カード占い
部屋の中は、ゆらゆら揺れる蝋燭の火で照らされていた。水月が動くと、揺らめきが少し激しくなる。
部屋の中央に、香炉の乗った机が一つ。女が奥に座っていた。
「そちらに座って」
言われた通り、目の前の丸椅子に座る。
「私は、イズリエル・ハーヴァーラン。あなたの名前は?」
「水月」
女が首を傾けた。
「姓は?」
「…………忘れたわ」
女はそれ以上追及することなく、一組のカードを机上に置いた。香炉を端によけ、カードを混ぜる。
「どれでも好きなものを四枚取って」
水月は無言で、適当に四枚のカードを選んだ。女は残ったカードを片付け、選んだカードを並べるようにと言った。
カードが並べられると、今度は、左から順にめくるようにと言われた。
水月は、深く考えずに、一枚ずつめくっていった。
左から、髑髏、道化師、刀、影、のカードが並んだ。
「あなたは……過去に、親しい人達を亡くしましたね。それを隠すために、あえて明るく振る舞っている。そう、道化師が、派手な化粧で本心を隠すのと同じように」
水月は表情を変えることなく、イズリエルの言葉を聞いていた。しかし、内心ではひどく動揺していた。
水月の過去を知る人間は、両手で数えても余るほどしかいない。水月自身も、フィレイやアルフを含め、誰にも話したことはなかった。だから、イズリエルが知っているはずがない。
「近い将来、あなただけではなく、あなたの周りの人も巻き込む災いが起きます。そしてあなたはそのとき、決断をする。今までのつながりを断ち切ってやり直すか、今までと同じ暮らしを続けるか」
「そう。……代金は?」
イズリエルは一瞬ぽかんとした。しかしすぐに笑顔で答える。
「お心任せ」
黙ったまま、水月は銀貨を二枚机に置いて部屋を出た。銀貨一枚で、庶民なら二ヶ月は楽に暮らせる。占いに払うには、破格の額と言える。
固く口を結んだ厳しい顔で、水月は道を進んで行った。しばらくの間わき目もふらずに歩き続ける。
人気の少ない細い小路に入り、ようやく水月は足を止めた。
「ったく、あんなのただの占いじゃない。真に受けるなんて、馬鹿みたい」
自嘲する。笑顔で。口調もいつも通りに。
「占いの言葉なんて、誰にでも当てはまるのよ」
あはは、と笑って、水月はしゃがみこんだ。目を閉じて、心の中でゆっくりと数を数える。
「水月?」
一から十まで三回繰り返し数え、四回目を八まで数えたところで、よく知っている声がした。
「水月? どうかしたのか?」
「何でもないわよ」
にこりと笑って答える水月は、すっかりいつも通りだった。




