女の家へ
簡単な朝食の後、水月は二人に夜中のことを話した。訪ねてみるかと聞くと、アルフはしばらく悩んでからうなずいたが、フィレイは行かないと首を横に振った。
「あら、行かないの?」
「うん、絵を書きたいの。だから、二人で行ってきて」
フィレイに見送られ、二人は宿を出た。出て早々、水月はあることに気が付いた。
「家、どこなのかしら」
誘った当の本人である女は何も言わなかったし、誘われた水月も女の家を聞いていなかった。
「普通、聞くだろ」
「そうね。忘れてたわ」
隣で、アルフが何やらぶつぶつと呟いていた。水月はそれを無視して、近くの人間に女の家を聞いて回った。
聞き回る間に水月は、女が、特に年配の人間には気に入られていないことに気付いた。
この辺りは割と人気が良く、水月が話しかけると、にこにこと答えてくれる。しかし、いざ水月が女の家を聞くと、たいていが眉をひそめ、口が重くなる。中には嫌悪感をあらわにし、水月を怒鳴りつける者や、黙って、ふいとその場を立ち去る者もいた。
それでもどうにか家を聞き出し、二人はようやく女の家の前にやって来た。
他の家とそう変わらない、レンガ造りの小さな家だ。
水月が、ドアをノックしようとしたとき、中からドアが開けられた。
まさか開けられると思わなかった水月は、危うくドアを開けたメイドの頭をノックしそうになった。
「どうぞ、こちらへ」
メイドに案内され、二人は地下の小部屋の前に来た。
「お一人ずつ、中にお入り下さい」
二人は顔を見合せ、先にアルフが中に入った。
壁にもたれ、水月は自分の番を待った。
時折ぼそぼそと何やら話す声が聞こえてくる。水月は壁に寄りかかったまま、軽く目を閉じた。
何もせず、じっとしているのは嫌いだ。考えなくていいことまで考えてしまう。
しばらくして、アルフが部屋を出て来た。甘い香の匂いがした。
「どうだった?」
「ああ、普通のカード占いだった。でも水月がそんなこと聞くなんて、意外だな」
「私だって好奇心はあるわよ」
少しむくれた振りをしながら、水月は部屋に入った。




