃあ早速取り掛かりましょうか」


 すたすたと躊躇いなく黒い箱に歩み寄った司くんは、蓋らしき隙間に指をかけ思い切りこじ開けた。露になった箱の内部には双頭と腕を4本持つ人間のミイラが収まっている。苦悶の表情を浮かべる彼がリョウメンスクナで間違いない。落ち窪んで朽ちた眼窩と目があった瞬間、目の前に様々な場面がフラッシュバックした。

見世物小屋の檻から見る外の景色。ニヤニヤと笑う男。異形の仲間たちと閉じ込められた密室。飢えに苦しんだ末に始まる殺し合い。仲間の血肉と糞尿を食った。助かったと思ったらまた閉じ込められ、餓死させられた事。

それ以外にもたくさんの事が目の前で繰り広げられていく。最期に視たのは、高笑いしながら自分の喉を掻き切る男と真っ赤に染まった視界だった。


「ぁああああ!!!!!」


「ケイ!!??」


「タカラさん、ケイさんの眼を塞いでください!リョウメンスクナの記憶が視えてしまっています!!」


 一気に沢山の場面が脳内に流れ込み、頭が割れるように痛む。膝から崩れ落ち、本能のままに胃の内容物を全てぶちまけた。それでも視界は目まぐるしく変わっていく。


「嫌だ、厭だもう視たくない視たくない……視せんな!!」


「ケイ落ち着け!!」


 後ろから抑え込まれ、瞳を温かいもので覆われた。それでもこの眼はまわりの様子を見せてくる。

だが、先程と違い視えているのは、今この瞬間の現実だけだった。幻覚に近い彼の記憶から解放された俺は、大きく肩で息をする。俺の呼吸が落ち着いたことに気付いた司くんが申し訳なさそうな表情で振り返った。


「落ち着きましたか?」


「ああ……わりぃ」


「いいえ、まさかリンクしまうとは思わず……。目隠ししたままでも、視えますか?」


「幻覚は視えねぇ。タカラ、バッグの中に目隠し用の布あんだろ?それで目隠ししてくれ」


「……わかった」


「おひいさまも力をお貸しください」


 タカラの手がどけられ、代わりに柔らかい感触の布が目元に当てられた。そして、司くんの言葉と同時に、ふわりと後ろから頭を抱かれる感触がする。


「ごめんね、ケイちゃん……僕も油断してた。もう、幻覚は視えないようにするから安心して」


「いや、俺も無防備すぎた……気ぃ引き締めるわ」


 小さな指に柔く布越しに瞼を撫でられた。おし、とりあえず大丈夫そうな。数度、深呼吸して司くんに大丈夫だと合図を送る。


「それ、見えてるのか?」


「一時的に千里眼が暴走してっから視えちまうんだよ」


「無理はするなよ?」


 俺とタカラの会話なんて全く気にせず、司くんは肩から下げた鞄から聖書のような装飾がされた本を取り出した。そして、口元の笑みを深くして何かを囁きだす。マジで彼はリョウメンスクナを自分の呪物にしようとしてんのか。さすが怨み屋……考えることがぶっ飛んでんな。だがまぁ、教団の連中とか下手な祟り屋とか霊能者の手に渡るよりは安心か。

彼の持つページの開かれた聖書に靄が吸い込まれていく。なんの問題もなく封印できそうだなと思ったその瞬間。

荒々しい足音と共に、10人以上の男女が中庭に押し掛けてきた。彼らの表情は一様に憎しみに染まっていて、司くんを睨みつけている。瞬時に彼らが物部天獄の信者だとわかった。口々に天獄様のために、我らがご本尊に何をするんだと怒鳴る信者たちはじわじわと距離を詰めてくる。

俺とタカラは持っていたそれぞれの武器を構えようとするが司くんに制された。信者たちと向かい合った司くんはちょっと困ったように微笑む。


「申し訳ありませんが……お仕事の邪魔をなさらないでくださいね?」


「邪魔をしてるのはそっちの方だろ!!」


「もう一度だけ忠告いたします。邪魔をなさらないでください」


「うるさい!!」


 信者の1人が懐に隠していたナイフを司くんに向けて投擲した。ナイフは司くんの頬を掠め、髪を数本切り裂く。司くんの生白い頬につぅっと真っ赤な血が伝っていった。溜息をついた司くんが優雅な仕草で眼鏡を外し髪を解く。司くんの纏う空気が一気に変わった。鋭利に研ぎ澄まされた刃のようなそんな雰囲気を彼は纏う。長い前髪の間からじかに闇色を覗かせる彼は本当に俺が知る矢代司なのか?


「僕は警告いたしましたよ」


困ったような声色でそう呟いた司くんは、手に持った本の上で文字を書くように指先を舞わせた。その瞬間、本からどろりとした靄が溢れ出し信者たちの足に纏わりつく。ゆっくりと身体を這いあがる黒いそれは信者たちの口内に入り込んだ。今の今までわぁわぁと喚き散らしていた信者たちはびくんびくんと痙攣しだす。靄が全て信者たちの体内に入り込んだのを確認した司くんはにこりと柔和な笑みを顔に張り付けた。


「お引き取り願います。ああ、もちろん現世から……。良かったですね、敬愛すべき教祖様と同じところへ逝けますよ」


 ぱん、と司くんが手を叩くと信者たちは一斉にその場に崩れ落ちる。そして見る見るうちに身体が朽ち果てた。耳元で小さくうわぁという声が聞こえたから、今の俺には視えないが魂も見るも無残な姿になっているのだろう。

ふむと、あたりに散乱する白骨を見た司くんはトントンと数度つま先を地面に打ち付けた。彼の影が不自然に揺らぎ、膨らみ、液体のように広がって信者たちだったモノを飲み込む。

影が司くんのもとに戻った後には、信者たちがいた痕跡などどこにも残っていなかった。

事も無げにそんな事をやってしまう司くんはやっぱり俺達(人間)とは違うのだと、まざまざと見せつけられた気分だ。確かに俺も倫理観が人よりバグってるところがあるのは自覚してるが、司くんの場合はバグなんかじゃない。元々のプログラミングからして違う。でも、それはそういうものだし。そう割り切るしかない。


「さて……では、改めまして……」


 司くんは自分が呪殺した人間たちなんていないかったかのようにリョウメンスクナに向き直った。ピリピリと張りつめた空気が辺りに満ちる。風もないのに司くんの下ろされた長髪とカーディガンがふわふわと宙に舞った。

ぼそりと一言司くんが呟くとリョウメンスクナは靄に姿を変え、彼の持つ聖書に吸い込まれていく。靄が全て消えたのを確認して、司くんはぱたんと本を閉じた。

今まで見たことない位、いい笑顔を浮かべた司くんは俺たちの元に歩いてくる。そして、ほくほくした顔で聖書を掲げて弾んだ声で俺に話しかけた。


「僕の呪物コレクションに新しいモノが仲間入りしましたよ!お二人が協力してくださったおかげです!」


「ああ、それはよかった……ね……」


 なんだか緊張が切れた途端に、眼が暴走していた時の疲れが一気に襲ってきて俺の意識はぷつりと途切れてしまった。



 次に俺が目を覚ましたのは帰りの車内で……。広い後部座席に寝かされているようだった。助手席には司くんが座り、意外にもタカラとの会話も弾んでいる様子がうかがえる。相変わらず目隠しをされたままの俺の額を柔らかな熱が撫でて、俺はまた眠りに落ちた……。












洒落にならんほど怖い話集めてみない? その22


479:139 2020/3/27 12:03:08 ID:9McHOltWnC

寺を解体工事してたらリョウメンスクナ?が出たモンだけど


480:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 12:06:12 ID:wx1P6f1OjT

ああ!気になってんたんだよ

本当にリョウメンスクナだったのか?


481:139 2020/3/27 12:10:45  ID:9McHOltWnC

それが住職が祓い屋だか拝み屋だか呼んで封印したらしくてな

最初に見た時以来見れてないんだわ


482:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 12:16:18 ID:KpxxRFJKA1

まぁそうなるわな


483:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 12:20:02 ID:34inasoAZR

むしろ見なくてよかったと思う


484:139 2020/3/27 12:25:55  ID:9McHOltWnC

いやでも気になるべ!?

住職に聞いても知らぬ存ぜぬだし

ネットで調べても胡散臭いサイトしか引っかからないし


485:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 12:30:51 ID:uLhWL9GX6Q

バカお前本物だったら日本終わってたぞ


486:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 12:35:39 ID:xPFFD6RvHQ

日本終了のお知らせ


487:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 12:40:51 ID:LT1h5QCan7

あれはガチの呪物らしいからなぁ


488:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 12:46:13 ID:6Do12yLs9P

あれがもし本当に封印されたんだとしたら、歌舞伎町の奴らが関わってたりして


489:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 12:49:15 ID:n2RyxJJbvY

どうせあいつらだって都市伝説だろ


490:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 12:53:02 ID:sReMqknPC0

パワーストーンの店は実在するぞ

普通に行ける


491:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 12:57:36 ID:S556TGgTdP

易者のおっちゃんもいるしな


492:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 13:03:09 ID:huQGNkGnB4

占い屋もあるって聞くけど……

中々たどり着けないんだっけ?


493:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 13:06:15 ID:ZCm86iWmVA

後なんだっけ……


494:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 13:10:10 ID:DaneTDJm0q

呪い屋?


495:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 13:13:59 ID:tm8W6I7oDi

怨み屋だろ


496:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 13:18:33 ID:nq6UWxdWjy

祟り屋じゃなくて?


497:ほんまにあった怖い名無し 2020/3/27 13:23:33 ID:F2P12BtU5H

何でもいいわwwwwww



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