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<影祓い>  作者: 文月 郁
ルトン編
11/36

明け方の会話

 鬼が舞う。

 血塗れの鉈を持ち、悲鳴を音楽にして。

 鬼が鉈を振る度に、悲鳴が大きくなる。

 突然舞が止み、それまで背を向けていた鬼が、ゆっくりと振り向いた。

 その顔は――


 水月は勢いよく身体を起こした。時間をかけて、荒い呼吸を静める。

(声を上げなくて良かったわ)

 心の中でそう呟いて、水月はまた横になった。


 明け方、広場に水月の姿があった。なかなか眠れないので、結局諦めて宿を出てきたのだ。

 東の空が明るい。ぼんやりと空を見上げて、水月は一つあくびをした。

「水月、こんな所にいたの」

 軽い足音に振り向くと、フィレイが走って来た。こんなときでもベレー帽をかぶっている。

「部屋にいないから、びっくりしたよ。どこにいるのかと思って、外見たらいるんだもの」

「ごめんごめん」

 何か言いたそうなフィレイに気付き、水月は首をかしげた。

「どうかしたの?」

「あの、私、…………ううん、何でもない」

 ふうん、とうなずく。気にならないわけではないが、わざわざ聞かなくてもいいだろう。

「良い絵は、描けた?」

「うん。もうちょっとかな」

 その後の小さな呟きは、水月の耳に届かなかった。

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