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明け方の会話
鬼が舞う。
血塗れの鉈を持ち、悲鳴を音楽にして。
鬼が鉈を振る度に、悲鳴が大きくなる。
突然舞が止み、それまで背を向けていた鬼が、ゆっくりと振り向いた。
その顔は――
水月は勢いよく身体を起こした。時間をかけて、荒い呼吸を静める。
(声を上げなくて良かったわ)
心の中でそう呟いて、水月はまた横になった。
明け方、広場に水月の姿があった。なかなか眠れないので、結局諦めて宿を出てきたのだ。
東の空が明るい。ぼんやりと空を見上げて、水月は一つあくびをした。
「水月、こんな所にいたの」
軽い足音に振り向くと、フィレイが走って来た。こんなときでもベレー帽をかぶっている。
「部屋にいないから、びっくりしたよ。どこにいるのかと思って、外見たらいるんだもの」
「ごめんごめん」
何か言いたそうなフィレイに気付き、水月は首をかしげた。
「どうかしたの?」
「あの、私、…………ううん、何でもない」
ふうん、とうなずく。気にならないわけではないが、わざわざ聞かなくてもいいだろう。
「良い絵は、描けた?」
「うん。もうちょっとかな」
その後の小さな呟きは、水月の耳に届かなかった。




