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<影祓い>  作者: 文月 郁
ルトン編
8/36

女との邂逅

 ルトンの町の広場。水月は、のんびりと星を眺めていた。

 故郷の――カラの星空とは少し違う。普段は思い出すことなどないのに、今日に限って思い出すのは、あの唄のせいだろうか。

 楽師の兄妹が歌った、故郷の唄を思い出し、水月はかすかに苦笑を浮かべた。

「何をしていらっしゃるの?」

 柔らかな声がした。横を見ると、金髪を結い上げた女が、水月を見下ろしていた。

「星見」

 まあ、と女は口元に手を当てた。くすくすと笑う声が聞こえる。

「それは、風流なことですのね。カラの方は、皆そうなんですの?」

「さあ、そういう訳でもないでしょう」

「あら、驚かれませんのね」

 水月は眉を吊り上げた。

「大抵の方は、出身を当てるだけで驚かれますのに」

「黒目黒髪はカラ人の特徴だし、この服も、カラ以外では見ないから」

「驚かせてあげましょうか? ……『ルトンの女』を探していらっしゃる。そうでしょう?」

 水月の表情は変わらなかった。女は首を傾け、言葉をついだ。

「探している人の場所を、お教えしましょう。右を向いてご覧になってくださいな」

 水月は目だけで右を見た。女が座っている。

「貴方がそうなの?」

 女は答える代わりに再びくすくすと笑った。水月はさりげなく彼女を観察した。

 小さな鏡をあちこちに縫い付けた、紫のドレス。少しでも動かすと、腕からしゃらしゃらと音がする。見ると、女は金や銀の細い腕輪をたくさんはめていた。

 顔は、ほとんどの人間が美人だと思うだろう。青緑の目をすっと細め、女はきれいな笑顔を作った。

「私は、何でも見通しますのよ。明日にでも、皆様といらしてくださいな。占って差し上げますわ」

「それは、どうも。考えておきましょう」

 雲が出て、星が見辛くなってきた。寒くもなって来たので、水月は女に別れを告げ、宿に戻った。

「……どこに行ってたの?」

 ベッドに寝転ぶと、フィレイの眠そうな声がした。

「ちょっと星を見に、ね」

 口ではそう答えたものの、頭で考えるのは、別のこと。

 ルトンの女。全てを見通すと言われる女。その目が見逃すものはないという。

 その噂は、どうやら真実らしい。

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