女との邂逅
ルトンの町の広場。水月は、のんびりと星を眺めていた。
故郷の――カラの星空とは少し違う。普段は思い出すことなどないのに、今日に限って思い出すのは、あの唄のせいだろうか。
楽師の兄妹が歌った、故郷の唄を思い出し、水月はかすかに苦笑を浮かべた。
「何をしていらっしゃるの?」
柔らかな声がした。横を見ると、金髪を結い上げた女が、水月を見下ろしていた。
「星見」
まあ、と女は口元に手を当てた。くすくすと笑う声が聞こえる。
「それは、風流なことですのね。カラの方は、皆そうなんですの?」
「さあ、そういう訳でもないでしょう」
「あら、驚かれませんのね」
水月は眉を吊り上げた。
「大抵の方は、出身を当てるだけで驚かれますのに」
「黒目黒髪はカラ人の特徴だし、この服も、カラ以外では見ないから」
「驚かせてあげましょうか? ……『ルトンの女』を探していらっしゃる。そうでしょう?」
水月の表情は変わらなかった。女は首を傾け、言葉をついだ。
「探している人の場所を、お教えしましょう。右を向いてご覧になってくださいな」
水月は目だけで右を見た。女が座っている。
「貴方がそうなの?」
女は答える代わりに再びくすくすと笑った。水月はさりげなく彼女を観察した。
小さな鏡をあちこちに縫い付けた、紫のドレス。少しでも動かすと、腕からしゃらしゃらと音がする。見ると、女は金や銀の細い腕輪をたくさんはめていた。
顔は、ほとんどの人間が美人だと思うだろう。青緑の目をすっと細め、女はきれいな笑顔を作った。
「私は、何でも見通しますのよ。明日にでも、皆様といらしてくださいな。占って差し上げますわ」
「それは、どうも。考えておきましょう」
雲が出て、星が見辛くなってきた。寒くもなって来たので、水月は女に別れを告げ、宿に戻った。
「……どこに行ってたの?」
ベッドに寝転ぶと、フィレイの眠そうな声がした。
「ちょっと星を見に、ね」
口ではそう答えたものの、頭で考えるのは、別のこと。
ルトンの女。全てを見通すと言われる女。その目が見逃すものはないという。
その噂は、どうやら真実らしい。




