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<影祓い>  作者: 文月 郁
ラルグラード編
12/36

峠にて

 ルトンとラルグラードを結ぶ峠。そこで水月ら三人は野宿の準備をしていた。

 慣れない野宿で戸惑うアルフ。薪にする枝を拾いに行こうと促すフィレイ。そんな二人を見送り、料理の準備をする水月。

 細長い枝を十数本集め、ナイフで削る。それから人参、玉葱、そして干し肉を適当な大きさに切って、即席の串にさす。

これだけの作業でも時間がかかったが、二人はなかなか戻って来ない。

(どこまで行ったのかしら)

 手近なところから枝を集め、火をおこす。さっきの串を回りに並べて焼く。

 串焼きが出来るのを待ちながら、水月は二人を待っていたが、どちらも戻らない。

(まさか、〈影〉が出たんじゃないでしょうね)

 そうだとすると厄介だ。フィレイは〈影祓い〉ではない。となると〈影〉を祓えるのはアルフだけだ。しかし、アルフは最近ようやく『見習い』から『半人前』と呼べるくらいになった程度の実力だ。祓いが出来るかと言われれば、正直、不安だ。

 何より彼は、他への思い入れが強い。下手をすると、優しすぎるその性格のために、逆に〈影〉に憑かれそうになる。

 一つため息をついて、水月は一旦火を消した。そして口の中でブツブツ文句を言いながら、二人が向かった方向に足を向けた。

 下藪をかき分けながら進むと、地面に黄緑色のものが落ちているのを見つけた。拾い上げてみると、フィレイがいつも被っているベレー帽だった。

 辺りを見回すと、近くの木にフィレイがもたれかかるようにして座り込んでいた。

 声をかけると、フィレイはくしゃりと顔を歪めた。

「どうかしたの? アルフはどこにいるの?」

 フィレイは何か言おうとするように、口を動かした。しかし、声は一切出ていない。

 それでも、フィレイの怯えた様子から、何かがあったのだと水月は確信した。

 水月はフィレイの傍に座り、震え続ける彼女を軽く抱いた。フィレイの震えが止まるまで、水月は動かなかった。




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